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妖狐の異世界転生旅  作者: ポポ
第3章 エフィロス王国
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エフィロス王国の戦争 1

エフィロス王国に来てから一週間が経過した。

 時間の経過とは早いもので、一週間なんてものすごく早い。エルフなどの長寿の種族はなおさらだ。


「おはよー」


 シャイトが起き抜けのマヌケ顔を晒しながら居間に入ってくる。

 今、シャイトたちは王宮から借り受けた一軒家で暮らしている。


「あ、おはようございます」


 そう言ってペコリとお辞儀をしたのはまたもや王宮から借り受けた侍女だ。この子の名前はクルシュ・メヂアム。エフィロス王国の上級貴族の息女だ。

 侍女として貴族社会に通用するスキルを身につけている途中らしい。


「他のみんなは?」


 居間のどこを見渡しても今いる二人以外に人の気配がしなかったためだ。


「ミリヤ様は学園に向かわれました。フィル様と深青様は街にお買い物へ、葵様はまだ寝ておられます」


 時計の針を見ると、短い針が10を指し、長い針が45を示していた。この頃たるんで来ているな……と思いながら、顔を洗う。

 この家屋はエフィロス王国のにある。先週行ったエルフだけの国はエフィロス王国のらしい。

 水道も引かれていないのに蛇口(のようなところ)から水が出てくるのは素直に感心する。


「朝ごはんはどうなさいますか?」


 クルシュが片手にタオルを持ち、顔を洗い終えたシャイトにタオルを渡しながら問いかける。


「白飯がいいかな」


 シャイトがそういうと、クルシュは引き攣った笑みを浮かべた。その様子をシャイトが不思議そうに眺めると、遠慮がちに声を出した。


「この国の白米ですと、国王陛下に投げつけた物と同じものになりますが、よろしいでしょうか」


 そこでシャイトは、あぁ、と呟き、一週間くらい前のことを思い出す。



 『腹減ったんだけど』


 『いくら師匠でも、流石に執務室ではちょっと……』


 『あぁ?』


 チンピラ風に言って見ると、国王陛下からすぐにokが出た。これが一国の王に対する態度なのかと他の人たちが恐々としていると、師匠は米が好きと知っていた国王は、側に控えていた侍女たちに指示を出す。

 すぐに運ばれて来たそれは、白い輝きを持っていた。


 一口シャイトが食べると、炊きたての白米が乗った皿を国王に投げたのだ!


『こんなまずい飯、食えるかぁぁぁあああ!!!!』


 そう叫びながら。




 回想から戻って来たシャイトは、


「じゃあ、パンで」


 そういうと、クルシュは”かしこまりました”と綺麗に頭を下げてからキッチンに向かった。




 朝食を食べ終えると、シャイトは転移陣がある部屋に向かった。

 転移陣はエフィロス王国に入った時のようなたいそうなものでは無い。ここにある転移陣はセキュリティを考慮してない作りのため、簡略化が成功し床に転移陣が書いてあるだけだ。

 万が一の時は常時待機している者が消すことになっている。消すと言っても床に彫られているだけなので、床を破壊するだけの簡単なお仕事だ。まあ、その場合破壊した者はセキュリティシステムが整った転移陣で帰れる。


「起動」


 シャイトがスキル”魔素直接操作”を使って空気中に存在する魔力の元を操作し、転移陣に直接送り込む。

 そして、起動の合図を送ると、陽炎が部屋全体から立ち込めるようにして発生し、おさまる。


 一見転移したように見えないが、一度経験してるからわかる。これで転移しているのだ。


 ガチャリという音がなるとともにシャイトが振り向くと、クルシュが室内に入って来た。

 

「ク……ラルシュか」


「今、言い間違えましたよね?」


「え、そうだっけ」


 そう、この子はクルシュではなくラルシュだ。一卵性の双子らしく、見た目も髪色も体型も全てが瓜二つだ。

 あえて、違うところを挙げるとすれば、性格だろう。ラルシュは活発な子で、クルシュはどちらかというと内気な方だ。

 クルシュは今こそ普通に会話ができているが、初対面の時なんて口を聞いてすらくれなかった。


「まあ、いいですけど。よく間違われるんでいいですけど。別に気にしてなんかいませんけど」


 そっぽを向き、口を尖らせながら言う。


「あ、そう」


「それで終わらせます!?普通、なんかこう、もっと、あるでしょう!?」


「あ、そう言う反応狙ってたの?これがツンデレってやつ?」


 ラルシュはこのままでは負けると判断したのか、居住まいを正してから、事務的な声音で告げた。


「コホン、国王陛下様が”王の執務室に13時に来るように”とのことです」


「奴に電話することは可能か?」


「は、はい、可能だす」


 シャイトの圧力が全身にのしかかり、変な語尾になってしまう。

 しかし、それも当然だろう。今のシャイトを葵に見せたらすぐに逃げるだろうことを簡単に予測できてしまうほどに起こっていたのだから。気絶しなかっただけマシだろう。気の弱いクルシュが今のラルシュの立場であったら、失禁していてもおかしくはなかった。


「可能ならお願いしてもいいか?」


「わかりました」


 今度は噛まずに言えたことに胸をなでおろしつつ、顔を引き締めた。

 



