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妖狐の異世界転生旅  作者: ポポ
第2章 森羅万象の復活?
27/50

本物の大地

これからも、よろしくです!

深青が仲間に加わってから一週間が過ぎた。

あれから深青はシャイトのことを主や主人、ご主人とは呼ばず、呼び捨てにしている。よほどあの茶番劇が頭にきているのだろう。


また、本人も深青みおという名前は気に入っているようで、元模造天使ちゃんとか呼ぶとぶん殴られ、「私の名前は深青です」と説教を何時間も受ける羽目になる。

この為、最初の3日くらいは元模造天使ちゃんと呼ぶ奴はいたが、今ではすっかり深青という名前が浸透している。


「深青、前方に下位互換模造天使五体。れるか?」


「私を誰だと思ってるんですか?機体性能で劣る奴になど負けるわけないじゃ無いですか」


両手を肩の位置にまで持ち上げ、首を竦める。


「油断だけはするなよ。油断大敵という言葉があるくらいだからな」


「なんですか? その言葉。まあ、シャイトが言うのなら油断だけはしませんよ」


「……最初の頃とかなりキャラ変わったね」


シャイトの呟きは空気に揉み消され、深青みおは金属製の床を蹴った。

金属の床が弾け飛び、鋭い刃を形成する。

深青はその刃に浮遊の特性を持つ神法をかけ、自身の周りに浮遊させたかと思うと、それを射出した。


計5本の金属刃は螺旋を描きながら下位互換模造天使に飛んで行き、深青の狙い違わず、頭に突き刺さる。

しかし、人間では無い為、これだけでは止まらない。止める方法としては、核を破壊するか、首を完全に胴体から切り離すかの二択しか無いのだ。


下位互換模造天使達の機能は制限が掛かったと見ていいだろう。


情報を集める機関が破壊されたのでは、単純な攻撃と防御しかできない。

もう、そうなって仕舞えば、深青の前では人間が蟻を潰すのと何ら変わらない。


高周波で振動させた掌底突きを下位互換模造天使に打ち込み、装甲を無視して五体全ての核を破壊した。


核だけは灰のように風に乗って消え、下位互換模造天使は部品ごとにバラバラになってしまった。

深青の時は使えると思ったので、組み立て直し、核を入れたのだが、下位互換はいらない。

なので、部品の中で使えそうなやつだけをピックアップし、深青の身体を改造して行く。


深青の服を脱がし、美しい肢体が露わになるが、人形の様な身体のため全く興奮しない。


女性の服を脱がすことや、好意を抱いている女性の服を脱がすことに背徳感を覚えはするが、機械の身体は何も無い。

何も無いは言い過ぎかもしれないが、


(帰ったら深青の身体を作ってもらうか)


報酬として深青の身体を追加するシャイトだった。


(それだけの働きをすれば報酬も上がるだろうしな)


パーツを組み合わせ、深青の身体を魔改造して行く。

何も無い時に服を脱がしたりするとぶん殴られるが、魔改造の時だけは大人しい。



2時間かけて魔改造を施し、深青に服を着せる。

シャイトは一つ疑問を覚えた。


「深青、ブラって必要か?」


深青の額に青筋が浮かぶ。

地雷を踏んでしまったらしい。


腹パンを喰らい、蹲っているところに股間を蹴られる。

機械の身体なので、痛みはあまり感じないが、股間の痛みだけは本物だった。


(な、なぜ、股間だけ)


