33
パチッ。
くっっ―――!よく寝たぁ!!!
ー第一声がそれっすか!?ー
あっおっはよー。うっきー君。
ー...今は夜っすよ。それにしてもリリアナっすね。ー
なんで起き抜けにディスられてんの私!?よいしょっと...お水のも。
私はベットの上で体を起こした。
ベットの下の方でうっきー君もしかして寝てた?
「リリアナ殿下!!」
私が動いたことで目覚めたことに気が付いたのかベット脇に驚いた様子のフォルカーさんがいた。
フォルカーさんいたんだ気が付かなかったよ。
目覚めましたよ。お水ちょーだい。
「すぐに医師を呼んでまいります。そのままお待ちください!!」
フォルカーさんは言いながら寝室から飛び出していった。
...お水。
あれだけ焦ってるフォルカーさん初めて見たな。
ベットから降りて壁際に置いてあるピッチャーの置いてあるサイドチェストに近づく。
...水に手が届かないだと!!
踏み台ないかな?それか誰かいないかな?背伸びしてもジャンプしても届かないし。
「水が飲みたいのか。」
頭の上から声が聞こえた。おっどろいた!!まだ誰かいたの!?
上を見上げると森の妖精王がピッチャーに手を伸ばしていた。
森の妖精王かぁ。ビックリしたよ!驚かさないでよね!!
「すまん。すまん。」
誠意の欠片もない謝罪だね。まぁいいや。お水ちょーだい。
「分かってる。病み上がりだ座って飲め。」
森の妖精王に抱き上げられてベットの端に座らせられて水の入ったグラスを手渡された。
水が美味しい!!今まで飲んだ中で一番美味しい気がする。
うん。もう一杯!
そう思い空いたグラスを渡そうとすると、もの凄く機嫌の良さそうな森の妖精王が私を見てニコニコ笑ってた。
なんか楽しそうだね。なんかイイことあったの?
「...あぁ。これだけいい事があったのは久々だ。
寝起きなんだから水はゆっくり飲めよ。
ところで、リリアナ。声に出して話さんのか?」
...話す?なんで?...なんで私動けてるの!?リリアナは!?
「気が付いていなかったのか。」
残念なものを見るような目でみないで!!
バタバタバタバタ
どこからか人が慌ただしく走る音が聞こえてきた。
「ちっ!もう来たか。
リリアナ、説明は後でしてやる。今は大人しく寝てろよ。」
そう言って木の葉に包まれて消えていった。
??意味わからんぞ??
コンコン
「失礼いたします。リリアナ殿下。」
急ぐ様子で部屋に入ってきたのは何度もお世話になっている白いヒゲで目しかみえないおじいちゃんのお医者さんだ。お医者さんだから白衣を着てるけど、赤い服を着せてみたい顔と体型をしている人だ。
...似ているんだよね。冬のプレゼントを配るあの人に。
「少しお体の調子を見せていただいてもよろしいですかな?」
好々爺じみた笑顔を向けながらベットの脇まで近づいてくる。
その後を続くように恐らく助手であろう荷物を持つ人とフォルカーさんとリカさんが部屋に入ってきた。
どうしよう。
今、私が話したり動いたりしたら今後リリアナに変わった時が大変だよね。
ーあの人の子ならもう出てくることはないっすよー
...
うっきー君のその言葉を理解したくない私がいた。理解したくなくてすがるように私の傍まで近づいてきたうっきー君に目を向けた。
ただ、黙ってゆるく首を振った。
...嘘でしょ!そうだ、スイキン!!ねっ。嘘だよね!
ベッドの上部に付いた棚の上にいたスイキンもゆっくり、でも確かに首を振った。
リリアナ。
頭が理解を拒み何も考えられなくなる。でも、体は正直で頬を静かに水が伝った。
「リリアナ殿下。いかがなさいましたか?」
目の前のおじいちゃん先生が焦ったように話しかけてくる。
何も言えずにただ静かに泣く私に困ったように優しくタオルで涙を拭ってくれた。
「ずいぶんお疲れのご様子。
もうしばらくお休みくださいませ。」
その言葉でベットに寝かされタオルをかけられ部屋の明かりが消された。
しばらくすると寝室から誰もいなくなった。
リリアナ...




