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スズランに吸い込まれた先にあったのは...とても巨大な大木。
大木は雲を突き破り広い空へとその青々とした枝を広げていて、枝の隙間を縫うように輝きを放つ虹の橋がいくつも架かっている。巨大な葉の周りをいろいろな鳥や虫にドラゴン?が飛び交い、地上ではいろいろな動物、植物が仲良くお昼寝をしていたり、遊んでいたりしてる。
...ナニコレ!?ファンタジー!!!
ふぁぁぁぁあああぁぁぁ!!開いた口が塞がらない。すっごいい!!!
ーふっ。あれが俺の城だ!これくらいで驚いてちゃ後が困るぞ!!ー
私を抱っこする森の精霊王はそう言って巨大な大木を指して楽しそうに笑った。
あっ。笑うと可愛い。瞳は緑色してるんだ。
ーっとその前に、遊ぶ前にその体では不自由だろう。これをやる。ー
そう言って出してきたのは小指の爪くらいの小さい毒々しい色をしたのキノコ。
胡散臭い目で見た私に焦りながらも説明し出した。
ーそのキノコは食べた者の意識と体を一時的にキノコに移すことが出来るものだ。つまり、お前が食べれば意識が二つに分かれて別々に活動できるってことだ-
リリアナと私が別々に動ける?
...落ち着け私。落ち着くんだ。
すぐにでも飲み込みたいのを抑えて質問する。
期限はいつまで?あと、副作用は?
ー期限は約半日。副作用はよく寝るくらいだな。どうする?ー
決まってる!こんな楽しそうな場所で見てるだけなんて有り得ない!!
いただきます!!
ーそうこなくっちゃな!口を空けろ!!ー
っポイ。ゴックン。
森の妖精王さんにキノコを口の中に放り投げられた。
...キノコを生って駄目でしょ。
口の中に入ったキノコを飲み込んだらなんとも形容しがたい味がした。
はっきり言うと...クソマッッズイィィィ!!!
はっ!!...あまりのマズさに意識を失っていた!?
体はどうなったの?...うわぁぁ。キノコボディ。
服着てないし。いや。違う。キノコは服着ないからそれ以前の問題だから。
キノコの石づきから枝の様な何かが伸びてるけど感覚あるからこれが足かな?
手もあるけど棒だから手というべきか腕というべきか?
多分だけど、信じたくないけど、キノコに棒手足付けたような体してる?
マジか。キモチワルイ。
ー起きたか!いきなり意識を失ったので驚いたぞ!!ー
ー当然っす。人の子にあのキノコを食べさせるなんて...ー
あっ森の妖精王さんと...その隣を歩くリスザル。今、話した?
ー初めましてっす。俺は森の妖精。
あんたを連れてきた森の妖精王の配下になるっす。ー
っす?って口癖かな?...リスザルが話すんだ。
今更だけど何でも有りだね。
「初めまして。リリアナと言います。
...あの、ここはどこですか?」
あっ、タオルが柔らかい若葉だった。
棒の手なのにタオル持てるんだ。あと、声って一体どこから出てるんだろう。
不思議。
ー説明してないんすか?ー
ジト目で責める様に森の妖精王さんをみるリスザルさん。
...森の妖精王はまったく気にしてないな。
大きなため息を吐いたリスザルさんは気持ちを切り替えたらしく明るく話し出した。
ーここは森の妖精王の城”母なる大樹”っす。お客さんなんで歓迎するっすよ!!-
「ありがとう。あともう一つリリアナはどこにいるの?」
そう、ここの部屋のベッドで寝ていたのはキノコボディの私だけ。
ーあんたの体ならまだ別室で寝てるっす。起きたら知らせるっす。ー
ーそんなことより、客人をもてなすぞ!ホラ、行くぞ!!付いて来い!ー
そう言って森の妖精王は歩いて部屋を出て行ってしまった。
ーったく。...体は問題ないっすか?
大丈夫ならしばらくうちの大将に付き合ってやってほしいっす。ー
ーおい!早くしろ!-
遠くから森の妖精王の声がする。
私とリスザルさんは急いで森の妖精王の後を追った。
一枚の大きな葉で出来たドアを抜けた先にはいろんな動植物達で賑わう大きな吹き抜けがあった。
吹き抜けを踊る様に飛び回る鳥や虫達に逃げ惑うサル達。を追いかける二足歩行で怒り狂い走り回る黄色い花。
・・・たくましい足。根っこかな...サル達なにやったんだろ?