男にしかわからない痛みに耐えながら、時間が過ぎていった。

男からは同情の眼差しが、女からは冷たい目線が。





結局あのまま野営することになり、現在回復したところだ。

何を……とは言わないが察しがつくだろう。

深青の蹴りだけは回復が遅かった。


精神的にも肉体的にもげっそりシャイト君。


深青がげっそりシャイト君が座っているところまで二人分の朝食を持ってやってくると、シャイトの前に朝食を置いてから謝ってきた。


「ごめんなさい。さすがにやり過ぎた……かも」


そんな深青の姿を見て、先程のげっそりシャイト君はどこにいったかと思うほどの笑顔を振りまき、謝罪を受け入れる。


「でさぁ、そのぉ、」


「何?言いたいことがあるならさっさといって欲しいんだけど」


「朝食食べさせてください!」


「……手があるんだから手で」


深青の言葉を遮ってシャイトは両腕を挙げる。両腕には包帯が巻かれており、赤くなっていた。

実は、深青が謝ってきた時に急いで用意したものである。


自分の腕が使えないから、食べさせてアピールである。

準備が良すぎる様な気がしないでも無いが、深青は溜息をつきながら、朝食を乗せたスプーンをシャイトの口に突っ込んだ。





シャイト達一行は馬鹿でかい施設の様な場所を歩き回り、一つ一つの部屋を確認していた。


なぜ、馬鹿でかい施設の様な場所にいるかというと、模造天使と戦った時に出来た穴がここに繋がっていた為だ。


しかも、その施設とやらが、シールドコードを保管している最重要施設だったのだ。

本来、ここまで辿り着くのに後何ヶ月も必要だったらしい。

超ショートカットだ。


また、この施設を護衛? 防衛? する奴らが、階段の時と比べて桁違いに強い。

下位互換模造天使が虫の様にうじゃうじゃしており、模造天使と上位互換模造天使は数こそ下位互換模造天使の半分以下だが、一体一体のスペックが違いすぎる。

ちなみに、深青は模造天使を倒すたびに行われる魔改造のおかげで、模造天使の機体と言っていいのかどうか怪しくなるぐらい強くなっている。

それこそ、上位互換模造天使を片手でもてあそぶぐらいやってのけるだろう。


シャイト達はこれで何部屋目になるか分からないほどの部屋を見てきた。

これまでと同じ様に扉を開けようとして、止める。


深青以外の人は“何故止めるんだ?”とでも言いたい様な顔をしているが、この扉だけは今まで開けてきた扉と全く違う。

深青は気づいている様だった。


「この扉……今までの扉よりロックが厳重過ぎる」


「ああ」


正確には、今までの扉は精々指紋認証と静脈認証程度だったのだが、ここの扉だけは銀行の金庫が可愛く見えるくらいの厳重さだった。

シールドコードで再現したと思われる神力を扉全体に張り巡らせ、許可のないものが触れたら、触れたものに神力という力が逆流し、許容限界量を越えると、体が爆散する仕組みになっている。


なんとも恐ろしい扉である。

しかし、ここまで厳重だと中に何があるのか気になる。もしかしたら、シールドコードに繋がる手掛かりがあるかもしれないのだ。


一番確実で早いのは強引に扉を開ける方法なのだが、それをすると、中にある手掛かりが消えかねない。


神力を操作して扉のロックを解除する方法もあるのだが、時間はかかるし、安全とは言い難いし、神力を扱うことのできる(ここにいる)唯一の存在深青に負担がかかる。


シャイトがどうやって開けようかと思案していると、深青が両手に大量の神力を集めて扉に触れた。

接触面から放電現象が起こった為、周囲に被害が及ばない様にシャイトが極小の結界を張る。


いきなり行動に出た深青を咎めたいところだが、今それをすると、深青が危ない。

シャイトはそう判断し、深青の額から流れ出る汗をハンカチで拭った。



二十分程経った頃、深青がふぅと息を吐きながら手を離した。

シャイトにも扉の神力が完全に害のないものに変わっていることがわかった。


後は、通常の扉より解除が難しい程度にまで落ち着いている為、深青をさがらせ、シャイトが解除して行く。



バシュゥ


扉の隙間から白い煙が上がり、扉が開かれる。


内部はなんの変哲もない仮眠施設の様なものだった。

二段ベットが四台の簡素な作りの部屋。


しかし、一見分からないものの、集中して神力の流れを視てみると、一部分だけおかしいことがわかるだろう。


右手前にある二段ベットの上段を横に軽く奥にずらし、下段を軽く手前にずらす。

右奥の二段ベットを軽く奥にすらしてから、左奥のを手前にずらし、ちょっとだけ持ち上げる。左手前の上段を上に上げてから全体を下に下げる。右手前のを下にずらし、左手前のを更に下にずらす。

