5話ですねぇ……
一人称がいいのか三人称がいいのかわからない……
けど、今書いてる23話は三人称だ。
10話以降は三人称です!
この世界に転生してから10年という歳月がたち、昨日で10歳を迎えた。
昨日は誕生日で、10歳の誕生日パーティーをしてもらった。
しかし、ミルファさん以外の人の都合が合わず、5人でお祝いした。
母さんと父さんからは剣身が黒く、つや消しされた刃渡り60センチのショートソードを。ミルファさんからはスローイングナイフを5本もらった。
フィルはというと、母さんと父さんからは女の子らしく水色のドレスを。ミルファさんからは女の子用の可愛らしいこちらも水色の靴をもらっていた。
なんで俺のプレゼントだけ物騒なのかというと、事前に頼んでおいたからだ。
そして今日は1人で狩に出ようとして、父さんと母さんに止められた。
なんでだ?何時もは1人で行かせてくれるのに……?
疑問を持ちながらも、言われるがままに席に着く。
俺とフィルが席について父さんが全員いるのを確かめた後、重苦しい雰囲気で話し始める。
母さんの雰囲気も重い。
「今日は大事な話がある」
父さんはそこで一旦話を切って、落ち着いてから再度口を開く。
「実は………実はな、シャイトは拾った子なんだ」
別に驚きはしない。多分ここで一番驚いているのはフィルだろう。
今まで兄妹のように接して来た相手が赤の他人だと言われたのだから。
しかし、すぐにいつもの顔に戻る。
「だからなんだっていうの?僕はここまで育ててくれたのは父さんと母さんだから感謝してる」
予想していた反応と全く違かったのだろう。
この反応に一番驚いたのは父さんと母さんだった。
「それとも、僕が父さんと母さんの子供じゃないとわかったら家出するとでも思ったの?」
「い、いや、そういうわけではないが……」
「じゃあ、いいじゃん。フィルは僕が本当の双子じゃないってわかったらよそよそしくなっちゃう?」
「ならないよ。今まで一緒に過ごして来たんだもん。なるわけないじゃん」
フィルは大人だ。精神年齢を問いたくなってくる。
特に問題もなく話は終わったので狩に出ようとしたが、予想以上に話が長引いたのか太陽が沈み、黄昏時となっていた。
さらに、森の中なので一層暗く感じる。
「暗くなっちゃったな。剣の訓練でもするか」
父さんを庭に連れて来て剣の訓練を始める。
稽古と言わないのは、既に剣を扱う技術が父さんと並んでいるからだ。
なぜ、人の輪郭しか見えないような時間にやるのかというと、人間の気配だけで対応する術を身につける為だ。
もちろん、殺し屋をやっていた時はどんなに真っ暗だったとしても戦闘は可能だったが、そんなことを何年もやっていなかったのだから鈍るのは当然だ。
最終的には殺し屋時代と同じようなことが出来るまでにはなりたい。
ちなみに、この訓練を始めたのはつい最近だ。
完全に日の光がなくなり、満天の星が輝き始めた頃がこの訓練の本番だ。場所を変える。
森の奥。星光も余り届かぬ場所。
今日は新月。今にも消えそうな星光の下で、二本の真剣がぶつかり合い、火花が辺りを一瞬だけ照らす。
数度火花が散り、止む。
よくみると背の小さい、少年と言っても差し支えない子が持っている剣の先端がもう一人の男の胸に突き立てられ少しだけ血が流れている。
男の方も負けてはおらず、男が持っている剣の刃が少年の首にあてがえられている。
「引き分け…か。強くなったな」
不意に男が口を開き、親が子に向ける愛のこもった目を少年に向けた。
「勝てなくちゃ意味がない。もっと強くなるよ」
少年は男に子が親に向ける笑顔を向けて“2つの星を睨んでから”その場を去る。
だが、その場にいたのは二人だけではなかった。
いや、二人と1匹と言った方がいい。
その場を去る二人の背中を星の光に紛れて光る双眸が見つめていた。
