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妖狐の異世界転生旅  作者: ポポ
第2章 森羅万象の復活?
31/50

シールドコード3

よろしくお願いします!

半透明な生物は庄司たちの攻撃で、自分の体を構成する液体を周囲に撒き散らしながら吹き飛ぶが、その撒き散らされた液体が床に接触すると、液体が一箇所に集まり、半透明な体を再構築する。

外見はミニサイズの人型スライムにも見えるが、再生能力が桁違いだし、スライムと違ってとても攻撃力が高い。


正直言って、この空間の奴の方が厄介なのではないかと思う。 深青がいた赤い空間に何がいたかはわからないが……


地面に着地する。 先程、“眼下”と表現したが、あれはこの空間に飛ばされた時、何かの手違いなのか、とても高いところへの出現になってしまっていたのだ。


膝を曲げ、膝、腰、肩、と順々に地面につけて転がる。 これは受け身の方法で、高いところから落ちても大丈夫なような技だ。 機械の体でなくとも、そこそこ鍛えた人間ならば10階から飛び降りてもかすり傷程度で済むだろう。


この技は、マスターしているのでなんの問題もないのだが、深青を庇いながらの着地だったため、着ていた服が少しだけ破れてしまった。 ちなみに、フィルから貰ったローブは(飛び降りた影響では)傷ひとつ無かった。


背負っていた体制からお姫様抱っこに切り替えていたので大丈夫だとは思うが、傷の確認は一応しておく。


「うん、大丈夫そうだな」


顔にかかった前髪をどかしながら言い、深青が起きているか頬を突く。


ぷにぷに……(え? 何これ?)ぷにぷにぷにぷに……(やわらけぇ〜!)ビョーンぷにぷにビョーン


「|へぇ、はひやっへるほ(ねぇ、何やってるの)?」


ドスを効かした声がシャイトの耳に届く。


「あ、すみません。 あまりにも気持ちよかったもので」


ボフッ……

顔を真っ赤にしながら、頭から湯気が上がる。


「き、気持ちいいとか……な、何言ってるんだし……で、でも、別に悪い気はしないかな」


最後の方の言葉はシャイトには聞き取れなかった。 シャイトが無反応とまでは行かないまでも、あまり反応がなかったため、深青は状況確認をする。


そして知る。 自分がお姫様抱っこされていることに。


「ふわぁぁぁああ!!」


奇妙な声を発しながら、シャイトの腕から飛び出し、距離を取る。


「もうちょっと楽しみたかったのに……」


「な、何をですか!?」


「深青を……?」


そんなことを話していると、


「いちゃいちゃしてないで、早く助けに来て下さい!!! さっさと来いやっ!!!」


鈴のものと思われる声がシャイトと深青の意識をこの戦いに引きずり込んだ。


深青とシャイトが意識を向けると、やはりと言うべきか、一向に数が減っていなかった。半透明の生物は、死を恐れていない。て言うか、死という概念そのものが欠如しているように見える。


無限の再生能力を持つとこうなるのか、と考えるが、本当に無限なのかを考える。

確かに、数字や宇宙などは無限に存在すると考えられているが、それは、人間がそう思っているだけで、終わりがあるかもしれない。

例えば、宇宙だとブレーン宇宙論というものがある。調べてもらえればすぐにわかるが、これは、いくつも宇宙があると考えられており、ひとつ一つの宇宙は無限ではないと考えられている。

しかし、数字はどうだろうか……数字は無限にある。そう考えられる。 これは、人間が造ったもので、最初から存在していない。


この二つの違いはなんだろうか。 それは、“目に見えるかどうか”だと思う。 確かに、数字は紙に“書けば”見ることが可能だ。 だが、紙に書かなければ見えない。

一方、宇宙はどうだろうか? こちらは行動に移さなくとも見ることが可能だ。


この意味がわかるだろうか?

つまり、数字は“見えず”とも存在している。


何を言いたいのかというと、数字という目に見えなくとも実感できるものは無限にあり、目に見えなければ実感できないものは無限ではない。


|話を戻そう(閑話休題)


このことを踏まえて考えて見ると、再生能力というものは目に見えている。 目に見えない再生能力というのは有り得ないと思う。 決め付けるのもよくはないが、そう考えていいだろう。

ということは、だ。 一見無限の再生に見える能力だが、終わりがあると考えていい。ということだ。


まあ、その再生が止まる基準がわからないので今はどうこうすることは出来ないが、庄司たち四人の負担を減らすことを第一優先として動くこととする。


「切り込むから、深青は後ろから来る敵の排除を頼む。 ……あ、今は無理か?」


「多分大丈夫だと思う。 けど、安心はしないでほしい」


深青が自身の爪を神法で伸ばしながら言う。


「了解した。一応、気にはかけるが無茶はするなよ」


「………わかってる」


「おい、なんだその間は」


「べ、別に」


「俺の目を見て言え。 おいこら、目をそらすな。 上目遣いで見るな」


「ちぇ。 ダメか」


こんなやり取りをしていても拉致が開かないと思ったシャイトは、嘆息してから再び深青に声をかける。


「背後は任せたぞ」


「こちら深青。 任された!」


元気の良い深青の返事を聞きながら、シャイトは帯刀していた『叢雲』を抜刀術の要領で抜き放ち、目の前にいた物体(半透明の生物)四体を同時に斬り伏せてから正眼に構える。


