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妖狐の異世界転生旅  作者: ポポ
第1章 死そして転生
21/50

女神との再会

これでこの章最後です!!



よろしくです!

シャイトたちは今現在、【神山】に我が物顔で跋扈ばっこしている魔物たちと戦闘中だった。

まあ、今のシャイトたちを相手にする魔物たちが可哀想に見えてくるのだが、それは自業自得というやつだろう。


唯一不思議な点を挙げるとすれば、ここは草原ではなく森の中。

シャイトたちが歩いていたら突然陽炎のように草原が消えたのだ。そうとしか表現ができなかった。


そして、シャイトたちは上に向かって歩いている。

目指すは【神山】の山頂。そこにある神殿だ。

なぜそんな意味わからんところに赴くのかといえば、神界へ続く道は神殿内にあるからだ。


これがこの山が【神山】と呼ばれる理由だ。


勿論、上に行けば行くほど魔物の強さは上がって行くもので、


「あぁ……マジだりぃ」


「何こいつら!気色悪い視線をむけてきてぇっ!そんな視線を向けていいのはシャイトだけっ!」


「ほんっとうざいんですけど……マジでうざいんですけど……」


シャイト、フィル、葵の順番で三者三様の言葉を口に出す。

それもそうだろう。


ゴブリン擬きに物量戦を仕掛けられているのだから。

ゴブリン擬きといったのは、ゴブリンにしては異様に強いからだ。

身長は140センチほどで、筋肉むきむき。ちゃんとした鎧と剣を携えており、狼の魔物に乗ってすごいスピードで動いているのだ。


基本的に別種の魔物同士が手を組むことはないのだが、この【神山】は例外なのだろう。


ちっちゃいくせにムッキムキ。細マッチョならぬチビマッチョ。ww


シャイトはナイフで、葵は魔法で、フィルは長剣でゴブリン擬きを次々と殺して行くのだが、数が全く減らない。


数の暴力というものを言葉通りに取ると、今の状況に重なるのだろう。それくらいに数が多かった。


「このままじゃジリ貧だ!範囲殲滅魔法をぶっ放すからちょっと時間を稼いでくれっ!」


「「了解っ」」


この範囲殲滅魔法とは、シャイトが新たに習得した魔法である。

《アンチマタアニヒレーション》

日本語に直訳して、反物質対消滅というわけである。

簡単に説明すると、暗黒物質を操作して、反物質を作り出す。それと同時に物質(何でもいい)を作り出し、反物質と物質をぶつからせるのだ。

このせいで対消滅が起き、地球・日本の長崎に落とされた原子爆弾(核爆弾)の約二倍のエネルギーを生み出し、シャイトを中心として爆発する。


かなり小さな島なら消し飛ばすことも可能だ。


ちなみに、この規模の対消滅を起こすには物質1グラムと反物質1グラムをぶつければ簡単に起こる。

まず、反物質を作り出すこと自体難しいのだが……。


「葵とフィルは退がれっ!葵は周囲の警戒、フィルは最高強度の《金色結界》を張ってくれっ!カウント3で始める!」


「「はいっ」」


「3!」


葵が退がるのをフィルが援護する。


「2!」


フィルが退がるのを葵が援護する。


「1!」


フィルが金色結界をシャイトたち三人を取り囲むように半球状に展開させ、


カッッッッ!


周囲が眩い光を放ち、直後に鼓膜が破けるほどの爆音が轟いた。


フィルが三人の鼓膜を回復魔法で修復しながら三人で目を開けると、金色結界には微量ながらも亀裂が入っていた。

そして、金色結界の向こう側に広がる光景は先程までの森ではなく、超巨大なクレーター。


ちょっとやり過ぎたと反省するシャイトだった。


被害は半径1キロメートル以内に設定していたため、群がってきていた魔物たちだけで済んでいたが、神山を遠くから見ていた人たちにはどう見えていただろうか?

