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あれから首相さん達が動き出すまで少し時間がかかっので、花のジュースを飲み終わってしまった。
「もう一つ飲むか?」
「...んーいいや。お腹タプタプになりそう。」
「そうか、果物はどうだ?」
今度はオレンジとバナナと苺が入ったカゴがどこからか出てきた。
だからどこから出しているの?
「内緒だ。ほら、食え。」
大きい苺を森の妖精王に手ずから口に入れられた。
これ大きい。口の中いっぱいになってるよ。
この苺、思わず笑顔になるくらい美味しいやつだ。
甘くて瑞々しくてうまーい!!
「まだあるから好きに食え。」
口が苺でいっぱいなので頷いた。
「...ゴホン。話を進めてもよろしいですか?」
「ごめんなさい。つい...」
でも、先に固まってたのはそっちだよ。言わないけど...
「では、先程の続きです。なぜ出て行こうと思ったのですか?」
「なぜ?...寝室で夜中に目覚めて教えてもらったんです。フィリップを殺そうとする人達が来るって。」
「誰に教えてもらったのですか?」
「ワタクシですね。」
ニッコリ。どや顔で鼻を上げるスイキン。パートスリー。
...もう好きにしなさい。
「スイキン様はなぜフィリップを殺そうとするものが来ると分かったのですか?」
「他の海の妖精に聞きました。
この地の海の妖精は私がリリアナの傍にいることもリリアナが生まれた時よりワタクシ達が見えることも話せる事も知っています。ですからあの時、リリアナに害のある者達が近付こうとしてたのを教えてくれたのです。」
そうだったんだ。海の妖精さん達ありがとうございます。
「そうですか、その者達が誰かは分かりますか?」
「知りません。人の見分けなどつきませんから。」
ニッコリ。どや顔で鼻を上げるスイキン。パートフォー。
...カッコいい。イケてる。だからもうそのどや顔やめよう。
「...そうですか。では、つい先日の失踪はどういうことですか?」
そう言って冷ややかな目で森の妖精王を見るダリオさん。
「俺の城に遊びに来た時の事か?」
「...失踪?...何も言わずに出て行ったから?」
「そうだったか?」
「そうだよ。伝えるから降ろしてって私、言ったもん。」
「でもお前あの時、話せなかっただろう。それに俺がここに出れば周りがうるさい。」
「...確かに。凄い騒ぎになりそうだよね。」
「だろ?」
森の妖精王と顔を見合わせ話しているとダリオさんからの止めが入った、
「ちょっと、お二人で話を進めないでください。
では、リリアナ当時の事を私達に分かる様に詳しくお願いします。」
「あの日は暇で仕方なくて窓からリラの木を見ていたらにゅーって森の妖精王が出てきて、遊んでって言ったら森の妖精王のお城の母なる大樹に連れて行かれて一日中遊んでました。
あと、言い訳すると私はあの時、動けないし話せないから出掛けるのを伝えられませんでした。
ごめんないさい。」
一息に言って頭を下げた。
「素直に謝れて偉いな。」
森の妖精王に褒められて頭を撫でられるが、なんか納得が出来なかったため。
「半分はいきなり連れて行った森の妖精王の責任だと思います。」
付け加えてやった。
「おい。」
低い声で何か言ってたが無視してやった。ざまーみろ。へっ。
「なぜリリアナは動けなかったのだ?」
リドラス曾おじい様からの質問が来た。
私が口を開く前に森の妖精王が答えた。
「 まず、大前提として普通の者は体が一つ、魂が一つ、意識が一つこれが通常の生物だ。
だが俺が見つけた時リリアナは体が一つ、魂が一つ、意識が二つ。の状態だった。
これは憶測だが生まれ変わる際に消される意識が残ったことが原因だと考えられる。普通は消される意識が残っても新しい意識は生まれてはこないんだがなぜかこいつは新しい意識が生まれ体の主導権を握っていた。だが、その意識はかろうじて生きている位の儚いものだった。」
