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ひっ。うっ。...ぐすっ。
捕まったちゃった。
起きたらいきなり知らない超美女のドアップだよ。
明るい茶髪に金色の瞳をしていて優し気な顔立ちの綺麗な女の人。こんなに綺麗な人初めて見た。驚き過ぎて泣いちゃたよ。
着ている服は皮鎧だけど、他の甲冑を着ている人達が気を使っていたから騎士団関係者でも偉い人だと思う。
落ち着いて。泣いてる場合じゃないよ。
多分、この国の平民の命は軽いからフィリップは悪くないって証言しないとどんな酷い目に合うか...
フィリップ、ケガしていないかな?逃げられたかな?
スイキンはどこに行ったのかな?見えないみたいだから無事だといいんだけど...
この馬車に乗ってるのは私と私の前に座っている茶髪に少し白が少し混ざったおじさんとおじさんの隣に座ってるさっきの美女だけ。この馬車はやっぱり王宮行きだよね。
「リリアナ殿下、少しは落ち着かれましたか?」
女の人にしては低く落ち着いた優しい声で話しかけてきた。
「ひっ。ぐすっ。...はい。」
そんな困ったように笑われても一度泣き始めたら簡単に泣き止まないの。
「あの、一緒にいた男の人は?」
涙声で聞き取りずらいかもしれないけど早く言わなきゃ。
「ご安心ください。誘拐犯は我等が捕らえました。これから余罪を追及する予定です。」
捕まっちゃってる!!
「フィリップは悪いことしてないです。私がやったの。」
「庇うことはないですよ。そう言えと脅されたのですか?」
私の言うことハナから信じてない!
「違う!違うの!!
誘拐なんてされてない。私が!自分で出ていったの!!
あのままあそこにいたらフィリップが殺されちゃうから!」
驚いて顔を見合わせる二人。
ゆっくり女の人が確認をするように私に問い掛けてきた。
「なぜ、出て行かれたのですか?」
「ふっぐっ。また物置に戻りたくなかったから。」
誰かが息をのんだ音が聞こえた気がした。
「なぜ、あの男が殺されるとそう思われたのですか?」
「教えてもらったの。フィリップをデイジーが...ぐすっ。
ひっく。デイジーが...誘拐して...殴られ...ナイフもっ...平民だって...」
泣きすぎて言ってることがメチャクチャになってきた。
息ができないくらい泣き出した私を見ておじさんがなだめようとしてくれる。
けど、涙が止まらなかった。
「...私が居なくなれば!...家に帰れるから!!」
その後は言葉にならなかった。
言いたいことはいっぱいあったのに口から出るのは嗚咽ばかりで聞いていた二人は意味が分からなかったと思う。馬車が王宮に着くころには私はまた泣き疲れて寝てしまった。