そして、右手前のを上に上げ、元の位置に戻すと、


部屋が揺れだした。


扉は閉まっていないのに、出口がなくなっていることから、部屋そのものが移動していると見ていいだろう。


しばらく部屋が移動し、新たな扉が現れる。


古い引戸を開ける様な音が鳴り響くと、そこは……


――砂漠が広がっていた。


砂漠としか表現できない様な光景に、全員が絶句してしまい、涙を流しているものさえいる。


シャイトが涙の理由に疑問に思っていると、涙を流した者の口から理由が呟かれる。


「す、砂だ。御伽噺の中だけかと思ってた……」


「これが……大地……」


手に砂を取り、指の隙間から砂を逃す。

砂漠にある様な砂は、横から吹き付ける風に乗って飛ばされていく。


もう一度、その砂漠の全貌を見てみると、


砂丘の至る所から建物らしきものが見えたり、信号機が見え隠れしている。


この光景が、シャイトの疑問を解消した。


その疑問とは、三年前に読んだ巻物の件だ。

この世界の成り立ちみたいなことが書かれていたが、あれが本当だとするならば九億年間旧人類と言うべき人たちが繁栄していたことになる。

だが、よく考えてみると、九億年間と言うのは非常に長い。


一つの星だけではないかもしれないが、人類が九億年もの間、繁栄し続けるのには無理があるし、資源も底をつく。


そして、この光景。


アルシャファルがあるのが上界だとすると、その上界の最深部に作られたアルカルディア。

そのアルカルディア更に下……。下界。


アルカルディアの規模を考えると、アルカルディアの下はマントルと考えるのが普通。

しかし、マントルではない。


このことから、元々の星は何か・・に覆い尽くされ、本当の星はこの砂漠化した大地。

上界と下界の間にサンドウィッチ状になっているのがアルカルディアだと考えていいだろう。


だが、巻物にはそんなこと全く書かれていなかったことを見るに、神々の目を盗んで人類がやったのか……

もしくは、神々が黙認しているかのどちらかだ。


神々の目を盗める程科学技術が発展していたのであれば、旧人類は滅びることは無かっただろう。

と言うことは、神々が黙認している。と言う結論になる。


しかし、あのクソ女神がそれを知っているのにシャイトに教えないのが不明だ。

もし知っているのであれば、シャイトにその情報を渡し、シールドコードを持ち帰る確率が上げるか、早くするかのどちらかはするはず。


こう言う風に考えると、二つの答えが出てくる。


・女神は森羅万象の女神“イアリストの復活はどうでも良い。復活出来たら良いなぁ程度。

・本当に知らない。


二つ目の“本当に知らない”という場合、さっきも言った様に、神の目を欺くことが可能なのか?

と言う話だ。


それは無理という結論だ。


ということは、誰かが意図的に情報操作をしている。

という風に考えるのが妥当だろう。

それに、あの女神がイアリストのことをどうでも良いと思っているはずがない。多分。


そして、神をも騙すほどの情報操作が可能な人物がいるとすれば、それは……



「あぁ、なるほどなるほど……真の黒幕は邪神じゃない・・・・・・。……狂った神か…」


その呟きを聞いているものはいなかった。


「ま、邪神も邪神で悪党だけどな」





砂漠化した真の大地に降り立ち、数日が過ぎた。


ここまで、敵という敵とは会っておらず、動くものの気配が自分たちの他に全くないように感じる。


この数日間で、幾度と見てきた巨大なビルだったと思われるものが砂漠から頭だけを覗かせている。

それも、そこら中にあちこちあり、前は巨大なビル群があったと考えられる。


一つのビルに近づき、上に被さった砂を手で取り払う。

サラサラとした砂が、下に落ち、何千年と顔を出さなかったビルの表面が露わになる。


“帝國陸軍基地第五大隊・総合指令室”


(国名がない……?)


ふと上空を見上げると、人工太陽が照りつける地面に向かって滑空してくるものが見える。

その影は一つではない。

正確な数は今は分からないが、十五以上いると考えて良いだろう。


滑空している影が人工太陽の光を受けて、一部が反射する。


(人工的に作られたもの。反射するということは、表面が金属質ということか?)


滑空してくる影の正体についての仮説を色々立てるが、今はそれどころではないと思い直し、戦闘態勢をとる。


シャイトと深青が戦闘態勢を取ったことで、周囲に散開している者たちも上空の影の存在に気が付き、それぞれが戦闘態勢をとる。


人工太陽を背に向かって来ているため、あまり距離感は分からないが、大体は把握できる。胸にあるエネルギー砲の射程に入ったことぐらいは。


胸の装甲に光の筋が入り、装甲板が移動し、砲身が姿を現わす。

機体同様の黒を特徴とした砲身で、艶がある。


周りにある光の粒子が砲身に集まりだし、砲弾を形作っていく。


《光エネルギーの充填を完了。充填率140%。有効射程距離3800メートル。照準を合わせてください》


照準を一番先頭を飛ぶ奴に設定する。


《追尾機能がオフにされています。オンにしますか?》


(はい)


