表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖狐の異世界転生旅  作者: ポポ
第1章 死そして転生
19/50

魔法

よろしくです


天空城“ラピタ”に転移したシャイトは、窓の外の光景に一通り驚いたところで、エレノアに案内されて転移して来た部屋を出る。

これからこの部屋を“転移の部屋”と呼称しようと思う。


この建物はシャイトが思っていたよりも大きかった。

現在、地下の何もない施設内にいるのだが、転移の部屋からここまで五分かかった。


「この施設は何?」


シャイトが思ったことを口にする。

そんな、ストレートな言葉に気を悪くするでもないエレノア。逆にどこか嬉しそうだ。


「いやぁ、こんな気心の知れた感じで話すことができる人間はシャイトくらいだよ」


「で、ここは何?」


「おおっと、そうだったな。ここは全方位が吸魔石で固められた部屋、つまり、魔法の練習にぴったりな場所だよ」


吸魔石とは、魔法、魔術を吸収する石のことで、別名“魔導師殺し”とも呼ばれ、アルシャファルにその名を轟かせている石だ。

もちろん、そんな石なだけあって取れる量も少なく、お値段も馬鹿高い。


国が大枚をはたいても10キロ買えるかどうか……

そんな石が部屋全部に埋まっている。いったい幾つの国を潰したらこんな部屋を作れるのだろうか……?


まあ、とにかく、この部屋は魔法の練習や開発にはもってこいの場所だということだけ認識しておこう。


「というわけでだ。シャイト、今君が持てる最大火力の“攻撃魔法”と、防御魔法を打ち出してくれ」


シャイトはこくんと一つだけ縦に首を振り、両手を前に突き出す。


(俺の適正魔法属性はない……。ということは、だ。スキル欄にあった暗黒物質操作と魔素直接操作が俺が魔法行使を可能にしていたのだろう。

それならば簡単。地震の魔法属性さえわかってしまえばこっちのもんだ。暗黒属性とでも呼称しようか)


地球では、暗黒物質または、ダークマターと呼ばれるものだが、アルシャファルでの暗黒物質は地球の暗黒物質と全く同じというわけでもない。


アルシャファルの暗黒物質というものは無限のエネルギーを秘めており、どんな物質にも変身が可能だ。

例えば、暗黒物質(質量1グラム)から大剣を作り出すことも可能だということだ。


チートと言っても過言ではない。


何もない空間から(暗黒物質はあるが)金を作り出し、ガッポガッポ稼ぐこともできるのだっ!



「いきます」


決して大きくない声は、しんと静まり返った部屋に凛と響く。

全てを理解したシャイトの世界のことわりを捻じ曲げる光景は凄かった。


もっと何かいい表現の仕方があるのかも知れないが、書き表せない。


前に突き出された手に集まっていくのは、底の見えない闇を纏った霧のようなもの。渦を巻き、収束されていく。


黒とも漆黒とも表現しがたい色を放つ拳大の光球が眼前に浮き、そこからビーム。フォトンキャノンやレーンガンのような一撃。


光球から放たれた半径1メートル強のレーザーは、壁に大穴を開けて、空間に解けるようにして消えた。


素粒子までもを吸収し、破壊する魔法。光さえ飲み込む神殺しの一撃。

威力は見ての通り、絶大だ。

魔法位階に例えるとしたら第10位階魔法。世界最強の魔法となるだろう。


「えーっと、何これ?大金が一瞬にして消えたよ」


「“ディレイトキャノン”」


エレノアの疑問に端的に答えるシャイト。“ディレイトキャノン”。


「あ、後者は無視ね……まあいいんだけど。それにしても、“ディレイトキャノン”?削除砲?しかし、削除というのは、文章のある部分を削るということだ。この魔法のとこに文章があるんだ?」


「俺は、この世界そのものを文章と捉えたんだ」


シャイトのこの説明?だけでエレノアは理解してしまう。いや、誰でもできるだろう。


世界という名の文章。それを構成している文字という名の物質。

その文字を削る大砲という意味でつけた名前だ。


「じゃあ、次は防御魔法ね」


先程の神殺しの一撃を見ているにも関わらず、混乱していないところを見るに、エレノアは只の人間ではないのだろう。シャイトと葵は、会った時から人間を辞めた人外の何かだと薄々感じていたので、エレノアが混乱していないのには驚かない。

