25
大きな葉の扉を開けた先にあったのは森。
ー森じゃない。大体ここは俺の居城の中だ。森に見える一室なだけだ。ー
森に見える一室ってなに?これのことか。
完全に森だよね。なんで森が遊び場なの?
そう思いよく見ると...
ある。よくアスレチック場にあるグラグラした足場のやつが。
あっ、犬と猫が競うようにして遊んでる。
...よし、行ってみよう!!
ーよし、行く気になったか?入り口はあそこだからな気をつけて行けよ。ー
そう言って腕から降ろして入り口を教えてくれた。了解。
「いってきまーす。」
ーえっ。あっ。ちょっと!待つっす!!子供一人じゃ危ないっすよ!!ー
駆け出した私の後をリスザルさんが焦って追ってくる。
やーだーよー。待たないよー。
ーどうだ?楽しかったか?ー
「楽しかった!!
茎の中を滑る大きな滑り台とか、花のトランポリンとか、水の上で蓮の葉の上を移動するやつとか、蔦と蔓で出来たジャングルジムとかいろんな妖精さんもいたよ!!ほとんどクリアできなかったけど楽しかった!!またやりたい!!」
楽しすぎて息がまだ整わない。
ここはさっきの遊び場の森の部屋から二つ隣の休憩室。
床は芝生で、壁は木製。今更なんだけどあの巨木の中にいるんだってさ。
雲が見える窓が開いていて冷たい風が吹いて火照った体にすごく気持ちいい。
ガーベラみたいな花のテーブルと若葉のイスとキノコのイスがあってリスザルさんは私に付き合って疲れたらしく若葉のイスを2個つなげて寝てる。
徹夜明けのサラリーマンみたい...
森の妖精王はキノコイスに私を座らせ、楽しそうに笑いながら少し大きい花の蕾を手渡してくれた。その蕾を両手でもらうと開き始め少しだけ開いたグラスの様な形で固まってしまった。
ー花の蜜のジュースだ。飲んでみろ上手いぞ。ー
森の妖精王のその声で驚きから解放された私は言われるままにゆっくり飲んでみると疲れた体に沁みる蜜の甘さと少しの柑橘系の酸味を感じた。
「美味しい。」
自然と感想が零れ落ちるくらいに美味しい。
ーそうだろ。そうだろ。
この花は特殊で俺の城にしか咲かない花だからな。味わって飲めよ。ー
どこか誇らしそうに嬉しそうに笑いながら森の妖精王はおかわり用の花の蜜のジュースと甘い匂いを漂わせた果物を用意してくれた。
ー好きな物を食べな。ちなみに、俺のおすすめはこの黄色いやつだ。ー
「ありがとう。遠慮なくいただきます。」
普段これだけ動くことないからお腹すいてたんだよね。
切り分けられた果実はどれも美味しそう。
それじゃぁ、おすすめからいただきますか。
「美味しい!!バナナだ!!!」
ー...バナナってなんだ?ー
パチクリ。心底不思議そうに聞かれてしまった。
えっと前世の話しても大丈夫かな?頭のおかしいやつとか思われないかな?
ー前世?...何だお前、記憶持ちか!ー
そうだった!考えてたこと分かるんだった!忘れてた。
ー...忘れてた。
くっ。っあははははははははははは!!!ー
そう言って森の妖精王は息が出来ないほど笑い出した。
笑いすぎ。別に忘れたくて忘れてたわけじゃないんだけど...
ーマジで忘れてたんすか?ー
のそりと起き上がったリスザルさんまで信じられないものを見るようにみてきた。
二人して言わなくてもいいじゃん。
「忘れてました。いいでしょ。それくらい忘れたって!」
森の妖精王は笑いが収まらないらしくまだ笑ってる。
もぅいい!ここにある果物全部食べてやる!!お腹すいたし、やけ食いだ!!
それにしても、色や形はほとんど同じみたいだね。
バナナにオレンジ、キウイ、苺どれも旬らしく甘くて瑞々しくて美味しい。
唯一知らないのは、この金色。とっても美味しいけど食べたことない味してる。
マンゴーみたいに濃厚な味なのにシロップ以上に甘い。でも後味は爽やかで最後は口の中に残らない。はっきり言って、いくらでも食べられるくらい美味しい。
ーなんだそれが気に入ったのか?ー
同じ金色の果物食べ続けていた私に笑いの収まった森の妖精王はイスに座りなおしながら聞いてきた。
「うん。これすっごく美味しい。なんていう果物なの?」
ーそれか...なんだっけな?ー
えぇ。忘れたの?人の事言えないじゃん。
ー聞こえてるぞ。ー
聞かせてるんだもん。
そう脳内で告げたら嬉しそうに笑う森の妖精王がじっと私を見てきた。
さすがに失礼すぎたかな?そういえば、妖精王だもんね。
ー今更すぎるぞ。ー
呆れたように笑いながらおかわりの花の蜜ジュースを注いでくれた。
「ねぇ、リリアナはまだ起きないの?」
時間的にはずいぶん経ったように感じるけど...
ーあぁ。起きてはいない。時間はそうだなそろそろ夜だな。ー
「夜!?そんなに遊んでいたの!?」
マズイ!!さすがにマズイ!...のかな?
そもそもあの場所で私を心配する人って...誰?
血縁関係者なら首相さんやダリオさんレオナルドさんに曾おじい様だけど...
うーむ?
考え込む私を見ながら森の妖精王は口を開く。
ーなんだかよくわからんが、帰るなら連れてくぞ。
時間的にもそろそろ、そのキノコの効果も切れる頃だろう。ー
「そっか。このキノコ半日って言ってたっけ。
リリアナ、遊べなかったね。一緒に遊べたらよかったのに...」
少し残念に思いながら席を立つと困ったような森の妖精王がいた。
ー...では、送ろう。まずは元に戻らなければな。ー
「それじゃあ、よろしくお願いします。」
そう言って森の妖精王に抱き上げてもらった。




