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妖狐の異世界転生旅  作者: ポポ
第3章 エフィロス王国
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エフィロス王国 9

赤サイクロプス五体、緑サイクロプス二十五体。

赤色のサイクロプスは希少種と呼ばれるもので、大体が一個上のランク付けをされている。この|希少種(赤色)サイクロプスの場合は通常のサイクロプスがB級なので、A級に分類される。また、この希少種のサイクロプスが五体もおり、その五体が群れを率いているとなると、その群れのランクはS級指定される。


「S級指定ばかり……もうめっちゃ面倒なんだけど。A級程度だとばかり思ってたから狩に賛同したのに」


そう愚痴をこぼしながら葵の顔を見る。

すると、葵はそっぽを向きながら口笛を吹き始めた。


「それをゲームでちょっとでも楽しもうと思ったのに、気を抜くなとか……はぁ、次でかい街に行ったら遊ぼ」


遊ぶと言う言葉に過剰反応を示したのはフィルだった。


「私と言うものがありながら女遊びに走るの!?」


サディスティック気味に叫ぶフィル。


そんな感じで、S級指定されている魔物を相手にしているとは思えない気軽さでシャイトたちはサイクロプスの足止めを行なっていた。


なぜ、足止めなのかと言うと、派手にやれと言われたので、少しだけ時間稼ぎをするためだ。


フィルが手加減をしながらサイクロプスの群れを撹乱させ、動きにくくさせるために出血量が少ない肉の部分を削ぎ落とし、斬りつける。


葵は殺し屋時代のシャイトサトナスに教えてもらった投擲術を駆使して、投擲に特化したナイフを狙った場所に百発百中で当てていく。

例:肩、腰、膝、足の付け根、肘などの関節に加え、目、耳、鼻などの感覚器官。


シャイトは魔法構築に専念していた。


そして、時が流れ、大魔法の構築が終了する。



「第十位階魔法『ディレイトキャノン』、形状・ミスト


両手を前に掲げたシャイトの手のひらから、黒い霧状のものが正方向に勢いよく飛んでいく。

既に魔法の効果範囲外から出ていた葵とフィルだったが、安全を取って更に離れる。

あの霧に全身が触れれば楽だが、一部だけだと、地獄を見る羽目になるだろう。


一見かなり地味な部類に入るのだが、この黒い霧は透明化することも可能だ。なんてったって元はと言えば“暗黒物質”なのだから当然だろう。


そして、その霧が透明になると、どうなるかお分かりになるだろう。

――中で起こっている惨状があらわになる。


シャイトを中心に扇状に草木が溶け・・、それはやがて怒り狂ったサイクロプス達に襲いかかる。

先頭を走っていたB級のサイクロプスが突然呻き出すと、体の一部がドロドロと溶け始め、最後には粒子になって消える。助けを求めるかのように仲間に手を伸ばすが、仲間達はそれを……跳ね除けた。