 シャイトは王宮と通信が繋がったことをラルシュに報告されると、テレビ電話に切り替えた。


「師匠」


 一見、威厳を持っている風に見えるが、内心はビクビクしている。


「クレイ、なぜ俺を呼び出した?」


 クレイとは、目の前に写っている国王の愛称だ。もっとも、その呼び方で呼んでいるのはシャイトの他にもう一人しかいないので、愛称と呼べるかどうかは曖昧なところだ。


「よ、呼び出す?私が?」


 その反応に少々戸惑う。この反応から見るに、目の前のクレイは何も知らないようだ。呼び出した張本人なのに。

 そう考えると、いたずらに思えて来るが、国王名義で悪戯するやつなどただの命知らずか馬鹿のどちらかだ。


 そこまで考えたところで、何か忘れているような気がする……あ、思い出した。


「何か分かったのですか?」


 敬語になっていることに気がついていないが、周りに臣下などいないので、注意することはなかった。

 それよりも、さすが一国の王言うべきなのか、シャイトの反応で何か察したようだった。


「この呼び出し、あいつの悪戯だろう」


「あ、ああ!くそ!またやられた!!」


 あいつと言う単語で分かってしまうとは、それに、”また”と言うことは何度もこの手の悪戯をされているのだろう。


「苦労してるんだな」


 悪戯だと気付き、怒る気も失せたシャイトは、続く言葉を待たずに電話を切った。


「よろしかったのですか?」


 横で電話の様子を見ていたラルシュが聞いて来る。


「いいよ、それからこれから留守にするから留守電に切り替えておいて」


「私がいるので、その必要はないと思いますが……」


 ラルシュが控えめにそう言うと。


「まだこの国の技術になれてないんだよね、お恥ずかしいことに。だからさ、案内してくれない?」


「喜んで!」


 ラルシュは電話を留守電設定にした後、急いでこの家の中にある自分の私室に向かった。

 さすがに街中をメイド服で繰り出すのは嫌だったのだろう。



⭐︎



 シャイトが目をこすりながら上体を起こすと、騒がしい鐘の音が耳に入って来る。

 いきなり何事かと、周囲を見渡すと、控えめにノックされた。


「うん?入っていいぞ」


「失礼します」


 そう言って入ってきたのは、顔色を青くしたクルシュだ。

 どうしたのかと問うと。


「帝国軍が……帝国軍がすぐそこまできていますっ!」


「ああ、だからこんな騒ぎなのか」


 寝室にある窓に向かい、カーテンを開けると、鎧を身につけた人たちが街中を駆け回っている。


「は、早く逃げましょうっ!」


 切羽詰まった口調でそう進言して来るが、シャイトはそれを意図的に無視し、寝室を出て行く。そのシャイトの顔はいつも以上に楽しそうで、少し安心できた。

家の廊下を歩き、リビングに出る。壁にかかっている時計を見ると午前8時37分を示していた。


「クルシュ、頼みがあるんだが聞いてもらえるか?」




「さて、俺の推測はこんなものなのだが、質問はあるか?」


 今は、リビングにクルシュ以外のこの家に住んでいるやつらが揃っていた。

 シャイトはこの一週間で集めた情報とそれを聞いた上での意見を述べていた。


「シャイトったら無理しちゃって、私たちがいるのも忘れないでよね」


「そうですよ。フィル様はともかく、私たちは主様の僕なんですから、何なりとお申し付けください」


 フィルと召喚した部下に文句を言われたが、それを視線で黙殺する。しかし、部下はそれで引っ込んでも、フィルは引かなかった。


「はぁ、じゃあ装備を整え次第またここに集合。警戒レベル最大。ああ、それとお前たち」


 シャイトはそう言って部下の一人を手招きし、刀を渡す。


「これは?」


 当然の疑問だ。武器はもうすでにシャイトから渡されているのだ。


「お前たちに渡したやつの改良版。身体能力強化の魔法がかかってるから戦いやすくなると思うよ」


 シャイトの部下たちは、いい笑顔を浮かべて部屋から出て行った。



⭐︎



 エフィロス王国王城内|(裏)は、いつもの落ち着きを持っていなかった。

 それも当然である。表に派遣していた者からの通達で、今さっき帝国軍が攻めてきたとの報告があったのだ。


「諜報局は何をしておったのだ!」


 金の髪と金のダンディなヒゲを持った二十歳くらいのエルフが言う。


「まったくだ。して、このようなことになってしまいましたが、どうなさりますか?」


 これまた若いエルフの青年が言う。


 ここは王城内にある会議室だ。急な呼び出しなのにもかかわらず集まっているのは二十数人、正面の所謂お誕生日席に座る国王は自分の国ながら、褒めたい気分になった。


「どうもこうもないだろう、まずは表に住んでいる民を地下シェルターに格納。そのあとは世界の技術力に見合った軍隊を出撃させる」


 そう、今国王が言ったように、手加減をするのだ。そうでないと、自国の圧勝になって、周辺諸国に技術提供しなければなくなる。

 もちろん、技術提供しない。と言い切ることもできるのだが、自国内生産のみで国を運営することは現状不可能だからだ。


「危なくなることはないと思うが、万一に備えて戦車5台配備させる。指揮は」


 そう言ったところで複数の手が上がる。


「じゃんけんで決めよ」


 とても適当な王様だった。


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