鞘から露わになった刀身は、朝焼けのような美しい紫色をしており、全てを魅了するような妖刀だ。 そして、その刀身に鮮やかな、流れ出たばかりだと思われる血が絡まり、妖刀という名に相応しいような禍々しい雰囲気を放ち始める。


シャイトは力ある言葉……言霊を紡ぐ。


『我が血を吸い、真の姿を表せ。汝はこの世の水全てを操るもの。 そして、我に刃向かう者に下す鉄槌となれ』


『能力解放“叢雲”』


これで、『叢雲』の能力を十全に発揮できるようになった。 ちなみに、この『叢雲』の能力を解放する為の言霊は、妖術とは全く関係のない者なので、言霊という力ある言葉を扱える者ならば、誰でも『叢雲』の真の力を引き出すことができる。

しかし、出来るだけで、その力を使いこなすことが出来るかどうかは使い手次第だ。 その使い手が未熟であれば、『叢雲』は暴走し、『叢雲』を起動した術者は死に至る。


それはそれとして、


完全に解放された『叢雲』は、ただ光るだけで、その形状と色を一切変えることなく、能力が解放された。 拍子抜けのような気もしないでもないが、何度か能力解放を行なったことがあるので、シャイトには完全完璧な『叢雲』の姿に満足している。


「さあ、反撃開始といこうか」


シャイト自身は全く攻撃されていないのだが、そういうことにしておこう。


シャイトが『叢雲』を軽く横薙ぎに振るうと、その延長線上にいた物体が吹き飛んでいった。もうちょっと詳しく言うと、“跡形も残らずに”を入れるべきだろう。


「……」


数秒固まってしまう。

だってあれだけ推測して、答えが見つからず、後で考えればいいやとほっといた再生能力がこんなにも簡単に打ち破ることができてしまうとは考えてもみなかったからだ。


『叢雲』の能力で簡単に打ち破れるとは……拍子抜けである。


いつまでも固まっているわけには行かず、再度『叢雲』を本気で横薙ぎに振るうと、目に見える範囲の物体が消し飛んだ。


「うん……弱い」


そう呟くが、その光景を見たシャイト以外の者たちは開いた口が塞がらなかった。


(星)「俺たちって……そこそこ強い方だったよな? 村では」


(鈴)「う、うん。 強い方だった。 村では」


(庄司)「これが弱いのかぁ……自身なくすわぁ」


(凛)「元気出して! みんな元気出して! シャイトさんたちが規格外なだけだから! あの人たちが人外なだけだから! 私たちは普通だから!」


(深青)「私を一緒にしないでくれる!?」


(シャイト)「さらりと酷いこと言ってない!? 一応、人間だから! たまに人外になるけど……」


敵影がなくなり、どこか緩んだ空間が生まれる。 今さっきまで死ぬか生きるかの瀬戸際をさまよっていた者たちとは思えないほど元気だ。 シャイトは、これくらい元気であればフォロー必要ないか……と考えていると、空間に少女の声が響く。


『おぉぉお! 面白いよ! 面白いよ君達! 面白いからぁ……私達が相手してあげよう!』


随分と上から目線の言葉にちょいとイラつくシャイトくん。


「私達?」


深青が気になった単語を復唱すると、目の前の空間が歪み、犬のお面をつけた少女と、道化の格好をした長身の男が現れた。


「ヨークシャーテリアか……いい趣味してるな」


「え!? この良さがわかるの!? わかるの!?」


「ま、まあな。 犬は好きだ」


シャイトが犬のお面について評価を下すと、お面をかぶった少女が食らいついた。

道化男は冷や汗をかいており、他のみんなは、犬という単語にピンとこないのか、頭の上に疑問符をいくつか浮かべている。


一通り犬の話で盛り上がったところで、本題を道化男が切り出す。


「僕達に勝てたら、これを渡してあげてもいいよぉ? どうする? 勝負する?」


そう言って掲げたのは空色に輝く透明度の高い鍵だ。 一見、美術品のように見えるが、あれこそが女神に頼まれた“シールドコード”だ。 本来はデータなのだが、データだと解析されてしまうため、物質化を施し、幾十にもロックをかけた代物だ。


「戦って取る以外に何かあるのか? 俺としては戦う選択肢があるならばそれの方がいいんだけどな」


「君! なんていう名前!? 面白すぎて死ぬよ! キャハハハッ!」


「お前らに名乗る名前はない。 ってかっこいいこと言いたかったんだが、どうせ知ってるんだろ?」


「もっちのろん! 情報に疎いわけじゃ無いしね。 それに、敵のことは調べておいて当然だと思うけどぉ?」


「地上世界では『妖狐』と呼ばれて恐れられている。 本名はシャイト・アーカイド。 誰も本気を見たことが無い……とまで言われている、底の知れない人物」


シャイトとお面少女のやり取りに、ついていけてなかった道化男が話に復活する。

しかし、その情報を開示されたシャイトはというと、少々呆れていた。


「お前らさ、そんな程度の情報で俺に勝てるとでも思ってるわけ? 馬鹿なの? 阿保なの? 死ぬの?」


「もちろんこれだけじゃ無いよ! 君が使う“妖術”とやらも調べているのだ!」


どうだすごいだろう! と言わんばかりに無い胸を張る少女だが、


「底が知れないってさっき言ってたじゃん。 それなのになんで堂々と姿を晒すことが出来るわけ? 普通できなくね? もしかしたら見られただけで石になるかも知れないんだよ? 本当に馬鹿なんじゃ………敵の心配してどうするよ」