蔓で出来た柵を掴み吹き抜けを覗くと下はかなり遠くて何かの灰色の動物が米粒みたいに小さく見えた。
ー驚いたっすか?怖がらなくていいっすよ。
この城にいるのは色々な形をしていてもみんな森の妖精っすから。ー
「そうなの?森の妖精さんって色々な形をしてるんだ。」
ーそこっすか?
森の妖精に限らず妖精はカタチに決まりはないっす。妖精ってのは大いなる力の流れそのものっすからいくらでもカタチは変えられますし色も変えられるっす。
簡単に言えばその日の気分で変えるっすね。ー
へぇ。そうなんだ。...ってことは海の妖精のスイキンも?
「ねぇ。契約した妖精はどうすればわかるの?」
ーん?契約?契約したいんすか?
そもそも契約するような妖精はなかなかいないっすよ。-
えぇ?だってスイキン契約だって言ってた。
ーおい。早く来い。ー
ー今行くっすよー!早く行くっす。ここの事は歩きながら説明するっすよ!ー
「どっち行けばいいの?」
森の妖精王の声は上からするけど階段は見当たらないし。
ーこっちっす。もう上に行かれてるっす。ー
そう言われて手を引かれて少し左側へ進むと蔦が2本下から上まで伸びている。
リスザルさんが手すりに置いてあったつぼみに手を置くとその花が淡いオレンジの光を出しながら咲いた。
しばらくすると、蔦の巨大な葉が下から私達のいる場所に上がってきて蔓の柵が自動的に開いた。
ーほら、早く行くっすよ。ー
リスザルさんに急かされて巨大な葉の上に乗ると上昇しだした。
...エレベーター?ファンタジーなのにエレベーター?
これ、葉っぱの周りに柵ないから怖いな。落ちそう。
高所恐怖症の人は乗れないだろうなぁ。
やっと...止まった。
地面が見えなくなった頃から怖くて立っていられなくて、リスザルさんに力一杯しがみ付いちゃった。
あー怖かった。...もう一回乗らない?
ーゴホッゴホッ。...苦しかったっす。ー
リスザルさんが苦しそうに先程まで締めてしまった喉を触っている。
「ごめんなさい。怖くて...」
リスザルさんに言い訳をしながら廊下に出れば、6枚の葉で作られた窓が全開になっていた。...私の目線の高さに雲がある。
高いはずだよ。この場所!雲の中なの!?高すぎるでしょ!!
ーおっ!ようやく来たか。ー
私達に気が付いた森の妖精王が吹き抜けの蔓の柵に座り優雅にお茶を飲んでいた姿で声をかけてきた。......落としてやろうかな?
何も言わずに少しづづ近づいていく。
ー落ち着け。考えてることが漏れてるぞ。ー
キノコの笠?頭?を上から手で抑えられて動きを止められた。
手を除けたくても手が届かない。キノコボディめ!!
そういえばリスザルさんとはちゃんと会話してるんだよね。
「森の妖精王さんは私の考えてることが分かるの?」
ー分かる。だが気にするな。ー
「どういうこと?」
ー人は考えを読まれるのを嫌うだろう。ー
「...あぁ、確かに。頭の中を覗かれているみたいでいい気持じゃないよね。」
ーぐっ。...すまん。ー
「いいよ別に。それにだからこそ私が分かったんじゃない?」
少し笑いながらテキトーに言ってみたら心底驚いたような反応をしていた。
ー...驚いたな。その通りだ。
あれだけうるさい意識をだからな。もう一人のお前は静かなもんだ。ー
「うるさいって...否定はしない。」
少し胸を張って答えた。
ーなんだしないのか。ー
笑いながら私を抱き上げて廊下を進む。
うーむ。キノコを抱き上げるイケメン。誰得なんだろう?
「で、ここなに?」
遊びに連れてきたんだから楽しい所なんだろうけど。
ー俺の城の自慢の遊び場だ。ー