《追尾機能をオンにしました。衝撃に備えて下さい》


背面の装甲が脇腹あたりに移動し、衝撃を逃すように作り変えられる。


《発射します》


AIの単調な声を引き金とし、胸から光の光線放たれた。

衝撃波が全て後ろに流れ、後ろの砂が捲き上る。


光線は一直線に進んでいき、影に当たると思われたところで、枝分かれし、影を避けるかのように消えていった。

遅れて、何かに当たったかのような篭った音が響く。


「障壁……? 神力も魔力の流れも感じなかった。と、すると、エネルギー障壁と考えた方がいいか」


それに、と心の中で付け足す。


(追尾機能が無効化されている。厄介な相手だな)


遠距離戦では不利と判断したシャイトは、影からの遠距離攻撃を警戒していつでも動ける態勢に入ってから、高周波ナイフを肘の仕掛けから取り出し、構える。

近接戦闘で攻撃が通じるかどうかはまだ分からないが、遠距離攻撃を防がれるとなると、これしかない。


影とこちらの距離が一キロを切った。


背後から射撃音が聞こえる。


庄司たちが撃った弾丸は、先程のシャイトが撃った光線と同様に、相手の近くで展開された障壁を乗り越えて・・・・・、いくつもある影の内、一つを撃ち落とすことに成功する。


どうやら、エネルギー体は阻害することは出来るが、物理攻撃は阻害出来ないらしい。

そう判断したシャイトは、素早く高周波ナイフをしまい、代わりに拳銃を二丁取り出す。


いつもの拳銃のフォルムと異なり、今シャイトが手にしている拳銃はゴツゴツとしていて、とても持ち歩きにくそうだが、力強そうにも見えるし、頑丈にも見える。

そして何より、めっちゃくちゃカッコイイ。


照準を合わせようとすると、フォログラムが空中に映し出され、照準が着けやすくなるとともに、装填弾丸数、弾丸の種類、弾づまりの危険度、有効射程距離など、狙撃に必要な情報は勿論のこと、銃の説明までもが映し出された。

ちゃんと纏めて映し出されているので、目がチカチカしないが、鬱陶しいことには他ならない。


シャイトは、後で設定を弄ろうと心のメモ帳に書き留めてから、引き金を引いた。


銃身に青色に発光する線が幾何学模様を形成し、銃口に至った時に、弾丸が発射された。


火薬の弾けるような、ダァンという音ではなく、バシュンのようなガシュンのような、表現のしようが無い音が響く。


その音が、二丁の拳銃から断続的に聞こえ、その音が止むと、上からこちらに向かって来ていた影は上空からいなくなっていた。

墜落したと思われる場所に目を向けると、球体が転がっている。


球体は直径が10センチと手のひらサイズで、銀色がくすんだような鈍色にびいろより銀に近い色を放っていた。


それが突然光りだした。


シャイトの頭に警鐘が鳴り響く。


「みんな!伏せろ!」


限界まで離れてから、身を投げ出すようにしてから伏せる。

シャイト他数名が伏せた瞬間に、爆音と爆風が吹き荒れる。


辺りに金属片が飛び散り、弾丸のような速度で飛んでいく。

ある者は頭を撃ち抜かれて即死。また、ある者は身体の致命傷にならない程度の傷を負い、呻く者。


そして、科学物質と思われる煙が辺りを覆った。


即座にシャイトが解析すると、

『有機体腐食性高濃度塩酸局所的大気汚染物質』

なんとも長ったらしい名前が表示された。


名前から察するに、塩酸の溶かす性質を持っており、有機物を腐らせる性質も併せ持つということだろう。


――あれ? かなりヤバイんじゃね?