頂上に近い場所で何かが発光したかと思った時には爆音が聞こえてきたのだからさぞかし驚いただろう。


「…………シャイトが夫だったら私を守ってくれるんだろうけど、流石にここまではして欲しくないかなぁ……」


「パパがフィルの夫になるのかどうかはわからないけど……それは同感」


そんな風にしみじみと呟かれたシャイトへの非難?を咳払い一つで黙殺してから頂上に向かって歩き出す。


頂上まで後2キロもないのだ。しかも、今の時刻は午後3時。

日が落ちるまでには頂上に着いて起きたかった。




対消滅という大爆発が起きてから約二時間後。現在の時刻は午後5時過ぎで、太陽が地平線の彼方に半分が沈んでいるところだった。


「今日はここで野営だ。日が出ないと神界への道は開かないしな」


そう、神界へ続く道が現れるのは早朝で、日の出の時間帯だ。

緻密に計算されており、神殿からちょっと離れた場所にあるモライ遺跡に似た場所の中央に立つと影が浮かび上がってくるのだ。

神殿の影と、円状の遺跡の影、そして自身の影が重なり、ギリシャ文字の時計が浮かび上がってくる。


その文字盤と三本の指針を特定の魔力波で特定の場所に動かし、特定の呪文を唱えると、神界への道が開くのだ。


しかし、そんなことを知っているのは、この世界でも極限られた人物のみぞ知るものだ。


そこまで葵とフィルに話したシャイトは、一度手を叩き、空気を変えてから野営の準備に取り掛かる。


今日は先程までの戦闘で大量に狩った魔物がいるので食料には困らない。

なので、準備といっても、火をおこすのと、簡易的なベットを作るのみだった。


簡易的なベットとは、そこらへんの草を蒸して菌などを殺し、地面に広げるだけのものだ。

とっても簡単っ!



そのまま夜が明ける。


交代制で見張り当番を約束していたのだが、お肌に悪いという理由で一晩中シャイトが見張る羽目になっていた。

シャイトとしても、妖狐なので一週間寝なくても平気だし、前世の見張り技術があるので全く眠くなってはいなかったのだが、無防備な女体を見ていると何にかが湧き出してきたものだ。


