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第四話 ダブルヒロイン、爆誕っ!

夜にも投稿できるかと思います。ローグ視点です。

 拝啓、お父様お母様。私は今、宮廷内に設置されている元帥府と言う所に居ます。実務はほとんど軍がやってくれますし、私の仕事といえば腱鞘炎を我慢しながらサインすることです。判ではダメだと言われました。非効率ですね。さて、私がこうして仕事に忙殺されている中、僅かな睡眠時間を削ってまでお手紙を差し出した理由ですが、ここ一ヶ月、お父様とお母様を見ていないからです。一体、どこにいるのでしょうか。果たして、この手紙は届くのでしょうか。息子としてとても心配しています。早く帰ってきてください。


 さて、呼び出し状はこんな感じでいいだろう。あいつら、戦争が始まった途端に姿を見せなくなった。妹も居ない。廷臣ていしんたちは何か隠してるようだけど、どこにいっちまったんですかね。


 あれ以降、王国軍の侵略は今のところは無い。魔王軍は慌てて兵士を徴兵し、防衛体制を整えている。王国軍の総戦力は八万くらいらしい。これから増える可能性もあるけど、王国軍単体なら問題ないそうで、今軍が慌てているのは人間側でもう一つ国境を接しているエイゼルハイン帝国の介入だそうだ。積極的な介入をしてこないでしょう。とはデフックの言葉である。果たして信じていいものだろうか。


「ローグ様、軍のお仕事は終わりましたでしょうか?」


 やけに物腰低く喋ってきたのは中年のおじさんだ。彼の名前はメトクラス。俺の小さいころからの傅役、つまりは教育係みたいな人だ。初めて会った時は頭の上に黒いふさふさの髪の毛があったんだが、今では随分と寂しく、二桁あるか無いかしか髪の毛が残っていない。だが、彼の特徴はそんな生半可なまはんかな物じゃない。何と言っても、彼は狼族の偉い人で、その頭にはモサモサとした大きな耳が生えているのだ。そう、ケモミミってやつだ。見た目は、お腹以外はやつれてしまった残念なおじさんだが、全てを蹴散らすケモミミという属性を持っている。反則クラスでキャラが濃いおじさんだ。


「おお、メトクラス。久しぶり。最近なにしてた?」

「あの、ずっとお側に居たのですが……」


 嘘だ。こんなキャラしてたらすぐに気が付くはずなのに!


「え、あぁ。そうだったな! うんうん。居たわそう言えば」


 この年のおじさんは心が弱いからな。労わらないと天然保護区域が枯れてしまう。ほら、一安心と思ったのか安心した表情を浮かべている。これも上司の務めだ。


「それで、何か用があったんじゃないの?」

「そうでした。実は陛下より、託された人物がおりまして……。その者がローグ様にお会いしたいと」


 あの父親のことだ。どうせ厄介な人物だろう。……でもここで会わないなんていったら、ケモミミの間に僅かに残った木々たちが消えてしまう。お世話になった人だ。仕方ない。


「分かった。通していいよ」

「そ、そうですか! では私は失礼しますね」


 あ、行っちゃうんだ。あのおじさんは凄い優秀な人だ。少し気が弱いだけで何でも知ってるし、仕事も速い。頼れる人だから居て欲しかったけど。


 それからしばらくして、中に入ってきたのは綺麗なお姉さまだった。この前、軍の作戦会議に居た人じゃないけど。俺より年上かな? ちょっと服装が露出度高くて目のやり場に困る。


「殿下、お初にお目にかかります。私の名前はテッフェ。旧人族の者です」

「旧人族!? 本当に居たのか!」

「はい」


 旧人族。この人たちの歴史はそれなりに記憶してる。何と言っても、たぶん日本人だから。古の時代に異界から召喚された悪魔の使い。魔使ましと彼らは呼ばれている。見た目は黒目黒髪で顔もほぼ日本人。悪魔の使いだから人類側から追いやられて、こっちについたらしい。彼女もショートカットの黒い髪の毛と、少し鋭い目。そ、それに……。


「ふふ。どうされました?」


 露出の高い服装のせいで、その……魔族にしては随分と豊満な胸部に視線を奪われる。パイオツソムリエなら、大きさが分かっただろうが……。たぶん、CかDだろうか。くそう! もっと勉強してればよかった!! ……ゴホン。俺が見てきた魔王領に住む人間の血を継いだ種族は皆ペッタンコなのだ。それでも彼女は……。


