▽ 真実。
新事実発覚…??
星が光り、欠けた月が輝く夜空の下、とある飲食店で
眠る女性を起こす男性の姿があった。
「…村!下村!!起きろ、下村!」
食事に来てすぐ寝てしまった下村を課長は、
何度も揺すり起こしていた。
すると、下村は目を微かに開けて、
「…トマトはもう頼んでるのでセールスは結構です~…」
「??お前の家にはトマトのセールスが来るのか…?しかも頼んでんるのか。
ったく…」
寝ぼけた下村はまた目を閉じ寝始める。
課長はそんな下村を揺すりつつ、ポケットから携帯を取り出し、
どこかに電話を掛け始めた。
― 『プルルル…』
『はい。勘槻です。』
「あ、勘槻か?突然すまないな。俺だ。」
『課長!お疲れ様です。どうしました?』
「実は今下村と飲み屋に来てるんだが、初っ端から下村が寝てしまってな。」
『迎えですね?すぐ向かいます。』
「すまないな。場所は…」
電話先は勘槻だった。
家にいた勘槻は飲み屋の場所を聞くと、急いで準備をし、車を走らせた。
「ったく、後輩に迷惑ばっかかけるなよ…詩暮。」
課長は揺するのを一旦止め、テーブルにおいてある部屋番号の書かれた札を持ち、
そっと音を立てないように部屋を出て、店員を呼び止め会計をお願いした。
「あ、申し訳ございません。お勘定でしたら私共がそちらにお伺いいたしますので…」
「あぁ、連れが寝てしまってね。できれば起こしたくないんだ。」
「そうでしたか…。では、少々お待ち下さい。」
店員はクレジットカードを託されると、急いで会計を済ませに向かう。
しばらくして店員が戻ってくると、その後ろから勘槻が顔を覗かせた。
「課長!お待たせいたしました!」
「業務時間外なのに悪いな。下村ならこっちにいる。」
課長は店員からカードを受け取ると、勘槻を引き連れさっきの個室に戻る。
部屋の戸を開けると、下村はさっきと変わらない様子で気持ちよさそうに寝息を立てている。
「はぁ…。何故この状況で先輩は、呑気に寝ていられるのでしょうか…」
「まぁ、今日はコイツも久々の能力開放で疲れたんだろう。」
「先輩~。帰りますよ~。」
勘槻は下村を起こそうと揺らし、軽く肩を叩く。
すると、また下村は微かに目を開き笑みを浮かべた。
「あれ、勘槻ちゃん~?私服だね~。」
「先輩!ほら、帰りますよ!!」
「下村、お前の家の鍵はパスワードだろ。起きて自分で家に入れ。」
勘槻と課長は下村を後部座席に乗せ、勘槻は運転席、課長は助席に乗り込む。
車を走らせ暫くすると、後部座席から寝息が聞こえてきた。
「…あいつはどんだけ寝るんだよ…。」
「先輩の睡眠欲は底知れないですからね…。」
勘槻は先に課長の自宅に向かう。
「課長。以前から気になっていたことをお聞きしても?」
「ああ。どうした?」
「先輩には…伝えたんですか?」
「…何をだ?」
勘槻はバックミラーで下村が起きてないか確認し、話を続けた。
「課長が先輩、 下村詩暮 の実の父親だってことです。」
「……いいや。伝えてない。」
勘槻の質問に課長は顔色一つ変えずに答えた。
「…そうですか。ありがとうございます。」
「…お前から伝えるのか?コイツに…。」
課長は後ろを振り返り、勘槻に問う。
「…いいえ。私は個人的なところまで関わることはしません。
後々が面倒ですから。」
「お前らしいな。」
これ以降、勘槻と課長は言葉を交わす事無く
沈黙が続き、課長の自宅前に到着した。
「すまんな。後は頼んだ。」
申し訳なさそうにそう言うと、車を降りていった。
勘槻は扉がしまったのを確認すると軽く頭を下げ、
下村の自宅に向けて車を走らせた。
― 朝
下村が目を覚ますと自宅のベットで寝ていた。
「……ん、あれ??確か昨日は……」
下村は自分がどうやって帰ったのか覚えてなかったが、
テーブルの上にあった朝食を見て理解した。
“先輩へ。
飲みに行くのは自由ですが、起こしたら起きてくださいね。
追伸。勝手ながら朝食を用意しました。カップ麺ばっかは体に悪いですよ。
勘槻あかね。”
下村は朝食の近くにあった紙を見て、深々とお辞儀をした。
すると体を起こし、そのまま背伸びをし、大きな深呼吸をすると
「さーてと。仕事行きますか~!」
下村は出勤準備を始めた。
「勘槻ちゃん!!おはようー!はい!」
「先輩!おはようございます。え?このドーナッツ!いいんですか??」
「昨日はごめんね?朝食まで…!お詫びとお礼を兼ねて!!もらって!」
「ありがとうございます~!もう、ちゃんとしてくださいよ~!
朝食は台所にカップ麺が大量に置いてあったので…つい。」
署に着くと下村は先に出勤していた勘槻の席に駆け寄り、
先日のお詫びと朝食のお礼を兼ねて、
勘槻の好きなドーナツ屋のドーナッツを差し出す。
すると勘槻は満面の笑みで受け取った。
「昼休憩にでも食べて!あ、私は課長のところに行ってくるから。」
「はい!ありがとうございます!」
下村はそう言って課長の元へ向かう。
その途中だった。
― プルルル…
下村の携帯が鳴り出した。
着信画面には『金城李桜*』の文字。
下村は方向を変え、人気のない所に入り電話に出る。
「もしもし。どうしました?」
『例の”鼠さん”のアジト、見つけたんだけど。どうしようか?セレネ。』
金城の言葉を聞いた下村は、髪を掻き上げニヤリと笑い
「”ネズミ捕り”に行きましょうか。」
とだけ言って電話を切った。
まだまだ皆様には隠していることが沢山!!
下村は味方?敵?
別名で呼ばれている理由とは?その目的とは??
今後のお楽しみに!!