▽ ネズミ捕り
鼠!正体は???この人だあああああ!!
下村は電話を切ると署より少し離れた駐車場に向い、
昼間なのにライトを点けている車の助席に乗り込む。
運転席には金城が待っていた。
「さて、行きましょうか。カリス。」
「OK。シートベルトしてくださいね。」
金城と下村は”鼠さん”がいるアジトへ向かう。
「先輩…。遅いな…。」
かれこれ30分は課長室の前にいる勘槻に疑問を持った課長は、
ドアを開け様子を見る。
― ガチャ…
「「あ…」」
様子を見るつもりで開けたのだったが、目が合ってしまい
気まずい空気が流れる。
「…ず、ずっとそんなところで、どうしたんだ?」
「あ、すみません。先輩出てくるの待ってるのですが…。」
「…??下村なら今日は会ってないぞ?」
「え…?」
勘槻は頭の中が大きなハテナが浮かんだ。
とある古びたビルの前、下村と金城は車を降りた。
入口手前で金城は携帯を取り出し、どこかに電話を掛ける。
「あ、もしもし?ついたから。ワン切りが合図だから。よろしく」
『OK』
受話器から微かに女性の声が聞こえた。
下村は金城の協力してくれている友人に会ったことが無い。
「そういえば、今回の協力してくれてる方に会ったことないけど…」
「あ…今度顔合わせの場所を設けますか??」
「そうだね…。本格的に仕事の依頼したいしね。」
「わかったわ。言っておく。」
下村はこれからの先のことを考え、会うことにした。
そうこうしている間に、アジトとの前まであっさり着いてしまった。
金城は携帯端末を操作し、合図を出す。
すると、扉の先から微かに男の叫び声が聞こえた。
その声を聴くと金城はニヤリと笑って
「ビンゴね。」
とだけ言って、足蹴りで扉を蹴破る。
扉の先のカーテンは開いてなく、電気もついていないため暗く、
床には本やゴミが散らばっていた。
中には小学校の教科書まであった。
扉を開けたことによって男の声ははっきりと聞こえてきた。
「くっそ!まただ!!こないだのは復元できたのに!!
今回のはできねえじゃねぇか!!誰の仕業だよ!!あぁ!もう!!」
金城の友人が今回仕込んだのは、相手のパソコンのデータを全てコピーし、
元データを削除し、復元でいないようなウイルスを仕込んだのであった。
男は激しく興奮していて、周りの物を床に叩きつけた。
下村は金城に待機を命じると、男の背後に回った。
「そんなに暗いところで目を悪くしないのですか?」
「うわぁああ!!」
悔しそうに取り乱している男に下村は、前触れもなく話しかけた。
すると男は、もの凄い大きな声で驚き、下村の方に体を向けそのまま壁まで
凄い速さで下がっていく。
「お、おま、おぉおおおまぁあああ!!!」
「…………」
まるで幽霊を見ているかのような驚き方で、下村は思わず笑ってしまった。
男は動揺しすぎているのか、自分を叩き始めた。
「そ、そうだ!!これは夢!!夢だ俺!ここに人が来るはずがない!!ない!!」
「夢ではないので止めたほうがいいですよ。」
「……だ、誰だ。」
下村は、自分を叩いている男の手を掴み止めさせた。
夢ではないと理解した男は、呼吸を整え下村を睨みつける。
「初めまして。鼠さん…私はセレネ。あなたにお話があって
乗り込ませていただきました。」
「…鼠?俺はそんな名前じゃないが、お前達か!俺のデータ全消ししてくれやがって!」
「これは失礼しました。隅田 飽汰 というのが本名でしたね。」
「っ!?」
「データはご安心下さい。コチラにコピーさせていただいたものが残ってるので。」
下村は人が変わったかのような雰囲気で話し始めた。
鼠 ― 『隅田 飽汰』
隅田は教えてもいない自分の名前を言われたことに一瞬驚いたが、
データのコピーの話をすると納得したかのような顔をしていた。
隅田は脱げたフードを被り、伸びた足を折り曲げ、体育座りの体制になり話を続けた。
「…。俺は、色んな情報を盗み見ては情報を売っていた…だから…。」
「…。」
「…だから殺しに来たのか。」
隅田が自分のしてきた罪の重さを理解していたことを聞いた下村は、
しゃがみ込む。
「貴方は自分のしてきた罪が分かっているのですね。
なら貴方は殺さない。それに最初に言いましたよね、話があると。」
「なら…?」
「今の世の中、犯罪を犯した癖に罪の重さを分かっていない連中はごまんといる。
貴方がそういう人なら…殺してたでしょうね。」
下村は周りに散らばっているゴミを片付け始める。
すると隅田は下村が持っているゴミを奪いとり、睨みつけた。
「さ、触るな…。話があるならさっさと終わらせてくれ…俺は人が嫌いなんだ。
できれば関わるのだって…。」
「失礼しました。では単刀直入に…私の計画に協力しなさい。隅田飽汰。」
「!?何で俺が…。」
「貴方のその能力が必要なのです。それに…」
下村はポケットに入っていた端末を取り出し、隅田に見せつける。
「貴方に拒否権があると思ってるのてるの?」
「っ!」
隅田は静かに俯いた。
「怖がらないで下さい。私はできれば貴方と友人になりたいんで…」
「友人?…脅迫しといて何を言ってんだよ…」
「脅迫なんてとんでもない。これはお返ししようと思って取り出しただけ。
脅迫するならこっちを取り出すよ?」
下村は隅田に端末を投げ渡すと、自分の胸ポケットの入っている警察手帳を取り出し
隅田に見せる。
「はっ。警察かよ…。いいよ。その話聞いても。
捕まるの嫌だし。アンタ怖いし。」
「え!?私怖いの!?そうかな~??」
「面白い奴…。」
隅田は立ち上がり被っていたフードを脱ぎ、怯えた目で下村の目を見る。
「それはOKと受け取っていいんだよね?」
「拒否権ないくせに。」
何故か少しだけ、隅田の心が開いた気がした。
バーキンスとあかねちゃんのやりとり可愛い…ヅンヅン~!!w