これが、フィルならば、何で驚かないのっ!?と心の中で叫んでいたことだろう。


シャイトは一度下ろした両手を再度前にかざして、集中する。

シャイトが集中し始めると同時に、大気中に散らばっている魔素が両手に集まり、可視化する。普段見えない魔素が、可視化するほど集まっているというのだ。どれだけの魔素が密集すればこんな現象になるのだろうか。エレノアにもわからない。


魔素の可視化で歪んでいた空間が、突如、巨大なルーベのようになる。


「こ、これは?」


またもや神話級の魔法が出たことに、さすがに驚かずにはいられなかったエレノア。言葉に詰まりながらも、この魔法の説明をシャイトに促す。


「スキルの魔素直接操作を使ったもの。魔素の結界と思ってくれた方がいいかな」


この魔素結界の最大の特徴は、“どんな一撃でも逸らすことが可能”という点にある。先程、シャイトが生み出したディレイトキャノンをも逸らす最強の盾ということだ。

もちろん、まともにディレイトキャノンを受ければ3発ももらわぬうちに結界は壊れるだろう。


通常の攻撃でも、第七位階魔法以下の魔法ならば、いくら攻撃を受けてもビクともしないだろう。


デメリットといえば、一度展開したら再度展開しない限り、その場からうごかせないこと。展開に時間がかかることの二つが上がる。


二つ同時の魔法使用を可能にしない限り、一対一の戦いでは使い物にならない代物だ。


まあ、逆にいえば、一対一でなければ、最強の盾として使えるのだから、デメリットとメリットを比べても、メリットが勝つだろう。

そう判断しなければ、シャイトがこの魔法を使っているはずがない。


「第十位階魔法を一発でも凌げる結界か………文句なしの第十位階魔法だな。凄いぞ、シャイト」


「………この程度か。まだまだだな」


最後に呟かれたシャイトの言葉は、その場にいたエレノアにも聞こえなかった。





そんな日々が怒涛の如く過ぎていき、【神山】に入ってから2ヶ月の時が過ぎた。

魔法技能ではエレノアの上を行くシャイト。エレノアがわからないところはシャイトが教え、シャイトがわからないところはエレノアが教え、という感じになっており、完全に師弟の関係ではない。


そんな暮らしをしているシャイトたちと比べ、フィル、葵、アリスの関係はどこからどう見ても師弟の関係であることがわかるだろう。

フィルや葵は、シャイトと違い、この世界は初めてだ。いや、記憶にないだけで二度目ということはあるかもしれないが(葵は確実)。


とにかく、【神山】という危険な土地で平和な暮らしを送っていた。





さらに、2年後。




シャイト、フィルの二人が12歳になり、葵が21歳になった。

葵の外見は、シャイトの記憶と変わらず、精神年齢だけが歳を重ねているようだ。“外見は”19歳のままである。


もちろん、エレノアとアリスも外見は歳をとっているようには見えない。実年齢を聞こうともしたのだが、25歳と言い張っていた。

実年齢を聞いたら凄いことになっているだろう。エレノアはもしかしたら、シャイトの精神年齢よりも上かもしれない。


シャイトの精神年齢……1500歳から数えていない。


いつものように、訓練を終えて、夕食の支度をしていた時だ。

すぐ近くに超重量の何かが落ちた音がする。


衝撃波と振動で、本棚にあった本は軒並み床に落ち、魔導具の魔球(電球)も、食器も、窓ガラスも、割れ物は全てが割れた。


夕食当番だったシャイトとアリスが外に様子を見に出ると、満身創痍の黒竜が倒れていた。

また、その黒竜の生死を確かめるためか、庭で、戦闘訓練をしていた葵と、フィルの二人が手に持った剣の剣先で、黒竜をつついている。


クレーターの中で死んでいるようにも見える黒竜。しかし、その黒竜の尻尾がピクリと動いたかと思うと、いきなり飛び上がり、警戒心と威嚇をたっぷりと乗せた唸り声を上げる。