葵とフィルの作戦だったのだろうが……。


それはそれとして、日の出前に葵とフィルを叩き起こし、火種を消す。


「もうそろそろだから顔でも洗っとけよ」


シャイトの感覚では日の出まで、後二、三分はある。


顔を洗い、さっぱりしてきた葵とフィルが戻るとその儀式はすでに始まっていた。




影で出来た巨大な時計の文字盤が地面に広がっており、影なのにその上で不思議と浮いている三本の指針。

その中央に立つ両手を広げたシャイトがいるのだが、いつもの雰囲気と一変して神々しく感じる。


眼下に広がる雲海と日の光、キラキラと光るダイヤモンドダスト。

そして、神々しいシャイトと不可思議な影の時計が合わさり、実に幻想的で非現実的だ。


ギリシャ文字の時計と三本の指針が歪み始め、不可思議さを加速させる。


「我、妖狐の“沙羅双樹”の名において命ず」


ガチンッガチンッガチンッ


時を指す指針がIIのところを指す。

分を指す指針がIIIのところを指す。

秒が指す指針がⅧのところを指す。


「神界への扉を開き給え」


カチカチカチカチ


全ての指針が不規則に回り始める。

しかし、一見不規則に見えてそれは規則的。人間には知覚できないという。


『汝、神界に相応しい者であるか?』


『肯定する』


指針の動きが止まったかと思うと、次に時計から声がかかる。

それは魔力が乗せられた声で、並の者ではすぐに気絶するだろう。

現にフィルと葵は物凄い偏頭痛に襲われていた。


しかし、その声を物ともせずにシャイトは同様に魔力を乗せて答える。


『汝、それを証明してみせろ』


すると、突然禍々しい扉が出現。

神界へと続く道とは思えないような扉だった。むしろ、地獄への扉と言われた方がしっくりくる感じだ。


「シ、シャイト……その扉が……?」


「まあ、そうだな。正確には、神界へと続く道を守護するガーディアンのところまで行く扉かな……あ、めっちゃ危険だからここで待っててもいいけどどうする?」


「行くよ」


「もちろん行くよ」


シャイトの問いかけに二人とも頷き、扉の向こうへと一歩一歩踏み出す。

扉の向こうはトンネルのようで、ずっと先には外からの光が漏れている。


バタンッ


「ひっ……」


「あ、そうそう。その扉、勝手に閉まるから気をつけてね」


「先に言ってよっ!」


顔を真っ赤にしながらプリプリするフィルは中々可愛かった。



トンネルを抜けると、そこに広がっていた光景は闘技場のフィールドだった。


向こう側にはいかにもな守護者ガーディアンがおり、その目は青く爛々と光っている。


「うわぁ……最上位か……」


シャイトが独り言のように呟いた言葉に疑問を持った葵がなんのことかと質問すると、シャイトは丁寧に返してくる。


守護者ガーディアンにも階級があってな、下級、中級、上級、超級、守護級の五段階があってなその最上位の守護級なんだよ……今回は。まあ、正式には五等級、四等級、三等級、二等級、一等級に分かれてるんだがな」


