再会 2
夜……既に街は静まり帰っており、街全体が眠っているかと思わせるほど静かだった。そして、その街には動く影が2つ。1つは表通りをゆっくりと歩く、夜の静まり返った街には場違いな少年。もう1つはシルエットからして女性の、素早く少年を追っている猫耳の少女。
【キューコスの街】で何かが始まろうとしていた。
少年が何の予兆もなく路地裏に入ると、猫耳の少女は慌てたように屋根の上を走り、上から覗くように路地裏を見下ろす。
しかし、そこに少年の姿は無かった。
猫耳をピクピクと動かし、周囲の音や、気配を探るが、先程の少年の気配も無ければ、呼吸音も足音もない。
その時だった。背筋に冷たい汗が流れ、肌が粟立った。
頭の中に警鐘が痛くなる程響い渡った。
猫耳の少女は慌てた様子でその場を離れようとするが、一歩遅かった。
少女の足が、脳の指示に従わずに動きを止める。
そして、そっと差し出された首筋に触れるナイフの刃。
「久しぶり。“葵”」
優しく少女の猫耳に囁くように紡がれた言葉。
その声を掛けられた少女は、恐怖するわけでも、畏怖するわけでもなく、“歓喜”した。
首筋に触れるナイフの刃など無視して、背後に振り向き、その力を利用してギュッときつくそれはもうきつく少年に抱きつく。
そして、今まで溜めてきた物を全て洗い流すように、泣き出した。
シン……と静まりかえり、どこか別世界な雰囲気を感じさせる街中に少女の泣き声が木霊する。
抱きつかれている当の本人は困ったような表情を一瞬だけ浮かべ、迷ったものの、バタフライナイフの刃をしまってから、抱きついてきた猫耳少女の頭を“我が子”のように優しげな手付きで撫でる。
その表情は、先程の鋭い目付きとは異なり、どこか暖かみを帯びていた。
15分程経ち、“葵”と呼ばれた猫耳少女が顔を上げると、自分を優しく包み込むように抱き締めてくれた少年は、クスリと笑った。
その反応に不思議がった愛は、そっと差し出された鏡に写る自分を見て、急いでそっぽを向く。目元を赤く腫らし、涙と鼻水でグチャグチャになった自分の顔を確認したからだ。
“恋心”を抱いてしまった相手にこんな自分の姿など見られて嬉しい女などこの世に存在しないだろう。
愛がそっぽを向いていると、少年に背後から抱き締められ、顔を無造作にハンカチで拭われた。
驚きながら驚愕に目を見開き、振り返ると、今まで絶対に見せなかった慈愛のこもった眼差しを向けてくる少年がいた。
「………誰?」
泣き声以外の第一声がこれだった。
少年は深く溜息をつくと、「俺だよ、俺」と言葉を放ったが、それに対する葵の反応はと言うと、
「オレオレ詐欺?」
なんとも言えない微妙な空気が流れるが、その空気を振り払ったのは、“娘”に疑われて一瞬放心していた少年だった。
「いや、葵のお父さんだよ。顔も声もなんか幼くなってるけど、よく見れば分かるでしょ?ましてや、葵にとってはその、毎回言ってた“パパビーコン”で分かるんじゃない?」
「確かに“パパビーコン”の反応はパパだけど、パパはこんなに優しく無かった……」
その言葉に“パパ”と呼ばれた少年は傷付いたのか、胸を押さえて呻き声を漏らしたが、なんとか自分で立て直し、口を開く。
ちなみに“パパビーコン”とは葵の野生の勘みたいなやつだ。意識していないと分からないので、先程までは分からなかったと言うわけだ。
「た、確かに、優しく無かったかもしれないけど……流石に傷付くよ。それに、この世界に来て大分長いこと愛がいない生活を過ごして俺も変わったんだよ?」
そう言うと、“パパ”と呼ばれた少年はムニムニと葵の頬を弄り始め、その行動が決定打となったのか、もしくは、再び“少年以外に教えたことのない”名前を呼ばれたことが決定打となったのかわからないが、とにかく、葵は少年を自分の絶大な信頼を寄せる自分の“父”だと認識したようで、再び抱きつく。
