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妖狐の異世界転生旅  作者: ポポ
第3章 エフィロス王国
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エフィロス王国の戦争 5

遅れました!

昨日出すの忘れてしまいました。すみません。

 戦略的撤退を行なったシャイトとクイは、一時、人が三人ほど隠れられそうな大岩に身を隠していた。

 大岩の表面が弾け飛ぶ音が断続的に響き、止む気配はなさそうだ。


「敵の人数は一小隊十二人の三個分隊で、兵装は軽装鎧に兜は無し、銃の種類はボルトアクション式のライフルで命中精度からライフリング加工はされてないと思われます」


「確実にこの世界の文明力では生み出されるはずのない、未来の兵器だな」


 この世界の文明力は一番進んでいる国でも火縄銃やマスケット銃がせいぜいだろうし、ましてや、兵に持たすことの出来る程量産性があるとは思えない。

 思えないと言ったところで、目の前に証拠があるので認めるしかないのだが。


「シャイト様と同じような転生者、もしくは転移者と言うことでしょうか」


「多分な。大方、そいつが帝国に技術提供でもしたのだろう」


 そう言いながら、懐から拳銃を抜く。

 この距離で拳銃は少々心許ないが、相手がアサルトライフルのような小銃でなければ話は変わってくる。


 近接戦闘で倒してしまえばいいのだ。通常、射撃手に近づくまでが大変なライフルだが、敵は50メートル以内におり、ライフリングも付いていない命中率クソのライフルだ。恐るるに足らない。

 拳銃で牽制射撃でもしながら近づけば、楽勝だろう。


 拳銃の弾倉を確認してから装填する。


 さらには、敵のど真ん中に潜り込んでしまえば、誤射を恐れて、大半のものが射撃を中止し、銃剣に移行する。と、予測できる。


 右手”羽張”を、左手にこの世界に来てからの愛用拳銃を握りしめ、出て行く隙を窺う。


 銃剣に移行してくれれば、こちら側の一方的な虐殺の幕開けとなるだろう。


「凡兵どもを何人連れてこようと、俺を殺すことは叶わんよ」


 シャイトはそう言って、岩陰から躍り出た。

 途端にシャイトに向かって放たれる弾丸は、全てが何故か・・・外れる。

 恐怖を覚えるような奇妙な光景だ。


 微妙に横にずれて走り、兵士たちからはまっすぐ向かって来ているように見せると、こういう現象が起こる。

 人の目の錯覚だ。ただし、これが効くのは正面にいる兵だけなので、半円状に包囲されている現状では、横から撃たれる弾丸は全て速さに物を言わせて回避している。


「くっ……!!撃て撃て撃ちまくれっ!このまま接近されたら全滅だぞ!!」


 この小隊の隊長らしき人物が声を張り上げるが、銃声で近くに展開していない兵士には届いていないようで、あまり必死さが伺えない。

 

「おい、隊長がなんか言ってるぞ」


「かなり必死で叫んでるようだな。もしかしたらこの状況ヤバいんじゃないか?」


 弾が一発も当たってない時点でかなりヤバいです。そう言いたい衝動に駆られたクイだったが、抑え込む。


「まあ、大丈夫だろ。なんせ俺たちは一個騎士団に勝ったことがあるんだからな」


 他の兵士が口を挟む。

 それを聞いていたシャイトは、戦場だというのにこの緊張感の無さの理由がわかった気がした。

 大方、この十二人で騎士団とやりあって、一人の犠牲者も出さずに勝利をもぎ取ったのだろう。それでは驕っても不思議ではない。


 しかし、この驕りが彼らの命取りとなった。

 もし、ここで辺りを警戒しながら、驕らずにいたのならば……もしかしたら死ななかっただろう攻撃を、自分の油断のせいでモロに受けてしまったのだ。


 上空に影が差し、突如として彼らの命は奪われる寸前まで・・・・

 それは、ここに限った話ではなく、隊長のいる正面も彼らの反対側に展開していたところにも影が差していた。

 唯一例外なのが、標的であった男と、その連れの女の場所だった。


「おいおい、もうちょっと手加減したらどうなんだ?」


「いいんですよ。シャイト様に逆らった奴らは苦しんで死ねばいいんです」


 シャイトたちの周りでは、悲鳴をあげるものや、うめき声をあげる様々な人間だったもの・・・・・・・が転がっていた。

 


