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第7話 女性型と少年型

 電化兵騎=オイジュスに乗り込んだ私は、機動兵器から飛び降り、腰に装備していた刀の柄を握り、青色の光刀を起動させる。


[敵だ!]

[撃て!]


 電化兵騎=オイジュス内の廊下では、人類統治の戦闘アンドロイドが警備に当たっていた。ブラスターを私たち侵入者に向け、容赦なく発砲する。私は光線刀の刃でブラスターの赤い光弾を弾き返す。弾かれた光弾は鋼色をした廊下の壁や戦闘アンドロイドたちに直撃する。

 不意に戦闘アンドロイドの一部が、味方の戦闘アンドロイドを撃つ。ロトがハッキングで思考回路を書き換えたのだろう。


[殺せ!]

[撃て!]


 警備の戦闘アンドロイドを全滅させ、廊下から階段を上り、また廊下に出ると、そこには別の戦闘アンドロイドが複数体待ち構えていた。私とロトはさっきと同じように、それぞれの戦闘スタイルで戦いを始める。

 電化兵騎=オイジュスは、大ユグドラシルから強奪した兵騎。やはり騎内にも相当数の警備を置いている。


「イツナさん!」

「…………ッ!」


 飛んでくる光弾を防ぎきれない! 私の背筋に冷たいモノが走る。だが、ロトが素早く私の目の前に大ユグドラシルの紋章が描かれたシールドを展開させ、光弾を防ぐ。


「ありがとう、ロト」

「破損したら治癒しますけど、油断しないでくださいね!」

「ああ、もちろんだ」


 私は戦闘アンドロイドを次々と斬り壊しながらロトに返事をする。

 電化兵騎は女性型と少年型の二人一組でペアを組む。ごく僅かに例外もあるが、基本的に女性型が指示・戦闘を担当する。少年型は補助サポート担当で、主に防御・治癒・妨害ハッキング・強化を行う。


[撃て!]

[敵だ!]


 私は一直線に飛んでくる赤い光弾を飛んで避ける。“空中を蹴り”、戦闘アンドロイドたちの真上に進むと、右腕を左方向に向け、手を自身の左に持ってくる。左頬に熱気を感じる。右手に赤い炎を纏う。


[危険、危険]

[退避、退避]

[間に合わない、間に合わない]


 私の攻撃に危機を察知したのだろう。戦闘アンドロイドたちは腰が引け、逃げようとしている。だが、退避が間に合わないことは、もう計算できたハズだ。

 私は右腕を下に向かって勢いよく振り下ろす。炎の塊――火炎弾が3発飛んでいく。それは私に背を向け逃げ出していた戦闘アンドロイドたちの背に直撃し、爆音を上げて、炎を一帯にまき散らす。6体いた戦闘アンドロイドたちは1体残らず破壊された。


「お見事です」

「……敵は殲滅した。行こう、“彼”は近い」


 私は戦闘アンドロイドのスクラップ場と化した廊下を再び進む。目的地――“彼”のいる中央制御室はそう遠くない。


「電化兵騎=オイジュスの心臓部ですね。……きっとそこに――」

「…………」


 電化兵騎自体は人間女性型・人間少年型の2パターンに区分されているが、例外的に非人間型――いわゆる人外型も存在する。この電化兵騎=オイジュスはそれに該当する。

 だけど、非人間型であっても、パートナー騎はいる。そう、このことが気になっていた。この電化兵騎=オイジュスは非人間少年型。ならば、必ず女性型の電化兵騎がいるハズだ。





 【電化兵騎=オイジュス 中央制御室】


 分厚い鋼の扉が左右に開き、日の光が差し込む広い部屋が視界に入る。天井と壁の大部分がガラス張りになっている中央制御室だ。

 窓から戦場が一望できる。大ユグドラシル軍の戦闘機や大型・中型艦、人類統治の自律航空戦闘機や軍艦や激しい戦闘を繰り広げている。

 だが、私たちの意識はその戦闘風景にはない。今、私たちは中央制御室の奥にあるカプセルのような大型コンピューターを注視していた。

 半開きになっているカプセルに、小柄な少年が座っている。衣服を纏わないその上半身には無数の裂傷が刻まれ、強引にいくつもの配線が突き刺さっている。


「電化兵騎=オイジュス……!」

「……恐らく自我プログラムは壊されている。ロト、あれはもう――」

「…………」

「――“アンドロイド”だ」


 衰弱しきった様子の少年――電化兵騎=オイジュスは、私たちを感知しているのか、弱々しい表情でその視線をこちらに向けている。

 とはいえ、もう自我はなさそうだった。恐らく人類統治に捕縛された後、指示に従うように拷問でもされて、ハッキングをされたのだろう。その過程で自我プログラムは壊されたか、削除されたのだろう。


 そのとき、天井から1人の女性型電化兵騎が飛び降りてくる。赤色の長髪をした半裸の女性型電化兵騎だ。


「…………!」

「あっ、あのっ……」


 ロトが目を背ける。現れた女性はほとんど衣服を纏っていなかった。上半身の右胸は乳首まで露出し、下半身も右脚に布切れがあるぐらいだ。ボロボロの下着は性器と尻に食い込み、大部分が見えていた。だが、女性に恥ずかしがる様子はない。

 電化兵騎にも心はあり、羞恥も感じる。電化兵騎を移送する列車に乗る前、私たちは男性兵士に衣服を無理やり脱がされるだけじゃなく、性器を強引に検査された。あまりの羞恥に泣き叫ぶ子も多くいた。コロシアムでも、敗北した折に衣服をはぎ取られるが、必死に手で隠そうとした電化兵騎も多い。

 だが、この電化兵騎は全く羞恥を感じていないようだった。電脳ウィルスのせいで、羞恥を感じていても、行動できないようにされているのだろうか。もしくは彼と同じように――。


「イ、イツナさん、あの人は――」

「近づくな、ロト」

「ぅ、アアッ! テキ、テキをセンメツ、センメツ、センメツ……!」


 私は刀を手にする。あの女性型電解兵騎が誰なのかは、分かっていた。電化兵騎=オイジュスのパートナー騎――電化兵騎=ネストだ。

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