父さんと二人で並んで帰ってくると、既に夕食が用意されていたので、汗をかいていることも忘れて貪る。
腹を満たしたところで、シャワーを浴び、フィルと一緒に寝床につく。
夜中に目が覚めた。今の時刻はわからない。この世界に時計というものが存在することはわかっているが、その精密さ故に高級品なのだ。
しかし、今日は新月。月の位置で時間を推測することも出来ない。というか今日か明日かすらわからない。
何かが警告する。俺の感が警告する。
ここから逃げろ。さもなければ“死ぬ”と。
感だが、信用するに値する。殺し屋をしている時に何度この感に助かったことか…
俺は隣に寝ているフィルを起こす。
「おい、フィル。起きてくれ」
「ん……どうしたの?」
「なんか変な感じがする。さっさと父さんと母さんを起こして逃げるぞ」
「え…?いきなりそんなこと言われても……」
「とにかく。早く来て」
フィルの手を取り、素早くショートソードとバタフライナイフを手に持ち、投げナイフを無造作にポケットへと突っ込んでからワンドをネックレス状にしてから部屋を飛び出す。
父さんと母さんの寝室を叩き声を掛ける。
「嫌な感じがする!早く逃げよう!」
直ぐに父さんが出て来てくれた。
「何を言ってるんだ?真夜中なんだから寝なーー」
父さんの声を遮るように家の扉が蹴破られる音が家の中に響き渡る。
「誰かが入って来た!?シャリル!俺の剣を取ってくれ!」
俺の言葉を信じていなかったフィルもさすがに扉が蹴破られれば信じたようで、一気に顔を青ざめる。
奥から母さんが出て来たと思ったら、勇者パーティー時代のフル装備で出て来た。
「あなた。魔王主義者の魔族の生き残りよ」
「生き残り!?全滅させたはずじゃ!?」
「生き残ってたみたいね」
「チッ!」
父さんが盛大に舌打ちをすると母さんから剣を奪い取るようにして音がした一階の扉に向かって走り出した。
「フィル、シャイト。あなた達は一旦この場を離れるのよ。それとシャイト。今のあなたは魔法を使えばお父さんよりも強い。フィルを守るのよ」
母さんは俺とフィルの頬を撫でると父さんの後を追いかけて行ってしまった。
「シャイト、逃げよう」
以外にもそう言い出したのはフィルだった。
「母さんと父さんなら大丈夫。だって魔王を倒した勇者と魔法師なんだよ?」
だが、それは何年も前のことだ。
今はどうかわからない。が、このままでは全員死ぬと俺の感が告げている。
まだ二人が死んだとは思わないが俺の感が外れたことは今までに一度もなかった。
この時だけは感が外れてくれているように祈った。
神様なんて信じていないのに祈った。
しかし、この場に留まるのも得策ではない。
俺はフィルの手をもう一度強く握り締めて、音がした方とは逆の窓から飛び降りる。
ここは二階。高さは4メートル弱あるが同じ年の少女を背負って飛ぶくらいなんの問題もない。
特に問題なく着地して戦闘音がする方へ近づき戦闘が見えたところで茂みに身を隠し、二人分の気配を完全に消す。
父さんと母さんが戦っている相手は、背中に蝙蝠のような羽を広げて、額からは天に向けて捻じ曲がっている角が二本。肌は浅黒く、爪は30センチ以上あり、真っ黒に輝いている。
神話や物語で出てくる“悪魔”と呼ぶに相応しい姿だ。
父さんの攻撃は全て防がれるか避けられ、母さんの魔法は余り効いていないようだ。
容姿や戦い方などをみているとミルファさんの言葉を思い出した。
『フェイトの攻撃もシャリルの魔法もあんまり効かなくてめっちゃくちゃ苦戦した魔王幹部が一体いたのよねぇ』
『そいつの名前は?』
『ギノスよ』
『どうやって倒したの?』
『私が作った封印結界の魔導具で封印してやったわ!絶対に誰も近づけないようにもしてやったわ!』
推測にしか過ぎないが、多分この魔族はミルファさんが言っていた魔族だろう。
しかし、封印したと言っていたはずだが、封印はどうなったのだろうか?
