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妖狐の異世界転生旅  作者: ポポ
第3章 エフィロス王国
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エフィロス王国の 10

エフィロス王国はミリヤやレミルを見てもらえばわかるだろうが、エルフの国である。


 エルフとは人種と言っているようなもので、種族の名であり、エルフたち自らが人種との差別化を図るためにつけた名でもある。

なので、エルフたちは等しく自分たちの種族が頂点に立ちそのほかの種族はエルフに隷属されるのが当然と思っているのだ。


 エルフは魔力保有量が人種の平均よりも数倍から数十倍と言われ、身体能力も高く、目も良い。さらに、平均寿命が300歳と長いため、賢いものも多い。

このことから自分たちの種族が優れていると思っている。実際に優れているので、人種や獣人種は文句が言えない立場にある。


 しかし、そのエルフたちにも種族の弱点というものがある。

 長寿のためか、子孫を残すという生物の本能が少ないのだ。そのため、エルフ種は人種、獣人種と比べて数が異常に少ない。

 昔はそれぞれが集落というものを作って生活していたのだが、時代の流れによってそれを選択することは困難となったのだ。

そこで、シャイトたち一行の目の前にあるエルフの国だ。


 人口2300万、そのうちの90%程が65歳以上だ。

 人間で見れば超超超超超高齢社会であるが、エルフ種の成人は50から60歳と言われているので、エルフから見ればなんの問題もないだろう。


 この国の名は。



「ようこそ!我がエフィロス王国へ!」


「昔と何も変わらないな」


 ミリヤ、レミル、護衛の三人を除いたもので、声を出せたのはシャイトのみだった。

 それも当然だろう。


 今、目の前にあるのはとてもではないが、国と呼べる代物ではない。

 京都にある伏見稲荷大社のような鳥居がズラリと並んでいるのだ。


 鳥居の中は空間に影響を及ぼす術式が施されているのか、少しだけ歪んでいる。その歪みは鳥居が重なる毎に酷くなっているような気がする。あくまでも気がするだけだ。気のせいかもしれない。


「ここ?」


 ミリヤと敬語を使わない仲にまでなってるフィルが尋ねると、「そう、ここ」という端的な答えがミリヤから返ってくる。というか、そうとしか返せないというのもある。


「何もないように見えるけど?」


 レミルは鳥居を指して「あるよ」と一言だけ言う。

 深青が聞きたかったことはそうではないような気がするのだが……猿の脳みそと交換した方が頭の良くなりそうなレミルに期待するのも無理があるだろう。


「じゃあ、 あの丘の上から見えた街は何?」


「幻影だな」


 この葵の質問にはシャイトが端的に答えた。

 あの幻影は実際にある街を隠すために施されているものだ。

 エルフが集う国を自らの欲で近寄った者は、まず【異界の森】で野生の厳しい洗礼を受け、運良く生きてここにたどり着けても、これが国の入り口だとは思わないだろう。

 それに、どのような構造なのかはわからないが、この入り口を通るためには、王族又は、王族から許可をもらった者しか入る・・ことが出来なくなっている。

 出ることは誰でもできる。


「とりあえず私について来てください」


 ミリヤは元気よくそう言うと、意気揚々と鳥居を潜り始めた。

それに続いてレミル、護衛、シャイトが続き、シャイトの陰に隠れるようにして残り三人が続いた。


 馬車はいつのまにか消えていた。






 鳥居一つ潜る毎に外の景色が曖昧になっていき、最終的には曇りガラス並みになったと思ったら、そこは、エフィロス王国の中にある神社鳥居の前になっていた。

 後ろを振り返るも、先程の鬱蒼とした森は見えない。日本によくある神社の本殿があるだけだ。


 そして、視線を元に戻すとそこには、文明レベルの発達が著しい光景が広がっていた。ある意味ここも異世界である。

 その文明レベルはシャイトが転生する一個前、現代日本より一世紀ほど進んでいる。

 それを象徴するものは、自動運転のタクシーが走っていたり、ロボットが警察の役割をしていたり、空中に筒が浮かんでおり、その中を電車と思われるものが走っていたりと、様々だ。


