プロローグ
初投稿です。プロローグはすごく短いです。
その日。
城の中は、静寂に包まれていた。一瞬の気の緩みも許されないような空気、その中心には1組の男女と白衣の人々がいた。苦しそうに痛みに耐える女性のお腹は大きく膨らんでいる。出産のようだ。しかし、そこは普通では無かった。正確には、周りの白衣の者達が、である。カラフルな髪の色に黒い肌。そして、頭から生えている銀色の角。明らかに人ではない彼らに囲まれ、純粋な人族である女性は、子供を産もうとしていた。
「う…ひぐっ……ぃ、あ゛あ゛…!!」
口から漏れる声は、痛々しく歪んでいる。その隣に寄り添う男性は、その女性の頭を優しく撫でながら、頑張れ、頑張れ、と声をかけている。女性のお腹に手をあてていた女性が、それを見て微笑んでから言った。
「もうすぐ、産まれます…!」
「準備!早くして!!」
「「「「はい!!!」」」」
そこにはもう静寂など無く、慌ただしく走り回る者達が、ガヤガヤと騒がしい。
その時、
夜の闇に覆われていた空が、眩しい光に包まれた。バッ、と皆が窓の外を見る。しかし、その光の正体を理解するより先に、産声が響いた。
「おんぎゃああああああああああああああああああああああああああ」
一瞬室内の空気が詰まる。フリーズしたかのように行動を、息をも止めた彼らは、すぐに意識を現実へと移行し、動き始める。そして、産まれた子供の母である女性が、子供を抱き上げ、そのまま窓の方に視線を向け、言った。
「流星群だわ……。世界が、祝福してる…!」
「っ!」
「「「「「「リュウセイグン…?……っ!!」」」」」」
息を呑む夫と、流星群、という単語を理解出来なかったが、もう一度窓の外を見て絶句する人々。空を埋め尽くすように光を放ちながら降り注ぐ星々。その光景は、御伽噺にあった描写と重なって、その瞬間を共にした世界中の人々を恐れさせ、魅了した。
「…世界の思ひ子……」
呟いたその言葉は、誰の言葉だったのか。若しかしたら、何人かが同時に発したのかもしれなかったのだが、そんなこと分かるはずもなかった。その言葉が、爆発的に広がり、その場を埋めつくして言ったのだから。
産まれた子の名は、フィユノリアーネ。
魔王と、聖女の娘であり、世界に愛された子…通称世界の思ひ子。そして、
「(…ぇ?わたし、赤ちゃんになってる……?)」
転生者であった。
ゆっくり更新していきます。
誤字修正しました。