「これからはずっと一緒?」
少年の胸に顔を埋め、甘えるような声音で少年に問いかけると、
「絶対……とは言い切れないが、極力努力はするよ」
自分の“父”らしい答えを聞けたことで、更に安心し、少年の腰に自身の尻尾を巻き付けて離れないようにしながらそのまま寝てしまった。
やれやれ、と言うように肩をすくめた少年は自身に身体強化を施して、甘えるような顔で眠る葵を抱きかかえて自分の宿泊する宿に足を運んだ。
☆
翌朝
何故こうなったのか分からないような表情を浮かべるシャイトの姿があった。
それもそうだろう。昨日、唐突に自分の胸の中で眠ってしまった自分の娘・葵を自身の部屋のソファで寝かせたのだが、今は何故か自分の寝ているベッドに潜り込んで来ているのだから。
しかし、潜り込んで来ているだけならばこんなに動揺?はしない。
では、何故こんなにも動揺?を露わにしているのかというと、葵は真っ裸でいるからだ。
確かに、娘の愛は裸族だが、自分の前では流石に下着はつけていたのだが……考えても仕方ないか。
そして、救いなのは、まだ10歳というと幼い身体なので、朝の生理現象が起きていないということか。誤解されかねないからな。
カーテンの隙間から差す光に目を細めながら上半身を起こし、隣で寝ている葵を叩き起こす。
肩を揺らしながら声をかけると、その胸に実っている大きな果実がプルンップルンッと揺れるが、自分の娘だと自分に言い聞かせる。
「んぁ……?パパ?」
寝ぼけ眼を向けてくる葵に優しげな表情を返し、
「おはよう。隠したら?」
寝起き早々にそう言われ、何事かと視線を彷徨わせ、自身の状態に気がつくと、顔を林檎のように赤くして、急いでシーツで隠す。
「おはよう。そして、エッチ」
その言葉を掛けられた本人のシャイトはというと、頬を引き攣らせて怒気をはらんだ声音で返答する。
「そっちから潜り込んで来たんでしょ?何故、俺がエッチ認定?」
「責任取ってね?」
そんなシャイトの質問を華麗にスルーを決めた葵は、意味わからないことをほざく。
しかし、潤んだ瞳を上目遣いで見られているシャイトも、これ以上は無駄と判断し、先程の葵と同様にスルーを決める。
というか、もう既に父という立場で責任を取っていると思うのだが……。
スルーを決めたシャイトは、ベッドから降りて洗面所に向かい、顔と口内を洗う。(口内を洗う=歯磨き)
そして、自身がサッパリすると、葵の首根っこを掴んで強引に顔を歯磨きをさせる。
自分でやらせると手を抜くか、やらないかのどっちかだからだ。
まあ、葵も例に漏れず、猫という事だろう。水が嫌いなのだ。(飲む分には平気)
部屋の中にはシャイトの声と、嫌がる葵の声、外から聞こえてくる小鳥の囀りが響いていた。
春の陽気のようなのどかな風を全身で感じながら待ち合わせをしていた食堂に到着すると、既に全員が揃って降り、シャイトを待っていてくれたようだ。(気配)
ガチャリと妙に響く扉を開けると、案の定、シャイト以外が揃っていた。
しかし、いつもの様に朝の挨拶はなく、その代わりと言ってはなんだが、フィルと騎士6人の視線が愛と自身に突き刺さる。
それもそうだろう。絶背の美女と言われても疑いを持たれない様な容姿の葵と手を繋ぎながら入って来たのだから。
しかし、シャイトと葵は特にその視線に反応せず、どこ吹く風と木の葉の様に躱し、ごく自然と空いている席に着席する。そして、さも当然の様にシャイトの横に腰掛ける葵。
その修羅場?に関わりたくないのか頬を引き攣らせた店員と思われる人に何もなかった様に注文をしてから、シャイトは隣に座る葵の猫耳を優しく撫でる。
それが嬉しかったのか、頬を上気させた葵はシャイトにしなだれ掛かる。