シャイトの身体(機体)の表面もなんとなくヌルヌルする。

九世代型の最新鋭機だからこの程度で済んでいるのだが、他の皆はそれどころでは無いだろう。

いや、深青だけは普通に立っているが……


兎にも角にも、ここから離脱した方がいいのは誰の目から見ても一六瞭然だ。


「深青! 死んでるやつはもういい。まだ息のある奴だけ引きずってここから離脱しろ!」


「わかった。 けど、シャイトの命令を聞くんだから当然報酬はあるんだよね?」


「なら、俺がお前の旦那になるというのはどうだ?」


「ごめん……帰るか――」


「わかった! わかったから! じゃあ、ちょっと弄った武器でどう?」


「うん……それならやろう」


深青に生存者の運び出しを任せて、シャイトは爆心地に向かう。

何か使えるものがないか探すのと、こんな七面倒な手間のかけた攻撃をしてくる人物の特定の鍵を探すためだ。


こんな攻撃をして来たことから、性根の腐っている奴に違いないと決めつけて、爆心地に向かう。


爆心地には一つだけくすんだ銀色の球体が残っていた。

不発だったのか、それとも、元々爆発しない仕掛けなのか……。


警戒しながら近づき、どこから取り出したのかわからない、爆弾処理班が使うようなアームをシャイトが取り出して、球体を掴む。


「ゴクリ……」


シャイトが口に出して呟く。


全く意味のない呟きだが、少し精神を落ち着ける意味合いがあったのだろうと思う。思うことにする。


――こんな至近距離で爆発なんてされたらたまったものではない。いくら第九世代型の機体だからといって先程の爆発を見た後だと、腕が飛んでもおかしくない。


いや、まず、こんな至近距離で爆発されたら……普通の機体であれば木っ端微塵になり、人間であれば肉塊になっている。

ちょっと感覚がずれ始めているシャイトだ。


「終わった〜?」


緊張した空気には似つかわしくない間延びした声がシャイトの耳に届く。


「分からん。そうとしか言えん。不発弾なのか……元々爆発しない奴なのか……遅延性の爆弾なのか……まあ、一番可能性が低いのは元々爆弾じゃないって仮説だな」


「なんで?」


「少しはそのない頭で考えろよ」


「そのない頭を持つ私に惚れたのは誰?」


「あ、僕でした」


「で、なんで?」


正直に答えられると照れてしまうのか、深青は頬を朱色に染め、そっぽを向きながら問う。


「照れ屋さんなのかな? 可愛――」


ドンッ


拳銃の銃口が煙を吐いている。

今度は酷く冷たい眼差しをシャイトに向けながら、


「で、なんで?」


さすがのシャイトでも、好意を寄せている人からのこの目線は耐えかねたのか、胸元をぐっと抑えながら、呻く。


「こ、これもまた」


その時、シャイトの背中に冷たい視線が突き刺さる。

額から冷や汗をかきながら、“元々爆弾出ない説”がありえないとまでは言わないものの、極めて有力でない理由を告げる。


「こんな悪列な攻撃をしてくる奴だよ? 性根が腐ってるとしか思いようがない。 それに、そんな性根の腐ってる奴がわざわざこんな爆発しない奴なんて送り出すと思う? ありえない。 そんな腐ってる奴だったら死体で文字とか作ってくる方がしっくりくると思うでしょ。 まあ、だいたいそんな理由かな」


かなり口調が柔らかくなっていて、まるで別人みたいなシャイト。


「確かに、こんなことをする奴は腐ってるね」


すると、突然地面の砂が隆起し、人型の何かが現れる。


その人型の何かは、口と思われる部分をガクガクと動かし、声を出す。


「人のことを腐ってる腐ってる言うなぁぁぁぁあああ!」


相当頭にきているのか、地面から這い出てきた当初の紫色の肌を真っ赤にし、怒りでプルプルと震えていた。

うるさくて、関わると面倒臭そうなので、無視して深青と球体の性質やその能力を確かめていると、更に怒りで顔を赤くして喚き散らしている。


「なんでこんなに騒いでるのに僕を空気みたいに扱えるの!? 頭おかしいんじゃない!? ねぇ! 聞いてるの!? ねえってば!!」


「腐りかけのチーズみたいな匂いを発するものは無視して、こいつの性能だが、魔法金属が使われている。 アルカルディアで魔法金属は見ていない。 とすると、この魔法金属は上界の物だと思うのだが、深青はどう思う?」