そして、その手を跳ね除けたサイクロプスの手がいきなり消滅・・し、傷口から大量の血が流れ出るが、不可視化した黒い霧が更にそのサイクロプスの体を蝕む。

他ニ十三体のサイクロプス達は混乱に陥りかけるが、シャイトとしては面白くないことに、希少種が統率し始める。

希少種は総じて知的だ。

なので、この惨状をいち早く理解し、撤退を試みようとするが、ここまでしといて、そんな逃すような真似をしないのが狩人だ。


「妖術『配下召喚』『武器召喚』」


配下召喚は文字通りの結果を出す。

シャイトの周囲に狐耳と狐の尻尾を二、三本生やした麦芽のような美しさを出す美男美女の妖狐が現れ、シャイトにこうべを垂れる。その数、十人。


「これを使って奴らを殺せ」


そして、シャイトは『武器召喚』の効果で呼び出した“羽張”の下位互換版を一人一人の目の前に突き刺す。

下位互換とは言っても元が元の刀なので、威力は半端ない。空間を斬るとまではいかないが、ドラゴンの鱗を貫けるくらいの威力はあるだろう。


「「「「我が主の赴くままに」」」」


右手を胸に当て、下げていた頭を更に下げる。

その間にもサイクロプスの群れは逃げ出そうとしている。


そして、妖狐達は消えた・・・。刀と一緒に。

正確には認知度を超えた移動速度で移動したために見えなくなったのだが、人間からしたら消えたようにしか見えないだろう。


ボトリボトリとサイクロプスの首が落ちた。

B級とA級指定の二体だ。

B級指定の方は即死を確認したのだが、赤いA級指定の方はなまじ生命力があるせいか、首が落ちても痛みに苦しんでいる。

首だけになっても生きていると言うのは、正直、気持ち悪い光景だ。


そして、一瞬のうちに三体の両手足が転がる。



ここまで来たところで、サイクロプス達はどんな化け物に手を出してしまったのかがわかった。

しかし、気付くのが致命的に遅すぎた。


指揮官レベルの赤いサイクロプスがそれに気付いた頃には、既にB級指定のサイクロプスは地面に倒れ伏していた。


そして、風が吹く。


それと同時に、まだ生き残っているサイクロプスの小指が飛んだ・・・

しかも、指先から切り刻まれる様にしてだ。


その痛みに声を上げると、今度は口の中に刀をねじ込まれる。

痛みを無視して反撃しようとするが、シャイトから生み出された存在の為、そこいらの攻撃では話にならない。


戦闘に特化した独自の武術で妖狐達は、自身に伸ばされた腕をボキボキに折られ、砕いていく。

もう完全に為すすべがなくなってしまっている。


サイクロプスは群れを成して強力になる魔物なので、たしかにB級と強い部類に入るのだが、それはランク内では中の下に位置する。

その為、黒い霧が発生し、群れの行動が出来なくなってしまった時点でサイクロプス達の負けは確定していたのだ。


ボキボキに折られた腕が、宙を舞う。

そして、頭、胴体、両足だけになったサイクロプスが気力を尽くし、反撃に出ようとするが、気を伺っていた妖狐達に両足を根本から切断されて地面に倒れこむ。


胴体と頭だけ。もう、生物の定すら成していない。


妖狐達は地面に倒れ込み、なんとか生き残ろうと足掻いているサイクロプス四体の息の根を止めようと近寄る。

サイクロプス達は敵が近寄るのを感知したのか、体を芋虫の様に動かしてなんとか距離を取ろうとするが、移動できた距離は数メートルもない。


そして、無慈悲のやいばが首めがけて振り下ろされた。





丘の上でその殺戮劇を見たレミル、ミリヤ、深青は三者三様の感想を抱いていた。


「やべぇ、師匠やべぇ」


やばいやばいと口にするだけの機械となってしまったレミル。


「(これは何?夢?それとも悪夢?………それよりも、あの人を怒らせないように気をつけよう)」


そう心で呟き、顔を引き攣らせるミリヤ。


「体術にちょっと違和感があるかな、他はとってもいいのに勿体ない。あとで教えてあげよ」


ダメ出しをする深青。


ちなみに、ミリヤの護衛は表情にこそ出していないが、手足が微妙に震えていることから、恐怖を感じているに違いない。


そのなんとも言えない空間に、足音が響き始める。

それも、三、四人どころじゃない。


何事かと四人同時に振り返ると、黒髪黒目のシャイトと葵、フィル、配下召喚で召喚された見目麗しい妖狐達が帰還してくるところだった。


「お初にお目にかかります。フィル・アーカイドの兄、又は弟のシャイト・アーカイドと申します。以後お見知り置きを」


「これはどうもご丁寧にありがとうございます。エフィロス王国が第五王女、ミリヤ・フォン・アレイス・エフィロスど申します。気軽にミリヤとお呼びください。七剣人兼三大英雄のシャイトさん」


