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第八話 胴上げはやりすぎでしょ。

投稿遅くなり申し訳ありません。明日も十二時前後になると思います。ローグ視点です。

 いやー面倒だった! 皆の前でありもしない功績を延々と褒められて、最後は謎の胴上げまであった。いみわかんねぇから! それに帝国の使者。彼らは皇帝の親書を携えてやって来た。なんでも不可侵条約を結びたいとか。父は諸手を挙げて歓迎してたよ。使者もドン引きだった。愛想笑いと冷や汗が止まらないようだったから別室へ逃がしてやったら滅茶苦茶感謝されたわ。


 その時だった。使者が俺にも手紙を渡してきたんだ。こっそりと言った感じで隣に控えていた護衛のヒュラとメトクラスも気が付かないほど巧妙に渡してきた。んで、俺は今自室に戻ってその手紙を開封しようと思ったわけだ。


「魔族王の息子、軍を率いる偉大な将軍へ。だって。率いたこともなければ偉大でもないんだけど……」


 手紙を訳すとこうだ。『いやー。若いのに凄いっすね。その調子で王国ぶっ潰しちゃってくださいよ。あ、こっちも王国の国境に軍隊配備して圧力掛けてるんで。やつら調子乗って勇者まで召喚して許せないっすよね。それはそうと今度会いましょうよ。すげー歓迎しますよ。あ、今後も手紙交換しましょうね!』


 なんか舎弟から送られてきた手紙みたいでビックリしたわ。人類が一枚岩じゃないのは知ってたが、まさか帝国がここまで王国にキレてるとは思わなかった。まぁ、全部が本当のことってわけじゃないだろうけど。さて、俺も返書をしたためるとしよう。


「皇帝さん、あなたも若いのに凄いですね。尊敬します。今度会いたいですね……。こんなものでいいだろ。向こうから見れば魔族なんてのは幼稚な文明を持った劣等生物みたいに思ってるらしいし。適当でも怒られないだろ」


 一人でブツブツ呟いていると、部屋の扉がノックされた。


「どぞー」

「失礼します」


 中に入ってきたのはお気に入り筆頭のテッフェちゃん! あぁ、いつ見てもステキな御御足ですこと……。スリットの入った紺の長いスカートからチラリズムする初雪のように幻想的な足、黒いハイヒールもその足をより一層輝かせている……。


「どうなさいました?」

「い、いやなんでもない。それでどうしたの?」


 俺の言葉に頷いてテッフェちゃんは近づいてから束になった書類をくれた。……仕事じゃないだろうな。


「集めていた勇者に関する情報です。年齢、名前、判明している能力などを纏めました」


 流石です!


「ありがとう。にしても随分早かったね」

「えぇ。あの年頃にはハニートラップは最高に嵌りますから」

「ま、まさか……」

「あ、私はしてませんし、体を差し出すようなこともさせてませんよ? 少し褒めて体を撫でてあげたらペラペラと喋ったようです。部下にはそういうのが得意な子も多いので」


 な、なるほど。俺も高校生だったら引っかかってたかも。い、いや! 今は引っかからないからね! もう大人だし! 魔王軍元帥だし! 


「召喚されたのは三十四名。内一人はどこかへ行ったそうですが」


 あぁ? 団体行動ができないやつだと? ……それが主人公だ! 今の内にひっ捕らえなければ! どうせ美人な奴隷とかどっかの貴族の娘とかに囲まれて鈍感を披露しつつ、最強の技を得意げに使ってるに違いない!


「中心人物は二人。今、勇者たちはその二人の下でまとまっています」

「ユウタ・ゴトウ、ハルカ・ニジョウ。互いに能力や得意魔法は不明。ね」

「はい。特徴といえば二名ともかなり容姿が優れているとか」


 ……いや、こっちが主人公の線は薄いな。主人公を追い払った人気者かな? もう一人の女は……分からないな。主人公のヒロインか、人気者の持ち上げ役か。人気者のヒロインなら主人公を追いやった一味ってことだろうな。


「いいなぁ。俺もチート能力欲しかったわ。なんだよ、ちょっと水が出せる魔法って。しかも風呂水にしては少し冷たくて飲むには若干あったかいっていう微妙な温度。火は出せても風が吹いたら消えるし。軽く大陸割るくらいしたかったわ」

「なにを言っているんですか?」

「なんでもない」


 愚痴になっちゃったな。だってさぁ、ずるくね? まぁ魔王の息子も随分と恵まれてるけどさぁ。どうせ頭もいいんでしょ? どうせよく見たら容姿もいいんでしょ? 俺の顔はマジでパンピーだからな……。それに結婚相手だって政略で決められることは分かりきったこと。神よ、われに転生チートと美人嫁を与えたまえ。いや、神に離反した魔王の子孫が神頼みは流石に皮肉が過ぎるな。


「この二人を中心に情報を集めますか?」

「うーん。その二人も重要だけどいなくなった一人が一番知りたい。得意魔法はもちろん、集団から脱落した理由とか、そいつが周囲にどう思われているかとか、そいつのヒロインとか」

「ヒロイン、ですか?」

「そう。ヒロイン。絶に周りに女が居るはずだ」


 俺の自信たっぷりな発言に、テッフェは僅かに首をかしげたがすぐに頷いてくれた。


「かしこまりました」

「だが、そいつに深入りするなよ。どうなるか分かったもんじゃない」


 かわいい密偵を送ろうものなら優しさと主人公補正で自分の物にしかねないからな。そいつが主人公じゃなければいいんだが……。まてよ? 俺敵役ってことにならない? 魔王軍の元帥、ラスボス前のボスじゃん。確実にシバかれるじゃん!! これは今の内に味方にしておかないとまずいかもな……。よし、とにかく情報だ。情報を集めて欲しい物を沢山プレゼントしてやろう! 魔王は敵じゃありません。真の敵は王国です。そう思ってくれれば俺にヘイトは向かわないだろう。いいだろ主人公、貴様に貢いでやる。


「では失礼します」


 優雅に一礼して去って行くテッフェに鼻の下を伸ばしたのは秘密な。


それにしても、


「スローライフ送ってくんねーかなぁー! 実はド変態の男の娘好きで世界各地の男の娘収集してくれねーかなぁー!」



誤字脱字報告、感想や批判等お待ちしています。

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