その様子を見ていた全員が口の中に角砂糖を何十個も放り込まれた様な顔になる。
(勘違いされても仕方ないか……)
どうやってその誤解を解くかと迷っていると、フィルから声がかかった。
「彼女さん?」
「いやいや、1日で堕とせるなんてありえないからね?それから彼女じゃないし」
話のきっかけを作ってくれたフィルに内心、感謝しながら弁解を試みる。
しかし、そう簡単に行かないのが現実というものだ。
「彼女じゃないならなんなの?」
フィルから突き刺さる視線が痛い。幻肢痛というやつだな……シャイトはどうやってこの場を切り抜けるかと考えていると、葵が先程の約束も忘れて正直に話してしまった。
異世界から来たこと、シャイトも中身は異世界人だということ、父と娘という関係だったということ。
ちなみに先程した約束事とは、「説明がめんどくさいから異世界人だということは話さない」ということだったのだが……葵は言った直後に思い出した様で、「あっ!」と言いながら咄嗟に両手で自分の口を塞ぐ。かなり手遅れだが……超若年性アルツハイマーの疑いは晴れた様だ。
しかし、いきなり説明されて「はい、そうですか」と頷くフィルや騎士達ではない。と、思う。
「何か質問でもあるか?」という様に目線でシャイトが問うと、
「特に。ふーんって感じ」
予想外の返答がシャイトと葵にもたらされた。「えっ?ないの?」という様な表情を隠そうともせずに出していると、唐突に騎士の1人がクスクスと笑い始めた。
それにつられる様にして、みんなが笑い出す。何事かと目を細めていると、フィルから説明があった。
曰く、この世界で流れ人(異世界人)というのは珍しいが、いないわけではない。100年に1人2人いるかいないかの確率らしい……(周知されてるだけでも)
曰く、前世の記憶を持った子供が生まれることもあり、そこまで不思議な事じゃない。
曰く、シャイトの正体は薄々気付いていた。
さすが異世界、なんと言うか……なんでもありだな。薄々気付いていたなら教えてくれればよかったのにと言ったところ、
「シャイトが言ってくれるまで待ってた」
この世に存在している男なら幾らでも堕とそうな笑顔。直後、自身の胸が高鳴るのがわかった。
(……兄妹なのに)
シャイトがフィルの言葉の余韻に浸っていると、鎧下姿の女騎士の1人がいい感じになった空気をぶっ壊す。
「父娘、そして兄妹でなんて………アブノーマルっ」
独り言のつもりの様だったが、バッチリ聞こえた。どうやら空気が読めない感じの人間らしい。そして、空気の読めない人間は空気になる。
みんながその一言に一瞬硬直したが、直ぐに再起動する。
どうやらスルーしてくれた様だ。
その後はそれぞれ自己紹介をして行き、空気が戻ったところでタイミング良く注文した料理が運ばれて来た。
しかし、ここまで話が通じる人間達だったとは……拍子抜けである。もうちょっと質問責めに合うのかと思ったのだが……。
たわいのない話をしながら朝食をとっていると、シャイト達から最も遠い場所で騒ぎが起き始める。
「なんだぁ〜?この店はこんなまずいもん出してやがんのか?あぁ?」
シャイトが視線を向けると、如何にもチンピラです。といった服装髪型をした男と、その周りに付き従う小物が店長と思われる人にいちゃもんをつけていた。
絡まれている店主はとても困った様な表情をしており、どこかに助けを求めるようにオロオロと視線を向けて、シャイトとバッチリ目が合った。
面倒事は嫌だ。とでも言う様に舌打ちをしてから料理を食べ始めると、その様子を見ていたチンピラが何を勘違いしたのかシャイト達がいる方向に足を進める。
「おい、ガキ。なんか文句でもあんのか?」
シャイトの額に青筋が浮かぶ。