「今回はってことは、ランダムで決まるの?」


「そうだ。完全にランダム制だ。まあ、下級でも七剣を圧倒するレベルだけどな。正直、守護級を倒せるかどうかわからん」


「え?倒さないと神界に行けないんじゃ?」


「そうだな。けど倒さなきゃいけないって決められてるわけでもない」


フィルと葵の疑問を解凍して行くシャイトだったが、最後の言葉だけはわからなかったようだった。

その言葉の意味をこのあと理解するのだが。



「葵とフィルは牽制。とにかく俺に意識を向けさせないでくれ」


「「了解」」


すでに守護者は動き出しており、こちらに小走りで向かってきているところだったので、素早くシャイトが指示を出しす。

葵は莫大な魔力量にものを言わせ、物量戦。

フィルはここ5年間で磨いてきた魔法と剣技の混合技術を使い牽制して行く。


二人に対しては格上の守護者だが倒すまではいかなくていいのだ。最低でもシャイトに意識を向けないようにするだけ。

それだけの簡単な仕事ならば格上相手でもなんとか戦いにはなっていた。


これが倒すまでいかなくてはならなかったのだったら、一瞬で負けていただろう。そう二人に思わせるほどの技量とパワーをこの守護者は持っていた。



一方でシャイトだが、こちらも集中していた。


もう二人には自分が長く長く生きている妖狐だと明かしている。

そのため、妖狐の力を全力で出すことができるのだ。あくまでも仮面をつけた状態での最高出力での話の全力だが。


すでにシャイトの顔には狐面がつけられており、麦芽のような金色の髪と二本の尻尾。そして、頭頂部からは狐耳がピョコンと飛び出していた。


そして、シャイトの呪文が口から紡がれる。


籠目籠目かーごめかーごめ夜明けの晩に鶴と亀が滑ったすーべった後ろの正面な〜にいろ』


実に不気味な声音で発された呪文はその効力を発揮する。


突然、虚空から九本の漆黒の直剣が現れ、守護者を取り囲む。

漆黒の直剣には宝石が付いており、それぞれが違う色を放っていた。


また、直剣からはシャイトが唱えた呪文と同じ言葉を機械的にかつ不気味に発された。

違う点を挙げるとすれば、最後のだぁ〜れの部分がな〜にいろになっていたところだ。


当然、声帯が発達していなく喋ることのできない守護者は答えることができない。


「………?」


しばらく沈黙の時間が流れ、何も起こらないことを不思議に思った葵が近付こうとした時だった。


『ぶぅーぶー』


不気味で機械的な音声が聞こえたかと思うと、次の瞬間には後ろにあった直剣の剣先が守護者の背中に向き、


ズプリ


深々と守護者の背中に突き立った。


勿論、守護者にこの程度の隙ありありの攻撃が通る筈はないのだが、この妖術のせいで対応ができなかったのだ。


そう、これは魔法ではなく妖術。

シャイトが、いや、妖狐がこの世界で最強の一角になっているのは妖術を使いこなせるからであろう。



そんなこんなで、全ての直剣が守護者に突き立ち、この戦闘の終わりを告げる鐘が鳴る。





さて、シャイトたちが神界の城に着くまで妖術の話でもしよう。


妖術は魔法とそう大差は無い。

自然の摂理に干渉し、自分が意図した現象を引き起こす。この点では二つとも同じだ。


しかし、妖術と魔法には決定的な違いがある。


魔法は自然への強制力は50%程。対して、妖術の自然への強制力は100%に近い。

勿論、魔法ですら魔力という代償を支払っているのだから妖術にも代償を支払う義務がある。


それは、妖力。


言葉的には魔力と同じような感じもするのだが、全然違う。

魔力は、自然界に存在する魔素を動物が取り入れ、特殊器官で魔力へと変換する。

そして、妖力は、自身のエネルギーを消費し、妖力へと変換するのだ。


まあ、簡単に説明すれば、魔力は自然回復するが、妖力は寿命を削り取って回復するものだ。


しかし、妖力というものを生成できるのは妖怪、怪異、怪物と呼ばれるものたちのみで、普通の人間には生成不可能だ。

寿命が永遠に近い妖怪や怪異は余り気にせずばかすか妖術を使うので、奇怪現象が起きる。

そして、奇怪現象が起こるところには妖怪や怪異がいるので騒がれるのだ。


それは置いといて、妖術と魔法の違いを簡単に説明すると、自然の摂理に干渉する力の大きさが違うということだ。

先に説明したと思う。


そして、妖術の干渉力が守護者が動けなかった原因でもある。



おっと、説明しているうちに城についたようだ。



城の外観は緑の白のハーモニーといったところか……

真っ白い大理石で作られた城に、木や、蔦などが絡み付いている。


イメージとしてはレガレイラ宮殿が一番似ているだろう。


周りには雄大な緑が広がっており、鳥の囀りや獣の鳴き声。水の流れる音に動物が動く音。

そこに一際目立つ大理石の城。


なんとも言えない癒しがあり、幻想的な風景が広がっていた。


城に近づくと、城門前が騒がしくなり始める。

それもそうだろう。この城に出入りしない人物が城に向かって歩いてきているのだから。


「警戒態勢!後方には魔法兵と弓兵を臨戦態勢で待機させろっ!」


隊長格と思われる天使が、下っ端天使に指示を出す。


そう、天使だ。


背中には一対の大きな純白の羽があり、頭の上には複雑な幾何学文字が乱雑に並ぶ光輪。腰には光で出来た剣、手に持っているのは光で出来た槍や弓。天使の想像図そのものだ。

全員がイケメンであり、美少女や美女。もう、なんかやばい。


シャイトたちが普通に話せる距離まで近づくと、警戒心をたっぷりと乗せた言葉を投げかけてくる。


「何者だっ!?場合によってはここで切るっ!」


前衛の剣士たちが抜剣し、後衛の弓兵や魔法兵たちが打つか前に入り、中衛の槍兵が剣士たちの合間から槍の矛先を突き出す。


「待て待て、落ち着け」