今考えてもしかたない。
父さんが一瞬だけ体制を崩した。
しかし、本当の戦いはこの一瞬が命取りとなる。
魔族が父さんを蹴り飛ばし、母さんに一瞬で近づき……首に手刀を入れる。
咄嗟に張った防御結界のおかげで致命傷を免れたが、気絶してしまう。
その後は一方的だった。
母さんのサポートがなくなった為に魔族の攻撃が全て父さんに向かう。
2対1でも押され気味だったのに1対1になってしまったのだから、さらに厳しくなる。
俺がサポートしようにも、動きまくっているので近くに行かなければサポート出来ないし、フィルを1人ここに置いていくのも危ない。
ここから攻撃するのは絶対ダメだ。
自分の居場所を教えるようなものだからだ。
このままでは負けてしまう。
そう思った俺はフィルに何が何でもここから動かないように告げて、木に登る。
フィルの気配はあそこから動かない限り悟られない。少しでも動いたら悟られてしまうが…しょうがないだろう。
木に登った俺は戦いの場を軸とし、回るように木から木へと飛び移り、魔族の隙を探る。
魔族が父さんが仕掛けて置いた罠に足を取られて転びそうになったが直ぐに体制を立て直す。
しかし、それでも一瞬の隙が出来るのは仕方ないだろう。
父さんは魔族が罠にかかる前に吹き飛ばされて場外していたのでそこの隙をつけなかったが、俺はずっとこの隙を狙っていたのだ。
こんな好機を見逃すわけがない。
俺はポケットに無造作に突っ込んであったスローイングナイフを5本全てとり出して
魔族の両肩、両足の付け根、喉元に向かって投擲する。
魔族は避けようとするも、避けきれずに右肩の腱と左目が負傷した。
心の中でガッツポーズを取りながら、木から木へと飛び移る足を止めずに隙を伺う。
父さんは吹き飛ばされて後頭部を木の幹に勢いよく打ち付けたせいでかなり重症で動けなさそうだ。
多分、今直ぐ手当をしなければよくて後遺症、悪くて死だ。
時間がないな…
俺はショートソードを腰から引き抜き、魔族に肉薄する。
ショートソードを右から袈裟懸けに一太刀。
さすがの魔族も右手が動かないので避けようとするがこちらの剣速の方が避ける速度よりも上だった。
胸を切り裂かれた魔族は呻き声をもらし、魔法を行使する。
魔族の左腕に炎が纏わりつき、その左腕で殴りかかってくるが、ギリギリ攻撃が当たらないところで躱し、すり抜けざまに左腕の腱も削ぐ。
その時だ。フィルが動いてしまった。
魔族は直ぐにフィルの気配を見つけ、一番弱いことを確認した後フィルに向かって疾走する。
俺は直ぐに魔族の後を追いかけたが、子供の足では追いつかない。
魔族はフィルの姿を見つけると同時に魔法を行使する。
炎で出来た矢がフィルに迫る。
炎の矢がフィルに突き刺さろうとした時、フィルを押し飛ばして母さんが炎の矢の餌食となった。
「お母さん!」
「フィル、元気でね」
そう言って、追いついた俺とフィルの頭を撫でて目を閉じた。
死んだ……この目で人の死はそれこそ数えきれないほど見てきたし、殺してきた。
けど、大切な人が死んだことは一度もなかった。しかも目の前で…
この心に穴が残ったような感覚は……これが喪失感というものだろうか……
しかし、涙などは何故か出てこない。
フィルは俺の隣で思いっきり泣いているというのに…
「………死んだ。これはしょうがない。いつか人は死ぬ。だが、今じゃなかっただろう。今でなくても良かったはずだっ!」
俺の中にドス黒い感情が漏れ出てくる。
喜び、悲しみ、怒り、諦め、驚き、嫌悪、恐怖。そのどれでもない感情が漏れ出てきてしまう。
いくら自分で抑えようにも抑えられない。
こんなに感情を制御出来なかったのは初めてだ。
そのドス黒い感情は殺せと言っている。
その魔族を無残に、惨たらしく殺せと言っている。
今もなおこの魔族が生きていることがおかしいのだ。
殺さなくてはならない。
復讐というやつか?違うのか?
そんなのどうでもいい。この魔族を殺せばいいだけなのだから。
俺は直ぐ近くに置いてある自分のショートソードを手に持ち、自分でも驚くほどの速度で魔族に肉薄する。
まずは、両足の腱を削ぐ。
立てなくなった魔族は仰向けになって倒れた。
腕も脚も動かせない。
両腕両脚の腱を削がれた痛みで魔法も発動できない。
ただ、死を待つだけの存在。
だが、そう簡単に死なせてやらない。
簡単に死なせてはならないと感情が告げている。
「地獄よりも辛い拷問を味合わせてやる」
物凄く低い、とても10歳の少年が言い放っている言葉だとは誰も思わないだろう。
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