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ジャノヒゲ女王国  作者: くまごん
1ー誕生、そしてー
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「はい。お待ちどうさん。熱いから気を付けなよ。」

 フィリップが屋台の元気のいいおっちゃんに手渡されたものはキラキラ肉汁が輝く肉串!!

 何肉だろこれ?いーにおい。

「ありがとうございます。熱いからゆっくり食べてくださいね。」

 そう言って抱っこされている私の口に肉串を近づけた。

 待ってました!!

 うっはー!美味しそう!!では、いただきます。

「あっつ!!ほふっ。あっ。」

「あー!!だから言ったのに坊ちゃんには熱いだろうよ。おい、水あるか?」

 屋台のおっちゃんが慌てて水を取りに行ってくれた。

 あんまりに美味しそうだからつい大口で食べちゃったよ。すっっっごく熱い。

「おい、兄ちゃん。水飲ませてやんな。」

「あっありがとうございます。お水ですよ。飲めますか?」

 屋台のおっちゃんいい人やなー。水まで出してくれるなんて。

 でもこの肉串、熱かったけどそんなに美味しくないね。残りはフィリップにあげよう。

「お水、ありがとうございます。お肉美味しかったです。」

「おおっそうかい。嬉しいこと言ってくれるね。」

「ところで、今日は騎士様が多いみたいですが何かあったのですか?」

 フィリップは少し緊張した様子で屋台のおっちゃんに聞いた。

 美味しそうって思ったのも事実だけど、さっきから甲冑を来た人たち(フィリップが言うには騎士様)が多く行きかっていて、さっきこのおっちゃんと話していたのを見たんだよね。これが聞きたくてこの屋台にしたんだもん。

「あぁ。騎士団総出で探し物をしているんだと、よっぽど大事な物なんだろうな。城門で副騎士団長様が自ら指揮をとってるらしいぜ。」

「えっ。副騎士団長様が自らですか?」

 騎士様がいて副騎士団長がいるってことは・・・

 騎士団があるんだ!カッコいい!!

 フィリップがすごく驚いてる。副騎士団長っていうから偉い人なんだろうけど。有名な人なのかな?

 騎士団って何人くらいいるんだろう?数が多いと逃げるのが難しくなるよね。

 それにしても予想以上の大事になったね。3年間物置に放置だからいなくなっても大丈夫だと思ってたけど。作戦練り直したほうがいいかな?





 市場でお腹を満たした私達は情報収集のため運送ギルドに向っていた。

 スイキンいつまで寝るんだろう?腕の中でピクリともしないけど寝てるだけだよね?それにフィリップも屋台のおっちゃんから話を聞いた後、何を話しても上の空だし。

 しばらくすると何かを決意したように顔を上げたフィリップが足早に脇道にそれた。

 ん?さっき市場で聞いた運送ギルドに行く道と違う。

「フィリップ、どこ行くの?道が違うよ。」 

 急いで周りを確認した後フィリップはようやく口を開いた。

「リリアナ様、王宮に戻りませんか?

 首相様は寛大な方だとお聞きします。きっと怒られませんから、戻りましょう。」

 私に言い聞かせるような、穏やかな声で私にとって残酷な事を話し出した。

「いや!!戻らない!フィリップは私にまた物置に戻れっていうの!?」

 思わず声が大きくなる。

「それは!...しかし...」

「私は平民になるの!もうあの場所には戻りたくない!!」

 これは私とリリアナの本心だ。

 ずっとあの狭い物置で一人、寂しかった。

 いつかフィリップが来なくなるんじゃないかって、他の人達みたいにいなくなるんじゃないかって怖かった。

 リリアナは物静かな子でも手のかからない子でもなくて、手を煩わせたらもう誰も来ない気がしたからずっと我慢してた!

 それに!3年も存在を放置しておいて顔を見ただけで父親面する人達なんて信用できない!!

 感情が高まって涙が勝手に溢れてくる。

 そうだよ!私は!フィリップを家に帰すなんて建前でただ、物置から外に出たかった。

「ヒック。いや。絶対。戻らない。」

 声にならない思いが溢れて小さな声しか出なくて、それでも戻りたくなくてフィリップに抱き着いて泣いた。

 私が何を言おうとも力づくで私を連れ戻せる優しくて大好きな人に。





 目が覚めると夕方だった。

 上質とは言えないけど、きれいなベットの上に私は寝かされていた。

 泣きすぎて(まぶた)が重いし、目が痛いし、頭が重い。

 お昼くらいだったからずいぶん寝たね。フィリップはどこ行ったんだろう?

 スイキンはまた空中を漂ってる。寝てるのかな?あれ。


「ただいま戻りました。」

「フィリップ!!おかえりなさい。どこ行ってたの?」

 身支度をしていたらフィリップが帰ってきた。

「運送ギルドに行って調べてきましたよ。」

 フィリップは何事もなかったかの様にそう答えた。

 私が大泣きして眠ってしまったから運送ギルドにフィリップが一人で行ってくれたらしい。それに王宮に連れ戻す気もないみたい。

「ありがとう。教えてくれる?」

「はい。もちろんです。」

 二人でベットに座って向かい合った。

「貸馬車の件ですか。まず馬を借りることに一日最低銀貨十枚、そして馬の飼葉料と宿屋に泊まるなら馬小屋を借りなければいけません。ですが私の住んでいた村までならば7日程度で着くそうです。返却は近くの運送ギルドで大丈夫だそうです。」

 馬車を借りるだけで銀貨が最低70枚以上必要ってことだね。うん。お金がない。

「高いねー。ちなみに徒歩だと?」

「20日ほどで着くそうです。ただし保存食や宿代などを考えるとそれでも銀貨60枚以上は必要だということです。それに野盗や魔獣か出没するのでかなり危険があるということです。」

 おっふぅ。

 銀貨60枚。保存食は市場で銅貨5枚程度だったからほぼ宿代だろうけどそんなにかかるの!?

 安く上げるには野宿ー?・・・野盗や魔獣が出没する場所で野宿は無理だね。

 フィリップは戦ったことはないらしいし。

 ...ちょっと待ってよ。この宿代どこから出したの?フィリップお金持っていないでしょ。

 私は急いで荷物を開けて中身の確認をした。

 銀貨が!減ってる!!

 この国の貨幣は銅貨が1枚で黒パンが一つ買えるくらいで、銅貨10枚で銀貨1枚ってことは市場を回っている間に教えてもらった(それより上の貨幣はフィリップは見たこともないらしい)

 質屋で銀貨9枚を入れて屋台で銅貨6枚を使ったからここになきゃいけないのは銀貨8枚と銅貨4枚。

 今、ここにあるのは。銀貨2枚と銅貨9貨枚。

 私はゆっくりと振り返った。

「フィリップ。何にいくら使ったか教えてくれる?」

「ええっと。まずこの宿代で銀貨5枚。あと腹が空いていたので下の食堂で食事を頂いたので銅貨5枚でした。」

 計算上は合う。

 あああああ。必要経費ね!泣き疲れて寝た私を寝かす場所にしても成人男性が昨日の夜半から夕方まで動き回っているんだもんお腹空いたよね!!

 膝から崩れ落ちちゃったよ。そーだよね。そうだよね。私が考えなしなのさ...

 ぐぎゅー。ぐるるるるるっ。.....

 私のお腹の虫め!!

「リリアナ様、夕食を食べに行きませんか?夕食は宿代に含まれているそうですから。

 ...あの。大丈夫です。聞いていませんから。」

 なんだろ?私が打ちひしがれてるのお腹空いてるかだとでも思ってるのかな?

 ...これからどうしよ。


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