この張り詰めた場面にふさわしく無い声を発したのはシャイトだった。


「俺の名前は“沙羅双樹”この名前聞いたことぐらいあるだろう?」


シャイトの本名というか、昔の名前を聞いた兵たちは全員がほぼ同時に息を飲む。

そして、隊長格と思われる天使が一歩前に出て……


「誠に申し訳ございませんでした。“沙羅双樹”様御一行ですね?主人からは通すように伝えられております。私についてきてください」


先程の荒げた声はなんだったのかと思うほどの優しい声音と、この態度。

事前に通達されていたようで特に問題もなく中に入ることができた。

いや、問題がなかったわけでは無いか……。


城門を潜り、シャイトだけが真ん中を通る。他は右側通行をしている。

この城では主人、もしくは主人に認められた者しか真ん中を歩くことが出来ず、もし、真ん中を歩いてしまったら即死だ。

では、シャイトがこの城の主人に認められているのかと問えば“否”と答えるであろう。


主人が認めたわけでは無いが、歩けているのだ。

まあ、そこには諦めたというのが相応しい。幾ら即死性の魔法や呪術を放っても死にやしないし、挙げ句の果てには反撃までもされるのだから。


真ん中を歩けるのは、そんな理由である。


外は緑に溢れ、内は綺麗に整えられた大理石。そんな城内を天使の隊長格“ジョヘル”と名乗った天使の後についていき、荘厳な雰囲気を放つ大きな扉の前に来ていた。


ジョヘルの話によると、これから謁見の間にてこの城の主人が顔を合わせるのだそうだ。

この城の主人というのは勿論女神のことである。


扉は両開きで、横5メートル縦15メートルもある大きな物だった。

巨人でも軽々通ることができるだろう。

いや、そのために大きくしたとも考えられる。


「久しぶりだなぁ」


心の中で呟いたと思ったら口に出た。

ここに最後に来たのは千年以上も前の話で、よく覚えてないのだ。

そんなことを思い出していると、シャイトたちの正面にある巨大な扉が開かれる。


中に一歩踏み出すと、今まで見ていた景色が一変する。

中央には玉座へと続くレッドカーペットが敷かれており、両端には大量の柱。その柱一つ一つに紋章が刻んである。

謁見の間は薄暗く、それぞれの柱に取り付けられてある松明のみが光源となっていた。


玉座前まで来ると、突然部屋の明かりつき、謁見の間の全貌が明らかになる。

謁見の間には窓などは一切なく、密閉された空間で、現在の光源は柱に取り付けられている松明と天井付近に浮かぶ無数の光球だけであった。


そして、玉座には光の当たり加減で色が変わる虹色の豪奢なドレスを着た女性とその隣で氷の棺で眠っている女性がいた。

どちらも絶世の美女と言われてもおかしく無い美貌を持っており、肌が透けるように白く、触ってしまったらすぐに崩れそうな感じがある。


実際に触ったら崩れるのはシャイトたちなのだが……色々な意味で。


そして、シャイト以外の皆はその神々しさに気圧され、左膝を軸とした片膝立ちをしてから面を下げる。

この世界では右が神聖視され左はその逆と視られている。


使い分けとしては、王様や偉い人に対する時は右を前に出す。

悪魔召喚などを行う時は左を前に出す。

そんな使い分けだ。


「面を上げよ」


「(偉そうにしちゃって)で、何の用だ?」


シャイトはそんなことを言う女神・・を無視していきなり本題を切り出す。


「相変わらず……といったところね」


「で、何の用だ?」


女神からの世間話も突っぱねてあ本日二度目の本題を切り出す。

女神も何をいっても無駄だと判断したようで、一度ため息をつくと、本題を切り出す。


「この世界には昔、超古代文明が発展していたのは知っているでしょう?」


「巻物で見たからな」


葵たちはどうしたらいいものかとワタワタしていたが、危機に徹するようで、静かになる。


「そして、今“ベルミルム”と私が敵対関係にあり、もうそろそろ戦争になってもおかしく無い。さらに、今のところは私達が劣勢ということまではわかってる?」


“ベルミルム”とは邪神の名前だ。


「俺が仲間扱いになっているところと劣勢ということは初耳だな」


「あの子ったら説明してなかったのかしら……まあ、いいわ。この劣勢を回避するためには何が必要だと思う?」


「そこの女の能力」


そうしてシャイトが指差す先にいる女とは、氷の棺の中で眠っている女性。


「そう、この子の能力“森羅万象”が必要なの。で、そこでお願いなんだけど」


森羅万象とはこの世の全てを知る能力とでも言おう。

そして、シャイトの目の前にいる女神はシャイトの相槌を待つようにして黙る。


「なんだ?」


たっぷりと数十秒置いてシャイトが相槌というか、返答をする。

シャイトの返しが遅かったことでぐちぐちとブーたれる女神であったが、このままでは進まないと思い、ついにこの城に呼んだ理由を明らかにした。


「……この子の封印を解く鍵を取って来て欲しいの」



その後、謁見の間を出てシャイトは一人で廊下を歩く。

葵たちはそれぞれにあてがわれた客室で思い思いに過ごしている。では、なぜ一人廊下を歩いているかというと、今、シャイトの目の前にある扉の奥にその元凶がいる。


「ようやく来たわね」


「少しは休ませろよ」


シャイトが文句を言うが、その人物ーー女神は特に気にした風もなく、無視して、ここに呼んだ理由を話し始める。


「ありがとね、来てくれて。来ないかと思ったわよ」


「二、三年なんてどうってことねぇだろ。それで、なんなんだよ」


「そうね、さっきは封印を解く鍵を取って来て欲しいとしか言わなかったでしょ? その詳細を教えようと思ってね」


「ほう、それはありがたいな」


「で、その詳細なんでけどね……」


氷の棺で眠る女神の名は“イアリスト”