    彼らは、異形の怪物に成り下がっていた。



 皮膚は爛れるか、剥ぎ取られるような形になっており、腕の位置も足の位置も普通の人間のそれとは全く異なるものとかしている。

 ピンク色の肉が見えるし、もう人間の形すら保っていない怪物だ。

 

「優しい優しいクイちゃんはこいつらの願いを叶えただけですよ。あら?お仕置きになってない?」


「まだ普通に殺された方が良かったな」


「なんか言いました?」


「いや、何も」


 クイは特殊能力を持っている。

 これは生まれつきのもので、”人の心が読める”というものだ。

 しかし、このチートみたいな能力も万能ではなく、ただ単に心を読むことはできない。

 相手が心の底から思っていることしかわからないのだ。例えば、お腹の空いている人間に使えば『クイテェ……クイテェ……ハラヘッタ』くらいしか聞こえないのだ。

 そして今回の場合は、『イキタイ』とでも聞こえたのだろう。

 余裕そうに見えた彼らも、生物の本能では格上の相手だとわかっていたのだろう。


 パチンッ


 フィンガースナップによる火の魔法で彼らの死体を焼く。


 一応、彼らの持っていた銃を調べてみたところ、火薬ではないことが判明した。

 比較的安価な鋼材を円錐状に加工し、その尻に炸裂系統の魔法を付与。

 そして、このコッキング式銃のような形のものに装填し、付与破壊の魔法がかかった撃鉄で弾の尻を叩くと、炸裂系魔法が反応し、小爆発を引き起こす。

 その反動で弾丸を飛ばしているようだった。


「しかし、この技術には少し興味があるな」


 今現在、シャイト一行の問題となっている弾薬の改善案となるかもしれないのだ。

 これは、エフィロスでのやることが終わったら帝国に行くことにしよう。


 シャイトは牽制射撃によって消耗した弾丸分を弾倉に補充しなら、辺りを見果たすと、先の銃声によって敵兵たちが集まってきているところだった。


「シャイト様、どうします?」


「どうするもこうするもないだろ。相手は完全にやる気だからな、乗らなくてどうする」


「ふふ、やっぱり面白いですね」


 クイは、上品に着物の袖で口元を隠してクスクス笑うが、そんな状況ではないだろう。ただし、『普通の人間であれば』という注意書きが付け足されるだろうが。

 集まり続けているが、今現在の集合数はざっと百数十人と言ったところ。

 騎兵は少ないが、その分重装歩兵が半分くらいを占めている。ちなみに、銃兵の姿は見受けられない。


「円陣包囲!重歩三・四列!繰り返す円陣包囲!重歩三・四列だ!」


 馬上の豪奢な鎧を着た指揮官らしき人物が叫ぶと、今まで隊列もクソもなかった陣形が作られて行く。

 

