表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖狐の異世界転生旅  作者: ポポ
第1章 死そして転生
7/50

再会

今回も短いな……

騎士団の本部はとても大きな建物だ。

敷地内には訓練所と思われる場所が何個も見つかり、そこで、お揃いの防具を装備した沢山の人達が訓練している。


騎士団本部に近づくと騎士団本部の門番をしている騎士に話し掛けられた。


「おい!そこの馬に乗った小僧!ここが騎士団本部だと知ってここにきたのか?迷子とかなら下にある支部に行くんだな!」


高圧的な騎士に俺は、


「いえいえ、今日はアレイドさんに会いに来たんですよ。シャイトとフィルが来たって言えば通じると思うんで伝えてもらえますか?」


怯むことなく返した。


騎士は訝しげな視線を俺達に向けたあと、「聞くだけ聞いて見てやる」と言って中に引っ込んで行く。


数分がたつと中から先程の騎士が青い顔でやって来て、深々と謝罪を述べてから、アレイドさんのところに案内してくれた。

ちなみに、馬は騎士団の馬を置いている場所に一旦置かせてもらっている。


案内された場所は、貴族の執務室のような部屋。素人の俺でもわかるような高級な扉が目の前にある。


コンコン


「連れてまいりました」


案内してくれた騎士がノックをして声をかけると、中から「入ってくれ」と帰って来たので、扉を開け、中に入る。


中は15じ程の広い空間が広がっており、奥には社長とかがよく使うような机。その脇には煌びやかな、威厳のある西洋甲冑。3人がけのソファが向かい合うように2つ。その間に全てガラスと思われる半透明の楕円形の机。が置いてあった。


「おお、よく来たな。まずは座ってくれ」


アレイドさんは俺達にソファに座るように促して、自分も対面に置いてあるソファに座った。


「王都は初めてだったよな。歓迎する。ようこそ王都へ!……む……顔色が良くないが、どうかしたのか?」


「いや、そのですね……実はーー」


俺がここに来た経緯を全て話し終えると、今度はアレイドさんが顔色を悪くする番だった。


「フェイトとシャリルが死んだ?嘘だろ?いや、子供を守る為ならば親は何でもするか……いや、しかし……あいつらが負けるような相手がまだいたのか?」


アレイドさんの独り言と思われる言葉が俺の耳に届き、俺の知っているまだ完全ではない情報を渡す。


「アレイドさん。確証が持てないので先程は言いませんでしたが、僕達の家を襲ったのはギノスという魔族だと思われます」


「ギノス!?あの魔王幹部が封印から解かれたというのか!?」


「いや、あくまで僕の予想ですから」


「そ、そうだよな……すまん、いきなり大声なんて出してしまって」


「いいですよ、気にしてませんから。それでギノスと判断した理由ですが、容姿がミルファさんに聞いたのと物凄く似ていたからです。具体的には、背中に蝙蝠のような羽を広げて、額からは天に向けて捻じ曲がっている角が二本。肌は浅黒く、爪は30センチ以上あり、真っ黒に輝いている奴です」


