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ジャノヒゲ女王国  作者: くまごん
1ー誕生、そしてー
15/118

15ーツヴァイ視点2ー

 あの子が早朝に近い時間に副騎士団長に連れられて王宮に戻ってきたので、急ぎ休ませている客室に向かった。そこにいたあの子は泣き腫らした目をして眠る痛々しい姿だった。瞬間、連れ去った犯人に怒りを覚えたが手を握りしめどうにか抑えた。


「アビゲイル騎士団長、ロペス副騎士団長、並びに我が騎士達よ。

 大儀であった。

 また、一人の親としても礼を言わせてくれ。」

 客室の応接室で警備をしていた騎士団長達にそう声をかけた。

「私からも礼を言わせていただきたい。

 今回の一件、これだけ早く解決できたのも騎士団の力があってのことでしょう。

 苦労をかけましたね。」

 共に来た第一夫君のダリオもそう声をかけた。

 なんだかんだと言っていたがこやつもずいぶん心配していたからな。

「はっ。ありがたきお言葉。」

「うむ。では、あの男は捕らえたが念のために警護を頼むぞ。」

 離宮破壊も王宮からの連れ去りもまだ方法は不明なままだ。

 リリアナが狙われている可能性も捨てきれないので騎士と魔導士の精鋭達が廊下と室内を交代で警護をすることになっている。我が国の精鋭達だ。

 これならこの子を再び連れ去られる様なことはないだろう。

「はっ。お任せください。」

 アビゲイル騎士団長より力強い返事を聞き満足して頷いていると

「申し訳ございません。口を挟むことをお許しください。」

 普段、決して口を挟まない副騎士団長が声を上げた。

 ...珍しい。それほどのことがあったのか。

「...ここでは話しづらいことか?」

「はい。出来るならばお時間を頂けると幸いでございます。」

「ならば、場所を移動しよう。」


 人払いをした首相執務室に移動して椅子に腰を落ち着けた私の周りにダリオ、副騎士団長が立つ。

「人払いはした。してどうした?」

「忙しい中時間を頂き恐縮にございます。一つお耳に入れたいことがございまして。

 リリアナ殿下を保護した後、馬車での出来事でございますが...」


 そう前置きをして話し始めたのは馬車内でリリアナが泣きながら話したことだった。

「...そうか、分かった。その事については決して他へ漏らすなよ。

それから、そなたも疲れたであろうゆっくり休め。」

「はっ。失礼いたします。」


 副騎士団長が部屋から退出して部屋から離れたころダリオが口を開いた。

「どう思いますか?」

「あの子はまだ3歳だぞ。だが、戯言(たわごと)と切り捨てることは出来ないな。」

「そうですね。...レオナルドに急がせます。」

 当然のようにそう言い切った。

 我が子であろうと使えるものは使うな。本当に。

「...離宮に踏み込むことは可能か?」

「難しいですね。力づくという意味なら簡単な話ですが。

 一応、あれでもこの国の最高位に位置する女性です。

 あれ自体に頭はないですが周りにいる羽虫共が騒ぐことになるでしょう。」

「そうか。」

 そう言って、私はただダリオを見つめた。

 目は口ほどにモノを言うというし、幼馴染ならば言わずともわかるであろう。

「分かりました。

 私がレオナルドを手伝いに行きましょう。だからその目はやめなさい。」

 ふっ。勝った。

 このたれ目、私自身は嫌いだがダリオにはなかなか効果的だからな。

「では、頼んだぞ。

 それからおじい様があの子の世話を昨夜のうちに買って出てくださってな。」

 ダリオの時が止まった。

 うん。うん。やはり驚いているな。私もこの知らせをもらった時は何度も確認をしてしまった。

「...もしかして、リドラス筆頭大公がですか?」

「そうだ。多分そろそろいらっしゃるのではないか?」

「なんと。それはもてなしの準備をしなければなりませんね。では、私はこれで・・・」

 逃げたな。昔ひどく叱られてからおじい様からは逃げの一手だな。


 昼過ぎにおじい様が私の執務室にいらっしゃった。

「おじい様。御用がございましたらこちらから伺いましたのに。」

 おじい様は朝早くに登城なさって、それからあの子の所にいたはずだか・・・?

「孫の顔を見に来ただけだ。」

 ・・・今、仕事中なんだが。

 あと、今年で44になるので建前でもやめてください。

 思わず呆れた顔で見てしまった。

「とりあえずお掛けください。」

 おじい様相手では仕事など続けられないだろう。私は執務を中断しソファへ移動した。

 ソファに座ったら直ぐおじい様が口を開いた。どうやら機嫌が悪かったらしい。

「面倒は省くぞ。リリアナが目覚めないので医者を呼んだ。」

「昨日は一日中、王都内を連れ回されていたようですので疲れが出たのでは?」

「ああ。医者の見立ても疲労と軽い栄養失調だそうだ。しばらく栄養をとって休めば治るそうだ。

 で、本題だ。

 リリアナは女の子だ。」

 ・・・今、何を言われた?

「もう一度お願いいたします。」

「リリアナは女の子だ。」

 ・・・ピッタリ同じことを言わなくてもいいじゃないですか。

 違う。そうではなくて。...女の子!?

「はっ?えっ?女の子?まさか!...おじい様御冗談を...。」

 言わないでください。そう言おうとおじい様に目を向けたら有無を言わさない迫力を纏っていらした。

「言っているように見えるか?」

「ツヴァイ、あの子が生まれた時のことを話せ。」

 まるで、取調室で尋問を受けているような心地になりながら洗いざらい話した。

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