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ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
第2章の更新は本日一日だけ一時間ごとに更新予約をしております。
今後もお楽しみ頂けましたら幸いです。
フィリップとようやく会えた。
毎日一緒にいたからたった数日会わなかっただけなのにずっと会っていなかったような気がして、沢山話したいことはあったはずなんだけど、少ししか話は出来なかった。
フィリップは首相さん達が故郷に送り届けてくれるって言ってくれたから喜んでた。
故郷に帰るんだ。
フィリップが家に帰ることを望んでいたはずなのに酷く寂しい。
リリアナはあれから一度も出てこない。これからフィリップのお見送りなのに...
フィリップ帰っちゃうよ。あいさつしなくていいの?もう会えないかもしれないんだよ。
翌朝、私は見送るために王宮前門に曾おじい様に抱っこされて連れて行かれた。
そこには、馬車と護衛の騎士様とフィリップがすでに準備を終えて待っていた。
本当に帰るんだ。
「降ろしてください。」
私は曾おじい様に降ろしてもらいフィリップの所に駆け寄った。
「フィリップー。」
ズルッ。ベシャッ。
...痛い。...転んだ。
「リリアナ様!!」
恥ずかしい。盛大に転んだよ。しかも痛いし...また涙が出そう...
急いでフィリップが抱っこしてくれた。傍にいた曾おじい様と騎士様達が驚き慌ててる。
「フィリップ。行っちゃうの?」
涙を我慢しながら話したからか情けない声だし、抱っこされてるからくっついているし。
カッコ悪い。ちゃんと心配しないように笑わなきゃ。私は大丈夫って分かるように。
「リリアナ様。」
ほら、私がこんなだから困ってる。ほら、笑え。
「なーんてね。...心配した?」
ちょっとおどけて笑って見せた。
フィリップはなんでか驚いていてそれから泣いたように笑った。
「はい。心配しました。リリアナ様は心配させるのが上手いですね。
イイですか。これから俺はいないんですからちゃんとご飯を食べてくださいね。
それから朝も起きてくださいね。あと...」
「フィリップもういいよ!!大丈夫だからさ。」
なんで朝起きれないこととか今言うかな。皆聞いてるんだからね。
「ねぇ、大きくなったら遊びにいっていい?」
恥ずかしさを誤魔化すように少し声を大きくして話した。
「何もないところですよ。...それでもよければ。」
「じゃあ行く。必ず遊びに行く。」
これで最後なんて寂しいもんね。リリアナだって逢いたいだろうし。
「分かりました。待っています。それから。」
フィリップは耳に顔を近づけて私にだけ聞こえるように言った。
「もう一人のリリアナ様にもよろしく伝えておいてください。」
驚いてフィリップを見ていると首相さん達がきた。
今日も人が多いね。
来たのは首相さん、ダリオさん、レオナルドさん、それから派手な知らない人達。派手な人達は警護の人達が付いているから立場のある人達なんだろうな。
ぼんやりと見ていたらフィリップは私を降ろし膝をついた。
どうすることも出来なくてそのまま立っていたら首相さんがフィリップと話し出していた。
「フィリップよ。これを。
自身が困難な状況にありながら我が国の姫を今まで守り育ててくれた礼の品だ。」
横からダリオさんが大きい袋をフィリップに手渡した。
ジャラジャラ言ってるけど何が入っているんだろう?フィリップも分かっていないみたい。
「改めて礼を言う。大儀であった。」
「はい。ありがたきお言葉。」
そう言って一層深く礼をしたフィリップは勢いよく馬車へ歩き出してしまった。
泣くな。まだ泣いちゃダメ。
「そなたに太陽神の導きがあらんことを...」
馬車に乗ったのを確認した首相さんが別れの言葉口にしちゃった。
最初はゆっくりと馬車が走り出す。
私は滲む視界で馬車が見えなくなるまでしばらく見ていた。
「リリアナ。...泣いているのか?」
気が付くと首相さんが私の隣に立って、苦笑いをしながら聞いてきた。
「泣いてないもん。」
私は涙を拭いながら一人で王宮に向けて歩き出した。
大丈夫だよ。フィリップがいなくても一人でも大丈夫だから。
なんとなく見上げた空はきれいな五月晴れだった。