とてもではないが、先程まで死にかけていた者には見えない。


「待て待て、落ち着こう。俺たちはお前の敵じゃない。わかったか?」


シャイトがそう声をかけるも、警戒心を解く気配はない。

当然だが……ここで、相手の言葉を鵜呑みにするやつだったら既に死んでいるだろう。


『我は、バハムート。それ以上話せというなら我を倒してからだ』


ドラゴンといっても、魔物が喋ったことに驚いていたシャイトだったが、黒竜……バハムートが攻撃態勢に入ったことにより、意識を戦闘に切り替える。


万が一の時のために、ポケットに突っ込んであったバタフライナイフを展開し、腰を低く構える。


一切無駄のない動きを見た黒竜は、先程までとは比べものにならないほどの威圧を放つ。

一連の動作から、シャイトが只者ではないとうことをバハムートは判断したのだろう。実にいい判断だが、最良の判断はここで投降することだろう。


バハムートが漆黒のブレスを放つ。

シャイトの《ディレイトキャノン》は深い闇を感じさせる黒だが、この黒は、絵の具で只々塗ったような黒だ。

しかし、それでも普通の人間ならばこれで消し炭と化すだろう。


ここにいるのは“普通”に入れていい人間なのか疑わしい者たちだが……いや、疑わしいじゃなく、入れちゃいけない人種だ。


それを証明するかのように、黒竜が放った漆黒のブレスを金色の結界が防ぐ。


フィルの《金色結界》だ。2年前のとは比べ物にならないほど防御力が上がっており、《ディレイトキャノン》を数秒でも防げる力がある。


《金色結界》にぶつかったブレスは、放射状に枝分かれし、周囲にある地面を吹き飛ばしていく。

草が燃え、地面が抉れ、焼かれていく。


そんな必殺と属されるだろう攻撃の合間を縫うようにして、進んでくる物体が黒竜の目に映る。


術式が刻印された弾丸だった。この術式は、相手のイメージを魔力に刷り込ませ、その魔力を弾丸に乗せることで、物理防御をされない限り、絶対に当たるという代物だ。


現に今も、弧を描くようにして飛んできた弾丸は、狙い違わずにバハムートの片目を貫く。


先程から攻撃魔法を打ちかましても全く痛みを感じていないようなバハムートだったが、流石に片目を潰されては痛いようだった。

そのお陰でできた隙に葵、フィル、アリス、シャイトの四人の攻撃魔法がバハムートに殺到する。


全ての魔法が、第五位階魔法に到達するほどの威力を持っており、致死性の一撃だ。

もっとも、黒竜からしてみれば、めっちゃ痛いだけで済むのだが。


葵の火炎で鱗が溶け、フィルの金属性魔法で鱗が溶けた場所を貫かれ、アリスの雷撃がバハムートを感電させ、シャイトのディレイトで両手を消失させられる。


白目を剥いたバハムートは糸の切られた操り人形のように、地面に倒れ伏した。


「…………ご飯まだ?」


そう言いながら外に出てきたのはエレノア。

ボロボロになって倒れ伏している黒竜は見なかったことにしたらしい。




その後、草原のど真ん中にある家に帰ったシャイトたちは、夕食を食べていた。

バハムートは、瀕死の状態ではあるが、まだ息はしているので、放置していた。シャイトとしては、死んでも死ななくても構わなかったからだ。

本音は死んで欲しかったのだが……竜の素材など滅多に取れるものではないし、高く売れるからだ。


まあ、そんなこんなでバハムートを放置していたシャイトたちだったが、唐突に屋根が吹き飛ばされる。

いや、消滅したという方が正しいだろう。

とてつもない熱量のブレスだ。


フィルがとっさに結界を張っていなかったらシャイト達も灰すら残らなかっただろう。


カチャリ


食器と食器がぶつかり合う音が聞こえたと思ったら、次の瞬間にはエレノアがいない。


そして、家の外で何かを殴る音が聞こえると、エレノアは律儀に玄関扉を開けて中に入ってくる。


しかし、エレノアが玄関扉を閉めると同時に、玄関扉は、壁とつながっている部分の金具が粉砕し、倒れる。


「はぁ……」


シャイトが溜息を吐くと、その口から黒い霧状のものが出て来て、家全体を包み込むまでに大きくなると、逆再生をしているかのように家が元通りになって行く。

暗黒物質を操作するスキルのおかげだ。


そして、そのまま何事もなかったかのように食事が進む。


誰も何も喋らないが、気まずい感じの沈黙ではなく、心地の良い沈黙。

誰も何も喋らない。


ただただ、食器の上によそられている夕食が消化され、時間だけが流れている。とてもリラックスできる空間が作られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