そのイアリストとは神話大戦で生き残ったうちの一柱。

あの状態で生き残ったと言うのかどうかは不明だが……、とにかく生き残った。


そして、イアリストがなぜあのような状態になっているのかと言うと、人間の仕業だ。

あれは神話大戦の時だった。


イアリストの領域に人類が大軍で押し寄せて来たのだ。

その数、実に宇宙船 軍艦型三千隻。人類はこれ程の軍勢を用意したのだから、神をも倒せると思っていたのだろう。実際に二千隻で一柱倒しているので油断もしていたのだろう。


イアリストは別段他の神とはなんら変わらなかったが、特殊な能力を持っていた。“森羅万象”。

全てのことを知ることが出来る物だ。

人類の油断を知ったイアトリスは反撃に移る。


人類軍の弱点をつき、奮戦した。

しかし、たとえ神でもここまで成長した人類には勝てなかったようで、引き分けに持ち込んだそうだ。


その引き分けの結果が、イアトリス封印と対イアトリス人類軍全滅。


「で、その封印を解くための鍵は人類軍の本拠地最深部にある“シールドコード”と言うものなの」


「で?」


その先を促すようにシャイトが言う。


「人類軍の本拠地は、アルシャファルにある【アメグルニス海溝】。あそこはマントルギリギリまでもあるとても深い海溝なの。本拠地にうってつけね」


「そこに潜って死んでこいと?」


さすがにシャイトでも水圧で潰れる。魔法や妖術で防げたとしても窒息死は必須だ。

魔力や妖力がなくなれば酸素も作れなくなるのだから。


「何バカなこと言ってるの?人類の本拠地だったのよ?空気くらいあるわ。問題はその警備なのよ」


女神が言うには、その人類本拠地を守る警備が問題らしい。

どう問題なのかと言うと、邪神が警備のセイフティロックを壊して人類の手から警備を解放し、それを暴走状態にしているそうだ。

邪神が手解きをしているので、女神が何かしようにも出来ないし、乗り込んでも警備に殺されるだけ。


そこでシャイトなのだそうだ。


「あなたは強い。多分、私が束になってもかなわないくらい強いわ」


「妖狐本来の力が発揮できればだけどな…………!?」


そこでシャイトは気付く。


「この頼み事を成功してくれた暁には、あなたの封印を解いてもいいわ。成功したらね……まあ、それまでは仮に封印を解く感じかしら」


「その頼み受けます」


即答だった。受けない理由がない。



そこからさらに移動し、現在シャイトがいる場所は城の地下研究所だ。

何を研究しているのかわからないが、イアリストが復活したら必要なくなるとのことだ。


そして、今何故ここにいるのかと言うと、


「乗り込む際にはこれを使ってもらうわ」


シャイトの目の前にあるのは、顔面のない機械で出来た身体。機械人間ヒューマノイド

この機体は神話大戦末期に作られた最新鋭機らしい。要するに、現存する機械人間の中で一番高性能な機体というわけだ。


機体の装甲は緋緋色金ヒヒイロカネ性で、反物質などを当てられない限りではそう簡単に壊せる金属ではない。

それに、装備もほぼ最強と言ってもいいほどで、

* ABアンチマタバレット(反物質弾)三千発。

* 通常弾五千発。

* 砲門・狙撃型一門、自動小銃型一門。

* 中型拳銃二丁。

* プラズマ発生装置。

* 高周波振動ナイフ二本。

* 高機動駆動。

* 耐熱耐寒±三千度。

* 吸着戦闘ブーツ。

* 仕込み高周波振動ナイフ両手足一本ずつ。

* 頭部情報処理端末。


あとは、宇宙空間でも活動可能なように噴射口も付いているが、今回は使わないであろう。


しかし、問題がある。


「これ、どうやって使うの?」


「私が大得意の“意思魔法”で、あなたの意識をこちらに移すわ。大丈夫よ、顔はあなたのが反映されるから」


「そこは別にどうでもいいんだけど、お前みたいな耄碌ババァに流せてもいいのかと不安なんだが……」


シャイトの耄碌ババァが気に入らなかったのか、額に青筋がビキビキと浮かび始める。