「相手は銃兵を破る奴らだ!油断は禁物だぞ!!」


 指揮官が叫ぶと、重装歩兵の奴らが自分の身長くらいありそうなタワーシールドと呼ばれる盾を地面に打ち付け、騎士甲冑の歩兵たちは槍と腰の剣を打ち付ける。

 地震のように揺れる地面と、腹に響くような地鳴りや金属音は相手にかなりの恐怖を与えることだろう。

 しかし、ここにいるのは普通の人間ではない。いや、人間ですらない。


「おお、この音好きかも」


 クイの場違いな発言は、騎士たちの発する大きな音によってかき消された。



⭐︎



 硝煙をあげ、遊底スライドが完全に後ろに下がっている拳銃を、静かに下ろす。

 葵が放った『獄風』と呼ばれた魔法はすでに消え去っており、あたりに砂塵が舞っている。


「ゲホッ……ゲホッ……オェゴホッ!ゴホッゴホッ!」


 まだ煙が晴れていないので、視覚は確保できていないが葵は頭部についた猫の耳で周囲の状況を探と、せき込む音が聞こえて来た。

 何か、異物が入っているような咳の音だ。


 その音を聞いた瞬間、葵の姿勢が戦闘する時のソレに変わる。

 着物の袖に隠していた投げナイフを素早く投擲するが、砂塵の中央では、カキンッという金属音が数回鳴り響くだけだった。


「これはとてもやばい」


 そう葵が呟くと同時に、葵に向けて何かが飛翔してくる。

 少し砂塵が晴れ、太陽の光が地面を照らし出す。そして、その陽光を受けて、飛翔して来た何かが光を反射する。


 銀色に輝き、持ち手が無いに等しいそれは、先程葵がキシェルに放った投げナイフだった。


「なんでっ!?」


 投げナイフを投げる衣擦れの音がしなかった、ということは、キシェルは投げていないことになる。

 では、なぜこちらにナイフが飛翔してきているのか。


「っ……!」


 腕を十字にして、コテの部分で受け止めようとするが、数本は脚や胴体に刺さってしまう。


「なんでだって?」


 キシェルは葵の反応を伺うようにいう。


「ただ跳ね返しただけさ。これを使ってね」


 そう言って、キシェルは握っていた愛剣を掲げた。

 その愛剣はところどころ刃が欠けていたいるが、絶対に折れないというのが伝わってくる。


 これは、非常事態だ。すぐにここを離脱してシャイトに救援を乞うとしよう。

 しかし、そうと決めたものの、相手がそう簡単に返してくれそうも無い。かなりお怒りの様子だしな。


「あの、虫のいい話なんですが、ちょっと逃げていいですか」


 葵の言葉に面食らって、一瞬固まるが、今は戦闘中では無いし、こちらは停戦を申し込んでいる側なのだ。攻撃するのは愚の骨頂だろう。

 まあ、あの一瞬でキシェルを殺すことができるのならば別だが。


「私の思い違いでなければ、あなたの体はかなり限界に近いはず。ここでの一時休戦はお互いいいのでは無いでしょうか」


「クフフ、あはははは、君面白いね」


 キシェルは突然腹を抱えて笑いだす。目尻に涙を浮かべているほどだ。

 ゴシゴシと袖で目尻を拭いたキシェルは、凛として答える。



「嫌だよ」



「確かに、私の体は限界に近い。いや、限界を超えてるかもしれない」


「キシェル様っ!!」


 部下の騎士たちがキシェルの体を気遣って戦い続行の考えを改めさせようとするが、キシェルは片手を上げてそれを制す。


「だがな、私の体がどうした。私の代わりなどいくらでもいる」


 いや、あなたのような人間が変えが効くようなものだとしたら、帝国は今頃世界制覇してますよ。と言いたい気持ちをぐっと抑えて、葵はキシェルの話を聞く。


「私は、スラム街に生まれスラムで育った。毎日貧困に喘ぎ、助けを求めるもその声は届かない。毎日死と隣り合わせの日々は辛いものだよ」


 そう言って、キシェルは愛剣をそっと地面に下ろした。


「親は私が三歳の時に刺殺された。貴族の娯楽でね」


 その時、激しい怒りのような感情が辺りに漂ったが、恨みのような類の感情はない。


「帝国の冬は厳しい。貴族でもたまに凍死者が出るくらいにね。まあ、そんな家がなくなった夜、私は師匠に会った」


 ここでいう師匠とは、キシェルに剣を教えた人物だろう。

 周りの騎士たちは、このことを知っているのか、驚きなどの感情は出ていない。皆一様に顔を暗くしている。

 ここで逃げれば確実に逃げられる。

 

 しかし、なぜか葵の体はこの話を聞いたほうがいいと言っている。



 キシェルの話は数十分にも渡り、その間、戦場とは思えないほどの静けさになっていた。


 葵はキシェルの話が終わったと同時に身構える。

 いくら相手が無防備な状態でも戦場で気をぬくのは命取りになる。


「で、何が言いたいの?」


「おや?効かなかったのかい?」


 やはり何か仕掛けていたようだ。キシェルが話し始めると同期に周りに漂う魔素が震え始めたから警戒していたのだが……まさか本当に仕掛けてくるとは思はなかった。


「何か変な感じがしたから、一応結界を張ってたのよ」


「それは、なんというかすごい感の持ち主だね。感も実力のうちだ」


 パチパチと手を叩いて賞賛してくるが、葵としてはちっとも嬉しくない。

 何も感情を表に出さない葵を見ると、キシェルはつまんなそうにして、子供のように口を尖らせる。


「はあ、つまんな……」


 キシェルがそう言いかけると同時に、葵が無防備なキシェルの体に弾丸を打ち込んだ。

 乾いた破裂するような音が響き渡り、キシェルの胸が赤色に染まっていく。


「ゴボッ……人のはな……ゲホッゲホッ……しは、最後まで聞くものだよ……ゴホッッ」


 キシェルは吐血しながらそう言い、地面に倒れこむ。

 時が止まったと勘違いするような時間が数秒流れ、周りにいた騎士たちが一斉に動き始めた。


 キシェルに、剣を突き刺すかたちで。


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