「私は上界に行ったことがないから分からないけど、多分この下界の物じゃないと思う。 それに、神力の下位互換版みたいのが流れてる。不思議な力……」


「あぁ、深青は魔力を知らなかったか……この身体じゃ使えないけど、上界に行ったら魔法とか魔力とか手取り足取り・・・・・・教えてあげるよ」


両手の指をワキワキとさせながら近づいてくるシャイトから逃げるようにして、深青は自分の体を守りながら建物の陰に隠れる。


「まあ、興味ない……ってわけじゃないんだけど……その、まだ早いって言うか……恥ずかしいって言うか………ってなに言わせてんだぁあ!」


まだ・・……まだか……んじゃいつか」


シャイトと深青のやり取りを聞いていた見た目からして腐った奴は、空気は読めるのか深青とシャイトのやり取りは邪魔しなかった。

プルプルと震え、顔も真っ赤になっているので怒っているのだろう。


ひと段落ついたところで、その腐った奴は怒鳴り声をあげた。


「人を空気扱いして……いちゃつくなぁぁぁぁあああ!」


「「てへっ☆」」


深青とシャイトは二人同時に頭に拳をコツンと当て、舌を出しながら言う。

それは挑発しているようだった。

勿論、脳味噌も腐ってる奴は挑発だとは気付かずに乗ってくる。


思考を放棄し、攻撃してくるが、頭に血が上ってる状態での攻撃は単調。

そんな攻撃が二人に当たるはずもなく、避けられ、カウンターをモロに受ける。


身体中をボコボコに殴られ、蹴られ、歯も折れ、骨も何十本も折れ……半殺し状態で転がっている腐り男に向かいながら、シャイトは質問する。


「なんで俺たちを攻撃したの?」


「何故だと思う?」


「質問を質問で返すなよ。 こっちは生かしてやってんの」


再びシャイトは腐り男の顔面を蹴り、鼻の骨を折る。


「で、なんで俺たちを攻撃したの?」


「お、俺のテリトリーに入ったから」


シャイトは“そんなしょうもない理由?”と呟き、鼻で笑ってから鈍色の球体を手に取る。

手の上で転がし、カラクリがどうなってるのかを確認しながら腐り男に問う。


「これ、どうやって作った?」


「教えると思っ……グボッ」


言葉を途中で遮って、腹を蹴る。

まだ自分の立場が分かってないようだ。

それから何度も何度も腹を蹴り、話しそうになったところでもう一度問い直す。


「お、俺のバックの中に設計図が入ってる。 それを見てくれ。 他に聞きたいことがあっても俺はよく覚えてない。 全部バックの中だ。 こ、これで見逃してくれるんだよな?」


心底怯えた間抜けな顔で、遠くに転がっているバックを指差しながら言う。

あれが腐り男の記憶や頭脳だとすると、この肉体にはなんの意味がある?

答えは、何もない。


「よし、殺そう」


「えぇ!?」


「いや、だってそうでしょ。 必要のないものなんて殺すか捨てるに限るし、一度俺たちの事を攻撃してるんだよ? 命狙われたんだよ? じゃあ、こっちも命狙わないと釣り合わないでしょ」


「その事は謝るから! 謝りますから命だけはっ!! ちょ、ちょっと待っ――」


バスッ


腐り男が何か言い終える前に、深青がサプレッサー(サイレンサー)を取り付けた拳銃で脳天を撃ち抜いた。

こんな化け物みたいな姿形をしているので脳天で本当に死んだか分からないけど、人型である限り弱点はどこも同じだと思う。


しかし、油断は禁物だ。 油断大敵という言葉もあるくらいだからね。


腐り男を芋虫のように縄で巻き巻きしてそこらへんに転がす。

そして、道中で偶然拾った硝石と何故か持っていた木炭、そして研究所にあった硫黄を混ぜ合わせて作った火薬を小さな袋に入れ、その小さな偽手榴弾を大量に芋虫腐り男につけていく。


火縄を各々に取り付け、火をつける。


時間は十分にある。

さっさとここから離れよう。


生き残りに声をかけ、その場をさっさと後にする。




「うぅ……」


腐り男が上半身を起こそうとするが、うまくいかない。

自分の体を見てみると、縄でぐるぐる巻きにされている。 しかも、小さな砂の入った袋がいくつもぶら下がっており、一つ一つに縄が繋がれている。


「あ、あの野郎……人を腐ってる腐ってると罵っておいて……半殺しにした上にこの仕打ちかよ……」


目の前に煙が通り過ぎる。

顔面が腐っているため、視覚と聴覚以外が全く機能してないので気付くのに遅れたが、煙の方に視線をやると、小袋につながっている縄の端がチリチリと燃えていた。


――おぉのぉ……コレヤバイヤツジャン。


気付いた時には時すでに遅し……小袋の一つに引火し、爆発。

そのほかの小袋も誘爆を起こし、次々と爆発した。


腐り男は影も形もなく粉々になり、土? に帰った。


30話あたりまでストックはあるんですが、これからも週一投稿を続けたいと思います!

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