 前来た時と明らかに文明レベルが数百年分進んでいる。

 これも長寿のエルフだからの文明進化速度なのだろう。


 シャイト一同が文明レベルに感心していると、ミリヤから声がかかる。


「私たちは王城に戻りますが、どうなさいますか?」


 その目からは、できれば王城に招いて助けてもらったお礼をしたいと伝わってくるのだが、シャイトとしては今あの国王に会う気分ではないのだ。

 この文明レベルで王城って……全く想像がつかない。


「宿を探すかな、そんな目をしないでくれ。どうせお前さんの親父に呼び出されると思うから。早ければ今日中、遅くても明日中にな」


「お父様とお知り合いで?」


「昔ちょっとな」


 事情を知らないミリヤは疑問符をいくつも浮かべるが、ハッと思い出したように手を叩いた。


「そういえば“俺はあの妖狐と旅をしたことがある”っていつも家族に自慢していました!」


 シャイトは思う。

 ――あのちっちゃかったエルフっ子が今では一国の王か、時代の流れは怖いものだ。


「親父に会ったら“男の娘ってなんですか?”とでも聞いてやれ。多分発狂するぞ」


「男の娘?」


 ミリヤはわからないようだが、他の人たちはわかったようだ。レミルなんかは“それは名案”とばかりに顔を輝かせている。


「お話は良いのですが、この服装では目立ってしまいます。着替えましょう」


 護衛の者がそう言ってアタッシュケースを二つほど両手に下げている。

 どこから出したのかわからないが、多分この文明レベルだから四次元ポケ○ト的な物が開発されているのだろう。

 それか、空間系を操る魔法のどちらかだ。


 シャイトはそれに賛成を示す。先程から通りすがるタクシーの中からの視線がちょっとだけ痛いのだ。

 どこで着替えるのかと尋ねると、神社内に設置されているお手洗い場を指差した。

 お手洗い場も見た目は近代的である。


 その後、護衛さんがアタッシュケースのうち一つを女性陣に渡し、護衛さんとシャイトの二人は男性用手洗い場の方へ向かった。




 着替え終えて、外で待っていると、やがて出てきた。

 シャイトたちが手洗い場から出てきて30分以上経過している。しかし、男二人は文句ひとつ言わずに女性陣を褒めた。


 ミリヤとレミルは自分たちが通っている学校の制服に、葵は大人っぽくスーツ、フィルは清潔感漂う青色のワンピース、深青はホットパンツに白のロゴ入りTシャツという露出過多の服装だった。

 皆とても可愛いのだが、可愛いのだが、葵、フィル、深青の三人だけはちょっと台無し感が出でいる。


 葵はスーツの下に自動拳銃が見え隠れし、フィルは動くたびにレッグホルスターに収納された戦闘用ナイフが少しだけ見え、深青に至っては右のレッグホルスターにナイフ、左のレッグホルスターに拳銃と、全く隠そうとしていない。

 ちょっとどころではなかったかもしれない。


「それでは行きましょうか」


 ミリヤがそう言い、皆を先導するように先を進み始める。

 そして、ユウトという名の護衛がそのすぐ後ろを歩き始める。

 先ほど、手洗い場の中で自己紹介されたのだ。

 この世界の人間ではない可能性が大いにあるのだが、そういう名前の民族がいた場合”この世界の人間ですか?”と聞くのはとても失礼になると思い、そういうたぐいの質問は避けた。



 やはり、エルフには美男美女が多い。

 シャイトの配下たち、葵、フィル、深青も負けず劣らず美しいのだが、人間の街のように一際目立ってしまうと言うことはないぐらい顔面偏差値が高かった。


 そんなことを考えていると、フィルに後頭部を引っ叩かれた。思考でも読んでいるのだろうか?