「確かにギノスだな……しかし、誰かが封印を解かなければ出ることは出来ないはず……誰がギノスの封印を解除したのかが問題だな」


「最後にそいつは『簡単に終わらない。終わらせない』って言ってました」


「簡単には終わらない。終わらせない、か……わかった……その件はこちらで何とか情報を集めるとしよう。それより、シャイト君は大丈夫なのかい?」


俺の話を聞いて思い出してしまったのか、隣で俯いて、目元を拭っているフィルを見ながら心配そうな表情で問いかけてくる。


「大丈夫……とまではいきませんが、前を向かないとどうにもならないことだってあります。それに、フィルを守るって母さんと約束しましたから」


「そうか……強い子だな。それより、これからどうするつもりなんだ?今からこのことを伝えに王城に行くが、一緒に来るか?」


俺が答えるよりも先にフィルが頷いたので、「よろしくお願いします」と言ってから一緒に王城に行くことになった。


さすが、騎士団団長というべきか、元勇者パーティーだというべきか、王城には顔パスで通してもらい、国王レイモンドさんの執務室に向かう。

今の時間帯は大抵執務室にいるとのことだ。


執務室の前にいたメイドさんにアレイドさんがミルファさんを呼んで来てもらうように頼んでから中に入る。


中に入ると、俺達3人が来るのを知っていたかのようにソファの上で紅茶を飲みながらレイモンドさんが待っていた。


「相変わらずだな……何度見ても気持ち悪い」


「気持ち悪いとは心外な……ん?シャイト君とフィリルちゃんかな?」


レイモンドさんに名前を呼ばれたので、2人して頭を下げる。


「そういえば、王都は初めてだったな。ようこそ王都へ。存分に楽しむといいよ。あれ?お父さんとお母さんがいないような気がするんだが…2人だけで来たのかい?」


「はい。実ーー」


「いや、言わなくていいよ。出来ればミルファがいる時がいいからちょっと待ってくれ」


ミルファさんが来る間にソファです紅茶を飲みながら寛ぎ、


「お待たせしました。あれ?待たせてしまいましたか?」


「いや、それより大事な話があるからそこに座ってくれ」


アレイドさんの真剣な表情を見て、ミルファさんは何も言わずに言われたところに座る。


「実……」


「言わなくて大丈夫だ。私から説明する」


アレイドさんが俺の言葉を遮るように口を開いた。

多分、気を使ってくれたんだと思う。

いい人だ。なんで結婚できないんだろ……


そんな場違いなことを考えているとアレイドさんがレイモンドさんに全て話し終えた。


「…………」


「…………」


その話が衝撃的すぎだったのか、2人ともとても生きている人間の顔色をしていない。

特にミルファさんは同じ女同士で仲が良かった母さんを失って目元に涙を浮かべて、泣きだしてしまった。


「……………シャイト君。今度、お墓参りに行ってもいいかな」


「もちろんですよ。拒否する理由も見当たりませんし、母さんと父さんも喜ぶと思いますから」


その後いろいろ話し合った結果、俺とフィルはミルファさんの家でお世話になることになった。

お世話になるといってもミルファさんは研究所にこもりっぱなしのことが多いいので、ミルファさんといる時間は少ない。


今後、ミルファさんの家に泊まることになったのだが、今日は王城に泊まるといい。とレイモンドさんが言ってくれたので、お言葉に甘えて今日は王城に泊まることになった。


夕食と風呂を済ませ客室に戻り、今日は寝る。

さすが王城というべきかとてもふかふかなベットで、身体が半分以上も沈む。


ベットに寝転がりながら決意する。


これ以上大切な人を殺させない。俺が生きている限り殺させない。

もう、これからは自重なしでいく。

前世の記憶を使ってしまえば最強に近づくことは出来るだろう。そして、その力はこの世界の常識を覆すだろう。それを危惧して今まで自重して来たが、これからは自重なしだ。

全力で、世界最強でなくとも大切な人をどんな害悪からでも守れるほどの力をつける。

そう、決意しながら目を閉じる。





私は泣いてばかりだ。

お母さんとお父さんが死んでしまってから泣いてばかりだ。

シャイトは強い。心も身体も強い。いつも私が泣いていると慰めてくれる。

私の前では一切泣かない。私と同じ年なのに一切泣かない。


やっぱり、本当のお父さんとお母さんじゃないから?


いいや、違うだろう。本当はとても悲しいはずだ。そんな気がする。

いつも見ていてわかるのだ。無理している気がするのだ。いくら心も身体が強くても、お父さんとお母さんを亡くしてしまったら悲しいのだ。

しかし、泣かない……


シャイトのように私もしっかりしなくちゃ。と考えていても、思い出すと涙が出てしまう。


シャイトは私が泣くから、私が悲しむからそれを支えようと頑張るから泣かないのか…?

そうだとしたら私は何がなんでも泣くのをやめなければならない。

シャイトの支えにならなければならない。この世に残った唯一の家族なのだから。


その決意を胸に王城の客室に戻るとシャイトはベットに横たわりながらとても険しい顔で何か考え事をしているようだった。

私は声をかけることが出来ずにシャイトの横に寝る。


灯はない。


そのまま時だけが過ぎていき、シャイトに私が固めた決意を聞いてもらうように話しかけるが、既に寝息を立てて寝てしまっていた。


今から起こすのも悪いし、明日の朝に話す事を決めて自分も寝る。


(明日はちゃんと言えますようにっ)


そう、願いながら……





翌日、目を覚まし、身体を起こすとフィルがバッと起き上がり、何かを決意した表情をつくりながら俺と向き合う。


「ん?どったの?」


「あのね、私、もう泣かないっ!シャイトがいつも辛い顔してるの知ってるのっ!自分も辛いのにいつも私のことを気に掛けてくれて……だから今度は私がシャイトのこと支える。シャイトが支えてくれたから私は、私は…」


正直びっくりした。10歳なのにこんな決意までしてしまって……俺みたいに精神年齢と肉体年齢が違う訳でもないのに。

フィルの肩を抱き寄せ、


「ありがとう。本当にありがとう。少し、背負ってるものが軽くなったよ。ありがとう」


「背負ってるもの?何も背負ってなくない?」


「あー、気にしないでくれ」


くぅ〜………


腹の虫がなった。

どちらが鳴らしたのかわからないが、2人向き合いながら笑った。


切り替えてこう。


そう思いながらフィルと一緒に食堂に向かう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