途中で敵の心配をしていることに気が付き、すぐに思考を止める。


しかし、本当にシャイトがメデューサみたいな能力を持っていたらどうするつもりだったのだろう。 もしかしたら考えてなかったのかも知れない。


少女と道化男は顔を真っ青にして即座に身を隠す。 この空間には身を隠せるものはないはずなのだが、と思うと、大きな柱があることに気がついた。 さっきまでなかったはずなのに……と疑問に思うシャイトだが、すぐに結論が出る。


「よし、お前らを殺してここから出よう。 そして、俺はシールドコードを取って帰る」


納刀していた『叢雲』を抜刀する。 刀は斬るために抜くというが、『叢雲』の場合は違うとシャイトは考えている。 日本刀は斬ることや刺突することに重きを置いているが、『叢雲』はそれとは別に、水を操る能力がある。 正確には水分だが、その水分を操るための条件が存在する。 それは、刀身が水に触れていること。なので、納刀状態では水分を操ることはできない。

補足だが、空気中の水分でも能力発動に影響はない。 しかし、『叢雲』を劣化させないために鞘の中は常に真空状態にしてある為、抜刀しなければ水を操ることは不可能。


「まず一人目。 弱そうな方……死ね」


刀を無造作に振ると同時に、“死ね”という単語をシャイトの口から発せられる。それと同時に、道化男が内部から破裂するようにして、爆散した。

その近くにいた少女は、血肉の被害をモロに受けて、全身骨や肉、血などで真っ赤に染まってしまっていた。


「へ?」


先程でうざったい程ハイテンションだった少女が状況についていけずに間抜けな声を上げる。 そして、その状況に頭が追いつくと、少女の顔が、先程の道化男どうように、真っ青になった。 血の気が引くというのはこういうことなのだろう。


身を隠していた柱は、いつの間にか粉々に砕け散っており、少女とシャイトの間を遮るものは何一つない。

道化男の破片から覗く少女の肌は、白を通り越して、病的なまでに白くなっていた。


「こ、殺さないで……殺さないでください。 シールドコードは渡しますからっ!」


「じゃあ、取引と行こうか」



その後、取引を成立させた。

シャイトたちは少女をこの場で殺さないことを約束し、少女はシャイトたちを元の場所に戻すことを約束した。


「あ、やっぱ、こいつの村まで転移してくんね?」


「こ、殺さないのなら」


「わかってるって」


全員が少女の方につかまり、少女の魔力が練られる。 転移の兆候だ。



次の瞬間、村の門の前に到着した。 村から砂漠にあるタワーまでの労力を返せと言いたくなるほど簡単に帰ってこれた。

転移とはとても便利な代物だと、しみじみ実感した。


シャイトは、庄司たち四人のところへ向かう。 ここまで旅してきた仲間だ。 短かな付き合いとはいえ、お別れはお別れだ。 挨拶をしに行こうと思ったのだ。


「よう、今まで俺に付き合わせてしまってありがとな。 これはほんのお礼の気持ちだ。 受け取ってくれ」


こんな朗らかに笑うシャイトをフィルや葵が見たら、腰を抜かすだろう。 色々な意味で……。 実際に、近くにいる深青は鼻を押さえてそっぽを向いている。


代表として庄司が受け取るべきなのだが、何故か鈴が前に出てきて、頭を下げた。


「こちらこそ、ありがとうございました。 いい経験が出来たと思います。 それと、言いにくいんですが……」


「ん?」


先を促すようにシャイトが目線で問うと、


「これでお別れにしたくないんです。 シャイトさんの旅について行きたいなんて我儘は言いません。 ですが、たまに来てくれるだけでいいんです。 これくらいの我儘、聞いてもらえますか?」


「了解した」


それを快く承諾し、お礼の品を渡す。 ちなみに、お礼の品はシャイトが魔改造した銃器だ。 もっといい別の何かがあったのだろうが、これが精一杯だった。


「あと、これも渡そう。……いや、貸しておこう。 次来た時に返してくれるか?」


「はいっ!」


そう言って渡したのはワンドを形状変化させたシャイトが身につけていたネックレスだ。 それを、また形状変化させて、ピアス状にする。


鈴の耳につけてやる。 今まで気付かなかったのだが、鈴はピアス穴を両耳とも開けていた。


そのあとは、庄司、星、凛とお別れと、また会う約束をしてから、地上アルシャファルに転移で向かった。

これで二章終了です。来週から新章に入りたいと思います!

これからもよろしくお願いします!

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