 どれだけ強く叩いたのかは知らないが、ヒリヒリと痛む後頭部を抑えていると、やがて一台のタクシーがやってくる

 卵を横にしたようなフォルムで色は統一して黒、中の様子は見えない。ここまではそこらを走っているタクシーと同じなのだが、大きさが段違いだ。


 一般的なタクシーは四人乗りくらいのと二人乗りくらいのが多いが、今目の前にあるのは確実に四人乗りの倍以上はあり、二階建てのように見える。


「このタクシー何人乗りだ?」


 シャイトがそう問うと、ミリヤが返す。


「タクシーという名前ではありませんよ。昔はタクシーと呼ばれていたのですが、今では“ビーボ”と呼ばれています。人数は十四人乗りですね、下に8人上に四人という形になります」


「ビーボ?」


 名前の付け方がわからず、葵がそう聞き返すと、すぐ横から返答があった。


「ビーボさんが作ったから“ビーボ”だよ」


 レミルはそう説明する。

 この世界でも人物の名前をそのまま起用するのは珍しくないようだ。



 その後、一行はビーボに乗り込み、王城に向かった。

 座席の場所で一悶着あったのだが、それはまた別の話。





王城にて


「陛下、ミリヤ王女殿下がご帰還なされました。こちらにすぐ向かうとのことですが、どうなさいますか?」


 この“どうなさいますか?”は護衛の者を向かわせるか否かを問うているものである。


「帝国には襲われたのか?」


 質問に質問で返すのは、先程声を出した男の前に座る男だ。

 その座っている男の前で、先程の男は跪いている。


「結界を越えるまで五体のキメラに襲われたようですが、馬を使い潰しただけで済んだようです」


「そうか、しかし、いくらレミルの奴を尽きていたとしても五体のキメラを倒すことなど不可能ではないか?」


「それが、助力者がいたようでして」


「助力者?」


 その単語を聞いた瞬間悪寒が走った為、再度問う。


「はい、シャイト・アーカイドとその仲間たちであるようですが、ただの冒険者ではなく三大英雄の『妖狐』の言っているようでして、嘘か真かわか――」


 そこまで話したところで、目の前に座っていた男は落ち着きをなくし、その場から逃げ出した。


「へ、陛下!?」


「後は頼んだぞーーーー!!!!」


 何を頼まれたのかわからなかった男である。しかし、一つだけ分かることを上げるのならば、諜報局の一諜報員である自分の手に負える案件ではないことだ。


 エルフの国に王都一つしか街がなくても、王都自体がとてもでかいので、逃げ隠れする場所はいくらでもある。と、国王陛下は思っている。

 しかし、現実はそんなに甘くないものだ。この王都は約一万一千㎢と、日本の秋田県と同じくらいの大きさを誇っているが、その中から人一人を見つけることができるのが”三大英雄”という馬鹿げた存在なのだ。





 電気自動車のようなガソリンエンジン特有の音を出さずに、静かに停車する。

 ビーボ(12人乗り用)という黒い卵型のタクシーは、立派で、巨大な建物の前に止まった。

 この建物は、地上35階地下20階の合計55階だてで、敷地面積はゆうに3万坪を超える。敷地内には、王族や王族付きの侍女などが住まう王城、この国の技術体系を作った研究所、有事の際にすぐ出動できるようにとの近衛兵の宿舎寮と訓練施設、後は武器庫などが入っている。ちなみに目の前の建物が王城で、外見は中世ヨーロッパ時代の城である。


「でかい……」


 フィルだけが先程から放心状態だ。

 それも当然だろう。フィルは正真正銘のアルシャファルの人で、シャイトのように転生もしてなければ、葵のようにどこからか転移してきたわけでもないのだ。

 その為、これだけの巨大建築物を見るのは初めてだったのだろう。ここも一応アルシャファルに属されるが、カウントしないとすると、アルシャファルで一番大きい建築物は、ルーレイド王国の王城で、地上6階地下2階の合計8階なのだ。

 それに比べ、目の前にあるのは地上35階。桁が違いすぎて驚くのも無理ないだろう。


「それでは行きましょうか」


 ミリヤがそう促して一行の先頭を歩く。

 王城内は外見と異なり、エントランスがあり、エレベーターがあり、エスカレーターがあり、5階あたりまで吹き抜けになっている。

 所々に青色の制服を着たエルフ達が敬礼するので、あの青い制服を着た連中が近衛兵と呼ばれる者たちなのだろう。

 武装は、前の世界で見た銃とはまた違うフォルムな為、よくはわからないが、自動小銃と同じような物だろうとあたりをつける。


 そして、ミリヤに促されるままに、白を基調とした近代的なフォルムのエレベーターに乗り込んだ。


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