「まだ、お・姉・さ・ん・!」


「はいはい、わかりました。お姉さん・・・・?それで、この機体はこれ一つだけなのか?」


本当の問題はこれなのだ。

これ一機だけではシャイトしか海溝に潜り込めない。

この話をすれば絶対に付いてくるだろうと予測されるフィルと葵の説得がめんどくさい。


「それなら問題ないわよ。あなたが戻ってくるまで城で待機する約束を取り付けてあるから」


どんな魔法を使ったのかわからないが、すでに説得は完了しているらしい。なんて手際の良さだ。


(女神と自称することだけはあるな)


実際に女神なのだが……。



そうして、シャイトは女神の意思魔法で機体名“EGZ-20”第9世代型機械人間に乗り移るのであった。





場所は変わって、現在は大広間に来ていた。

千人は余裕で入れるような、学校の体育館以上の広さを持つ場所だった。


そして、そこに集まっていたのは、シャイト達三人に、女神と女神の護衛天使二人、あとは、天使執事と天使メイドが一人づつであった。

因みに、シャイトの身体は誰にも危害が加えられないようにシャイトが自分自身で封印した。


「それにしても、この身体凄いな……」


感心したように手をグーパーしながらシャイトが言う。


「一億年も前のだけど今現在では最強の機体だからね、大切にしてよ? あ、それと、それで死んでもいいとか考えないことね。本当に死ぬから」


「おい、聞いてないぞ……まあ、でも死ななきゃいいんだろ」


そんなことを話しながら、シャイトは装備の点検や、確認をしていく。

その過程で見た目ではわからなかった機能が発見できていた。


指の付け根から鉤爪のような刃物が出て来たり、肘内部に隠された短刀や、胸部の装甲を開けてみると、エネルギー砲を撃てたりと、規格外の装備を整えている機体だった。


しかし、機体に乗り換えて判明したことだが、妖術や魔法がこの機体だと使えなかった。

まあ、使えなくてもそんなものがない世界で生き抜いてこれたのだからその教訓を生かして戦えばいいことだ。


機体の点検を最終段階まで行ったところで、女神が【アメグルニス海溝】の入り口に転移口を開く。直径一メートルほどの転移口で人一人がやっと通れるくらいだ。


「海溝を100メートルくらい進んだら水が無くなり、空気が満たしている空間に出るわ。それに驚かないでね?そして、その空間に出たら自由落下をし始めけどどっかにつかまったりしないでそのまま落ちて。その機体であれば余裕だから。そうすると、広い大きな広間に出るはず。そこからはよくわからないのごめんなさい。けど、そこの広間は階層が約三千階層。人が住んでる居住域に入るのはそこからさらに二千階層したにいったところよ。肝心なシールドコードだけど、最下層にあるとしかわからないわ」


そこで、シャイトは気付く。


「え?人住んでるの?」


そんな質問をシャイトがすると、女神は馬鹿にするような視線をシャイトに向けて。


「そりゃあ生きてるわよ。殲滅したわけじゃないんだから。それに、その人達は不死の体を持った人達もいるから当然ね」


驚きの連続だったが、これ以上突っ込むとキリがないと判断し、さっさと別れの言葉を言ってから、転移口に飛び込もうとする。


「じゃあな。食料はこの身体だから必要ないが、食べたくなるもんだ。必ず帰ってくるよ」


「将来の旦那様がいなくなったら困るのよ。絶対帰って来てね?いつまでも待ってるから」


「あ!“いつまでも待ってるから”は私のセリフっ!とにかく待ってるからっ!待ってるからねっ!」


別れの言葉を交わしたシャイトは“んじゃ”と、軽く言ってから、転移口に飛び込んだ。


そしてその後を追う一つの光も転移口に飛び込んだ。


次から新しい章に入ります!


週一投稿ペースって遅いですかね?

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