首相さん達は理解に苦しむのか少し考える素振りをした。
理解できないよね。こんな事いきなり言われても。
「俺がリリアナが寝込んだ日に来たのはこの子を助けるためだ。
あの朝リリアナの魂が崩壊をし始めた。始まったせいで肉体の不調をきたし熱を出した。」
「では、寝室で行った魔法陣は?」
「魂の崩壊を防ぐすべは俺にはない。
だから俺の祝福を与え世界の力の流れに愛されるようにした。その後は...」
「森の妖精王のお力でリリアナを回復させたということですね!!」
おっとぅ!?テンション高めな人が物凄い勢いで割り込んできたよ。
森の妖精王が高めな人をじっと見つめて疑問を口にした。
「ああ。そうだが...お前。エルフか?」
「はい。恐れ多くも森の妖精王様を御信仰させて頂いております、森の民でございます。本日はご尊顔に拝しまして至極恐悦にございます。」
...えっ?力?エルフ?ファンタジー?信仰?森の民???えっ?テンション高いのによくそんな事一気に言えるね。
いきなり気になる言葉がたくさん出てきて理解が追い付かなくなった。
一人はてなを飛ばしているとやっぱり頭を撫でられた。
こんな時は困った時の森の妖精王に聞いてみた。
「説明して。」
「ったく。まず、力っていうのは森の妖精の特有の力のことだ。
森の妖精は成長を司るし、空の妖精は見守ることを司る。」
「海の妖精は誕生を司ります。」
ニッコリ。どや顔で鼻を上げるスイキン。パートファイブ。
いい加減しつこいよ。
そう思ったらシュンとしちゃった。言い過ぎたね。ごめんなさい。
「それと、エルフは森の民。昔から森に住んでるからそう言われてる。あと何だったか?
...信仰か。信仰はエルフが勝手に作った俺を崇める宗教だ。
俺も聞きたいことがある。お前の良く言うファンタジーってなんだ?」
「ファンタジーはファンタジーだよ。和訳すると幻想とか空想とかって意味。」
「和訳?前世の知識か?」
「うん。そう。前世の世界だとエルフも妖精も存在していない世界だったんだ。で、想像上の物語をファンタジーとも呼んだからつい。
...気を悪くしたらごめんね。」
「...妖精も存在しない世界!?そんなものがあるのか!?」
「えっ?まぁ。うん。」
なんでそんなに驚くんだろう?
「待ってください。リリアナ。貴方は前世の記憶があるのですか?」
ダリオさんもきたー。前世持ち珍しくないって言ってたじゃん!!
「えっ?あっ。はい。あります。」
「前世持ちは珍しくないっす。偶にいるっす。」
森の妖精王の代わりにうっきー君が答えてくれた。
先程の会話で興奮した様子の森の妖精王のはそれどころではなさそうだけど、膝に座ってるから!揺れるから!!動かないで!!
「確かに、そうですね。十年程で一人の割合で記録に残されています。
国への報告を推奨してますので聞いてもいいですか?」
「おっ俺も気になるな。それは!」
森の妖精王にまでキラキラした瞳を向けられて答えないわけにはいかないか。
とは言っても凄い人ではないし記憶も曖昧だけどね。
「普通です。一般市民。ただ自分の記憶が曖昧で親の顔とか友達とか思い出せないです。」
「先程、妖精がいない世界と言いましたがどのような世界ですか?」
「科学が発達した世界ですかね?魔法とかもないですし。」
「科学とは何ですか?」
「簡単に言うと理?ルールを突き止める学問かな?専門にやっていたわけではないから上手く答えられないです。」
「分かりました。ありがとうございます。これで聞き取りは終了です。
また何かありましたらお願いしますね。」
「分かりました。」
終わったーーー。長かったー。疲れたし、小腹が空いたなぁ。
「では、ツヴァイ。こちらは終わりました。あとはお願いします。」
こちらは?あとは?
「まて、リリアナはまだ小さいんだ休憩を挟め。」
森の妖精王が続く気配に休憩を申し入れてくれた。
...これまだ続くのー?