「耳が早いですね」


「それなりに」


そう言ってミリヤはチラリとレミルを流し見る。

その視線にシャイトは気付いたのだが、あえて向かないでおいた。その方が“あなたを重要視してますよ”というアピールをすることができるからだ。


「あ、あの」


その意思に気付いたミリヤは、少々照れながら言葉を濁しながら話を続けた。


「敬語はいいです」


少々拍子抜けした気分だ。

あの空気からの言葉となると、“助けてくれ”的なことを言われるのかと思ったのだが、全く違うことだった。


「わかった。それと、姫様たち三人はこれからどうするんだ?」


「どうするもこうするも、国に帰ろうと思ってます」


わかったの一言で王族に敬語を使わないのは至難の技だと思いながら、深青とフィルは会話を続けている二人を見た。


「エフィロス王国か?」


「はい、そうですよ」


「俺たちもエフィロスに向かうところだったから一緒に行くか?なんかレミルを連れてる時点でかなりヤバイんだろ?」


「お見通しって感じですね」


「そりゃな、七剣人を一国の姫さんの護衛に就かせてる時点でヤバすぎだろ」


「ははは、でもいいんですか?巻き込むことになってしまいますよ?」


「いいんだよ。俺たちは元々首を突っ込むためにエフィロスに行くんだからな」


「……?」


事情を知っている深青とフィルは何にも反応を示さなかったが、事情の知らないミリヤとレミルは小首を傾げている。

護衛の奴は微動打にせず、葵はシロとクロの二匹と戯れている。


「まあ、いい。それよりも早く国に行かなきゃダメなんじゃないか?急いでるんだろ?」


そう言いながらシャイトが馬車の方を示すと、ミリヤは今思い出したかのようにハッとなり、急いで護衛とレミルに指示を出し始めた。





今現在、丘の上から見えた街に向かっているところだ。

目算からして、約100キロほどなので今日中には着くだろう。シャイトたちだけならば二時間かそこらで着きそうだが、今は馬車がいるため、休憩時間を入れると1日はかかりそうだ。


因みに、『配下召喚』で出した妖狐たちには斥候と街に先に行ってもらって情報収集の二組に分かれてもらっている。

自分の配下ということからあまり心配はしていないが、念のためとして死んでしまった場合にはすぐに知らせる術式を二の腕あたりに彫ってある。

女性の妖狐に彫る時、うちの女性陣からものすごい圧力が体にかかった気がしたが、気のせいだろう。


気のせいと思いたい。


今は森の中に作られた街道を走っている。

時速二十キロ前後なので、あまり早くはないが、休憩なしでいけば五時間でつく速度なのでよしとしよう。

因みに、サーベルウルフのシロとクロにとっては早歩き程度の速度だ。


「なんで森の中に街道なんて作ったの?見晴らしが悪い上に、奇襲されやすい。迂回すればよかったんじゃないの?」


後ろから声がかかる。

今はシロの背に葵と二人乗りしている。


「ここは【フォレスト】って呼ばれる大陸最大の森、又は【異界の森】とも呼ばれているほどにでかいからだ」


「どのくらい?」


「日本二つ分の樹海が広がってるって考えた方が早いかな」


「………へ?」


シャイトの思いもよらない回答を前に変な声を上げてしまう。


「日本二つ分の樹海?」


「そう」


「そんな危険なところ通ってるの?」


「そう。樹海って表現した通り、方角がわからなくなる。それも、富士の樹海よりタチが悪い」


「魔物が出るから?」


「それもあるけど、一番はやっぱり空が見えないから日が昇っても太陽の位置から方角を算出することができないし、そこらに生えてる山菜とかは全てに毒があることかな」


「つまり」


「ここで迷ったら生きていけない、まあ、木とか伐採したり焼き払ったりすればいけるかもしれないが、日本二つ分の大きさだ。何も食べずに踏破するのは無理に近いだろうな」


「うへぇ」と漏らしながら、葵はふと疑問に思ったことを訪ねる。


「あれ?そしたらエフィロス王国って森の中にあるの?」


「普通はそう考えるな。でも、昔と変わっていないのなら……というか数百年で変わるとは思えないが、変わっていないのなら俺の口から言うべきじゃないな」


そう言ってシャイトは悪戯を思いついた子供のように楽しそうに笑った。





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