「殿下、お話しても?」

「あ、あぁ」


 クスクスと笑う姿は、年上のお姉さまにからかわれた感じがするが、はい。悪くないです。


「私たちは諜報を主にして殿下に協力させていただきたく思います」

「諜報? 情報を抜き取ったり?」

「はい。暗殺もできますよ」

「も、もしかしてだけどさ。その豊穣な渓谷にはやっぱり」


 俺のいやらしさ九割、好奇心一割の視線を感じ取ったのか、またも上品な笑みを浮かべてから頷いた。


「はい。手裏剣が入っていますよ」


 きた! パイオツ手裏剣! 俺も殺されるとしたらパイオツ手裏剣がいい! できれば痛くないパイオツ手裏剣! やっぱりこいつらの先祖は日本人だな。手裏剣なんて酔狂な武器を持たせるんだ。それなりにマニアックなやつが転移、あるいは転生したんだろう。俺が転生している以上、ほかに居ないとも限らないのだから。


「ねぇねぇ。歳はいくつ? 彼氏とか居るの? あ、もしかしてもう旦那さんいる感じ? そしたら殿下凄いショックなんだけど」

「歳は十七です。残念ですが、そういったご関係の殿方は居ないですね」


 あぁ、憂いの表情を浮かべながらも、頬を赤らめて上目使いしてくるこのエセくノ一! 年下男性のハートを掴む方法を熟知してやがる! クソ! 女性経験が皆無すぎてクリーンヒットしちまう……。いかん、俺は上司だ。でーんと構えてればいいのだ。


「そ、そうか。うんうん。そうだよね。え、十七!? 同い年じゃん!」

「はい。ですから殿下のお側つきとして私が選ばれました。何なりとお申し付けください」

「……何なりと?」


 俺はそう呟いてから生唾を二リットルくらい飲み干したんじゃないかと思うほどの音を立てた。まさにゴクリといった具合に。それを聞いてからテッフェは短い髪をかき上げ、妖艶な笑みを浮かべながらゆっくりと口を開いた。


「はい。何なりと」


 お姉さま、僕の体、諜報活動いかがっすか? 俺がそう言おうとしたタイミングで腹黒イケメンとして世界に名高いデフックが入ってきた。


「おや、テッフェ。お久しぶりですね」

「これはこれは。デフック様。お久しゅうございますね」

「あれ? 二人は知り合いなの?」

「はい。両親が知り合いですので」


 幼馴染? ねぇ、それって都市伝説で聞く架空の存在じゃないの?


「テッフェも立派になりましたね。草のほうはどうですか?」

「えぇ。順調ですよ。今日は殿下のお側つきを拝命したので、こうして挨拶を」


 テッフェの言葉に少し驚いてからデフックは嬉しそうに頷いた。おかしい、俺にはこんな綺麗な笑顔一切見せないのに。いつも黒い笑みを浮かべては、禍々しいオーラを漂わせているはずなのに。


「そうですか。では、これからは同僚ですね。よろしくお願いします」

「こちらこそ」


 テッフェも俺には見せなかった純粋な笑みをデフックには見せている。はいはい。イケメンの勝ちー。やってられるか。殿下プンスコだわ。


「ローグ様、至急お伝えしなければならないことが」

「……なに?」

「勇者たちが動き始めたそうです」


 ……きたか。俺たちの領土を脅かす悪魔共。人間は虐げることに関しては一流だと、この世界に来てはっきり分かった。欲を感じるのは魔王領に住む魔族も一緒だ。しかし、彼らは欲に溺れる。それに際限は無い。勇者の情報はまだ複数人が召喚されたことしか分かっていない。ならば、


「テッフェ、最初の任務だ。勇者らの詳しい情報を入手しろ」

「はっ。身命に変えましても」


 勇者たちには申し訳ないと思う。全く関係ない世界の争いに巻き込んでしまったことは。だが、敵として歯向かうなら、魔王軍元帥として容赦はしない。RPGのラスボスよろしく最強の敵として立ちはだかってやる!!


 ……いや、戦闘力は軍の最弱兵であるゴブリンにすら劣るけど。ほら、強大さ、と言うか一応ボスではあるわけで……。ごめんなさい、美人なお姉さまの前で調子乗りました。


ケモミミはいいですね。

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