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第六話 幼帝は恐ろしい子。

ローグ視点です。今回は説明回です。

 よう! 皆元気か? 俺は元気だ。なんと言っても久々に嬉しい報告がメトクラスからもたらされた。


「え? 魔王陛下が帰ってくるって?」

「はい。明日の夜にはこっちに来るそうです」


 ケモミミおっさんのメトクラスは追加の書類を持ってきた際にそう言った。王国軍の侵攻から一ヶ月、一部の勇者たちが国境付近での活動を始めてから数日、まだ勇者たちの情報は入っていない。ただ、異世界から召喚されたらことは間違いない。海鮮食べ放題格安ツアーに行った高齢の団体客が召喚されてねーかな……。俺でも知ってる武田騎馬隊とか、ナポレオンの大陸軍グランダルメとか召喚されたら詰みだな。最悪なのは米軍基地ごととか……。考えても仕方ないか。情報を待とう。


「分かった。それにしても何で急に?」

「戦勝記念祝賀会をやるとか」

「大変そうだな」

「なにを言っておられるのですか。主役はローグ様ですよ?」

「え」


 祝賀会とか大っっ嫌い! 偉い人に囲まれて、しかもそれがほぼ人じゃない。あの人たちマジで怖いから。言ってることと顔つきが違いすぎて小便漏れそうになるんだわ。


「当たり前じゃないですか。ローグ様は今回の戦いで陣頭に立って指揮を執られました。領内でもローグ様を称える声で溢れていますよ」


 クソ……。やられた。今、あの超絶イケメンがニヤニヤとしてる姿が想像できてしまう! 絶対にやつの仕業だ。実績の無い俺を危ない場所に送って功績を立たせたんだ。兵の指揮を執っていたのはほとんどデフックなのに!! 客寄せパンダならぬ客寄せ元帥だな。……元帥で客来るのか?


「俺何にもしてないんだけど」

「いえいえ。御自ら足を運ばれたのです。十分に兵士達を鼓舞しました。功績は称えられるべきです」

「はぁ……」


 俺のため息も苦笑いで回避するようになってしまったメトクラスに寂しさを抱きつつも、これも仕事の内かと割り切るしかないな。


「てかさ、俺の給料ってどこにあるの?」

「……それでしたら、明日会う陛下に聞かれては? 国庫を管理してるのは陛下ですので」

「それ危なくない? 自分のために使っちゃったら」

「なにを言います。陛下のお金ですから、陛下が自由に使っていただいて結構ですよ」


 なにそれ俺も魔王になりたい。大っきいお風呂に足を伸ばして、それから……小市民にはこれくらいしか思いつかないや。


「明日はお客人もいらっしゃるようですよ」

「ってことは、その式典知らなかったの俺だけ?」

「……あらかじめ言ってしまってはローグ様はいらっしゃらないだろうと、魔王様から」


 まぁ、そうだけどさぁ。


「お客人はエイゼルハイン帝国からの使者だそうで」


 エイゼルハイン帝国。人類で一番巨大な領土を持ち、軍事力も大陸一だ。総兵力は圧倒的にこっちのほうが多いけどね。人類側兵士を全部足しても俺らのほうが多い。魔王軍の総兵力は五十万を超える。比べて人類は三十万に届く届かないの辺りだそうだ。それでも人間のほうが魔法の質が高いらしい。


「エイゼルハインって言うと幼帝の? 詳しくは知らないんだけど」

「現エイゼルハイン帝は六歳で即位なされました」

「六歳!?」


 大変だ。小学校の入学式に行ったと思ったら皇帝になっちゃった。みたいなもんだ。政治のせの字も分からないだろうに……。俺も知らないけど。


「はい。その後、九歳までは叔父が帝国宰相として権勢けんせいを振るっていました。しかし、幼帝は叔父を謀殺します」


 まじかよ。恐ろしい世の中だ。誰かに嵌められたのか。俺が九歳の時は母親と一緒に本読んでたぞ! そんな少年を嵌めて権力の座を奪うなんて、許せん!


「幼帝はそこから帝国領内の改革を行いました。叔父を殺害し、権力を握ってから三年、今は十二歳になりましたが、この三年で反対派はことごとく粛清され、幼帝に意見できる人間は少なくなりました。そして、改革は大成功を収めます」

「まてまて。幼帝は誰かに操られているんじゃ?」


 俺の言葉にメトクラスは首を横に振る。……そんなことがありえるのか? 年端も行かない子供が叔父から権力を奪い、改革する。うーん、これは転生者の臭いがしますね……。恐ろしい子っ!


「幼帝は廃止されていた枢密院すうみついんを再度設置し、各所から生まれに関係なく専門化を集めたのです。絶対的な権力と、優秀な人材。今、帝国は着実に国内の諸問題を解決しつつあります」

「帝国の諸問題?」

「はっ。広大な領地ですので、隅々まで統治が行き届きませんでした。帝国宮殿より遠ければ遠いほど、腐敗と反乱が横行していたのです。それを収めつつあります。腐敗した官僚は処断され、反乱者は吊るされています。さらには」

「もういい。わかったわかった。つまり、帝国は内政に力を入れてて、成功しつつあるってことだな?」

「そういうことです」


 耳が嬉しそうにピクピクと動いている。俺が状況を察知したことが嬉しいようだ。、ハゲまっしぐらのオッサンのケモミミが動いてるのを見て、なぜだか愛嬌が湧いてしまう。俺にとっては第二の父親みたいなもんだが、よく見ると老けてきたなぁ……。少しは労わってやらないとだ。


「それで帝国の使者が来るとなれば、まぁ邪険にはできないな」


 それにしても凄いな。幼帝、ね。どうやら能力は俺なんかとは比べ物にならないくらい高いらしい。それに叔父すら手に掛ける冷酷さ、俺にはできないな。てか、権力いらねーし。早く子供作って楽隠居したい。静かな場所にカワイイ奥さんとイチャイチャして歳をとりたい。誰か元帥やらねーかなー……。今ならタダであげるよ。


感想、評価、ブックマーク等ありがとうございます。泣き土下座で感謝しています。

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