ただのゴミ箱の憂鬱
《貴方はゴミ箱に転生しました。貴方の、不潔は嫌だ、という要望はある意味叶えられています》
『すんません寧ろ不潔ですよね。ゴミが集まる場所ですよね!ゴミ箱って!』
俺がやけクソになるのを誰が責められよう。
とにかく、説明を聞いた上で、分かったことをまとめる。
・俺はゴミ箱
・基本的には自分で動けない
・この世界では冒険者、というモンスター狩りを生業とする職業がある
・この部屋は所謂クエスト受注所であり、今は誰もいない
さっき見た男は恐らく冒険者だろう。俺はちょうど机の隣のゴミ箱ポジションに位置しているので、丁度扉から出入りする冒険者の足が見える位置にいるのだ。
《まぁゴミ箱に変わりはないですが、これはこれで面白いステータスですよ。ステータスは見たい、と思えば出てきますから見てみて下さい》
ゴミ箱(転生)Lv1
・HP(体力) 22
・MP(魔力) 14
・DF(防御) 126
保有スキル
・神の視点B
・収納B
・念力D
・自己再生D
ユニークスキル
・強制廃棄B
とりあえず気になるのは収納、念力、あとユニークスキルの強制廃棄だな。
《収納はその名の通り貴方の体の中に物を保管できます。Bランクならば大体、25メートルプール20コ分の体積のものが入ります。重さに制限はありません。これはスキルというよりもゴミ箱に備わった機能に近いですね。》
なるほど、ゴミ箱自体の機能を受け継いだ訳だ。
《念力は物を動かせます。これも元々はゴミ箱に備わった機能です。ほら、ゴミを投げてキレイに入ると気持ちいいでしょう?ですがなかなかうまくいきません。なのでゴミ箱側の念力で軌道修正して快適なスローインを提供している訳です。Dランクなのでかなり弱めですね。精々半径30センチの範囲内の物を若干動かす程度です。》
スゴイことなのに動機がくだらないな。
《強制廃棄、これは収納で溜め込んだゴミを、ごみ処理場にワープさせます。一度ワープさせたものは基本的に戻せません。これはゴミ箱固有の能力なので、ユニークスキル扱いなのでしょう。》
『ちなみに自己再生はどんな感じなんだ?』
《多少の壊れなら1日で魔力を消費し再生します。一応、粉々になっても再生はしますが、その場合復活までに1ヶ月は要しますね。》
一通りスキルについては分かった。
で、だ。
俺はどうすればいいのだろう。
自分で動けないので、じっとしてるしかない。
喋れないので、意思を伝えられない。
そもそも人がこない。
暇...だった。
2時間たってお助けシステムとの会話のネタもつきてきた。
《貴方が強くなるには、何よりも物が必要です。誰かがあなたにゴミを捨てるのを待ちましょう。捨てられたものが役に立つかもしれません。》
『人が来ないのはどうしてなんだ。』
《どうやら外で騒ぎがあったようです。冒険者たちが皆そこに集まっているので、クエスト受注者がそもそもいないのでしょう。》
タイミングが悪いなぁ。だが、俺も馬鹿じゃない。時間を無駄にしないように、せっかくなので念力の練習をしてみた。
丁度俺の後ろに糸くずが見える。こいつを動かしてゴミ箱(俺)に入れるのだ。
そこからは集中力との勝負だった。
動くことには動くのだが、調節ができない。
そして上に持ち上げるのが難しいのだ。
必死こいて糸くずをゴミ箱(俺な)に入れたのはさらに2時間後のことだった。
歓喜の舞を心の中で踊っていると、部屋の明かりが消える。
《時刻は貴方の世界での午後9時にあたります。もうギルドも終了したようです。貴方も寝てはいかがですか?》
かくして、俺のゴミ箱生活1日目は糸くずをゴミ箱に入れて終わった。




