転生したらゴミ箱だった件
ゴミ箱、は生活必需品ではないが、無いなら無いで微妙に不便なものだと思う。いや、やっぱり無くてはならないものだね。だって困るもの。主に俺が。
何故俺がそんなにゴミ箱の存在意義にこだわるか。簡単である。
俺がゴミ箱だからだ。
緑を基調とした、スリムでスタイリッシュでアンティーク調のゴミ箱、それが俺。
俺は元々ゲーム好きのただの高校生だった。でもゲームをやり過ぎて17歳で既にゲームに飽きていた。
飽きていてもやはり手がゲームに伸びる。10時間程ぶっ続けでやっていた頃だろうか。もともと運動もしなければ、食事もロクにとらない俺の生活習慣は最悪だった。急な心臓発作を起こし、ポックリ。
なんとも悲しい。死因はゲームのし過ぎ、として処理されるのかね。
そして死んだ俺が目を覚ましたのは、真っ白な空間。
ほぅ、これはテンプレだな。大方、異世界転生の儀式をここで執り行うのだろう。
とか考えていると、でた、天使的な人。
《あ、どうも天使です。ソステクラ、といいます。新人です。どうぞよろしくお願いします。》
はい、どうも
《既にご理解なさっているようですが、ここは死後の世界です。貴方は今、魂のみの存在となっています。それでですね、貴方は別の世界に転生が可能です。生前はそういったものに興味をお持ちのようだったので、説明は要らないと思いますが》
まぁ、興味はあったな(主にゲームで)。実際に経験するとは思いもよらなかったが。
《転生する世界は人間族と獣族、その他様々な種族が共存する世界です。貴方の住んでいた世界より、科学技術的な面は劣るでしょうが、普通に生活を楽しんでいただけるかと》
《それで、転生する種族なんですが、これが大変混み合ってましてね。人間にはもう空きがございません。》
3月下旬の引越し業者みたいだな。
《それで、希望の種族とか、あります?》
無いね。人間じゃ面白みが無いから寧ろ好都合だ。ただ、不潔な感じの種族は嫌だな。ゴブリンとか、ちょっと勘弁。
《では、不潔でなければなんでもいいと?》
あ、最初から最強な種族とか、ナシな。やっぱりプレイし甲斐のある、ちょっとハードな感じで頼む。
《うーん、清潔で、hardな種族ですか。》
なんでそこだけ発音いいんだよ。
《あ、あります。これで良いでしょう。では、転生開始っ!》
おい!ちょっと待て、確認をすべきだろ、そこ!ホウ・レン・ソウはこんなシーンでも大事なんだぞ!
俺の必死の抗議も、時既に遅し。目の前が真っ白になり、俺は異世界へと転生された、らしい。
で、気がつくと。
真っ暗だった。
正確にいえば、目がない。瞼の存在が感じられない。
『なんだ?どうなってんだ、俺』
声が出ない。何も聞こえない。体も動かない。というか、感覚がおかしい。手足の感覚が無く、熱い、冷たいといった刺激も感じない。
『おーい、誰かいないのか、返事してくれ』
《ハイ、ご要件はなんでしょうか》
うぉっ、でた、なんかでた。耳元で無機質な音が鳴ってる感覚。いや、耳の感覚も無いけど、イメージな。
『あの、どちら様で?』
《ハイ、私は貴方のサポートを任された、所謂お助けシステムです。》
『そんなこと、アイツから聞いてないぞ?』
《実は、あのアホが貴方に説明もせずに転生を実行したので、セキュリティが作動し、私が出てきた次第です。申し訳ありませんが、再度転生、というのは不可能でして》
アホて...あのアホ天使、システムにすらバカにされてるぞ。大丈夫なんだろうか。
《それだけではありません。貴方は今、かなり特殊な状態でして...》
『なんだ?特殊って?』
《...ご自分で確認された方がはやいですね。今、基礎的な感知機能をつけます。それと、お詫びと言ってはなんですが、貴方が欲しいスキルを3つまで差し上げられます。おいおい、その能力については説明しますが、今は感知機能が先決でしょう。今回は無料で。これもコチラからのお詫びです》
【・視覚 通常の視覚機能を得る】
【・聴覚 通常の聴覚機能を得る】
【・感覚 通常の感覚機能を得る】
ぶぁっと視界が開けた。同時に音も聞こえた、あと地べたの感覚。
最初にみたのは人の足だった。重厚な造りの鎧のようなものを身に纏った男が目の前を通り過ぎていく。ぶっちゃけ男かどうかは分からない。精々腰辺りまでしか視界に入らないからだ。
『あー悪い。やってもらってなんだけど、さっぱり状況分かんないんですけど。』
《では、差しあげる予定だったスキルを一つ使って別の視覚スキルを取得しましょう。大丈夫です。どのみち貴方の体では必須スキルですので、早急に決めても後で後悔はしないでしょう。》
よく分からん。だがそこまで言うなら、やってもらおう。
【・神の視点B→自身から半径3mの範囲で視点を動かせる】
うおっ、こりゃスゴイ。視点が動く。グロテスクな表現だが、首だけが自由に動かせるようなイメージだ。
これにより、自分が、どこかの部屋にいることが判明した。
本でいっぱいの棚が両脇の壁にある。隣には書類のようなものが山積みの机があった。
そして自分自身を見てみた。
『あの、僕の真下にあるこれが、僕本体なんですよね。』
《そのとおりです。》
『あの、これ、ゴミ箱ですよね』
《ゴミ箱ですねぇ。》
『あの、僕はゴミ箱なんですか?』
《ゴミ箱です☆》
あのクソ天使が!!!!