シャイトの表情を見て、これはヤバイッと思った食事をとっていた他のみんなは、一旦動かしている手を止めて、机と椅子を移動し始めた。
その行動を訝しげに見ていたチンピラは、次の瞬間には床に仰向けに倒れ、首筋にフォークの先端が突き出されていた。
もちろん、シャイトがフォークを突き付けている。
「食事中。騒ぐなら外でやれ」
一連の動作を見ていたチンピラは物凄い勢いで頭を縦に振る。
シャイトが馬乗り状態から姿勢を崩し、逃げるように去っていったチンピラを尻目に元の席に座ると、机を戻して来た。
「やっぱ、パパは凄いよ。私なんて足元にも及ばない」
机を戻し終わり、葵が開口一番にそう言うが、シャイトの反応は、
「謙遜してるのか?足元には及ぶだろ。胸元くらいじゃないか?」
といった感じだった。その言葉に一番に反応したのはフィルで、「そんなに強いんですか!?」と、瞳をキラキラと輝かせながら身を乗り出す。
いきなりの反応にビックリした葵は上半身を仰け反り、目を見開いている。
「予備動作が無かった。凄い」
フィルの質問を華麗にスルーし、自身の感想を述べる葵。そんな朝から賑やかな席に店主がやって来た。
「いや〜、先程はどうもありがとうございました」
片手を頭の後ろに回し、ポリポリと掻きながら頭を下げて来る店主に「別に良い。彼奴らが絡んで来たからやっただけだ」と言いながら手をヒラヒラさせるシャイト。そんなシャイトに店主は、「せめて、御礼くらいさせて下さい」と言ってきたのを聞いたシャイトの腕が一瞬止まり、
「じゃあ、今回の飯代無料っていうのは?」
顔を店主に向けて提案する。提案された店主はというと、人の良い笑みを浮かべて快く了承してくれた。
その光景を見ていたフィルや騎士達は、「そこは遠慮するところでしょ」と目線で訴えかけてきたが、これまた目線で、「御礼をしたいって言ってきたんだから、ここは乗って置くべきだろ」と返す。
そんな目線だけのやり取りをしていると、シャイトの袖がクイクイと引っ張られたので、シャイトが目だけで確認すると、上目遣いでちょっと不貞腐れた葵がいた。
なんとなくその心情を理解したシャイトは、自分では最適だろうと思った言葉を口に出す。
「葵以上に信頼している奴はいないよ」
そう言いながら頭を撫でてやると、葵はポッと顔を赤くして俯いてしまう。突如発生した桃色空間に取り込まれた周りの人はと言うと、フィルは何故か羨ましそうに、騎士達はもっのすごく甘い物を食べたような表情になった。
まあ、シャイトはこの桃色空間を自覚してないか、自覚していたとしても、家族愛から来るものだと言い張るだろう。
そんなこんなで、朝食を済ませ終わり、街をぶらついていると不意に声をかけられた。
「あ、あの!」
女の子の声だが、シャイト達は自分達にかけられた言葉だとは微塵にも思っていないので、意図的にではなく無視すると、今度はシャイトの肩を叩きながら声をかけられた。さすがに肩を叩きながらだと自分に声をかけられたと自覚するだろう。
「あ?」
チンピラのような声で、口にフランクフルト擬きを加えながら振り返ると、そこには満面の笑み、憧れのハリウッドスターにあったような眼差しを向ける齢15歳くらいの少女がいた。
少女の腕の中には「キュウ!キュウ!」と鳴くチビドラゴン。
(は!?ドラゴン!?)
外見には微塵も感じさせず、内心で盛大に驚くシャイトを尻目に、葵が話かける。
「何か御用?」
膝を少しだけ曲げ、少女の目線に合わせて微笑む葵の姿はまるで聖母のよう。しかし、この姿は外用。この姿に惚れる物は多いが、また別の姿を見て失恋するものは多い。
そして、この少女も同じだったようで、外用葵を見た少女は「お姉様」と呟いている。それまた別に、フィル達は初めての外用葵を見て表情を隠しもせずに、盛大に驚いた表情をしている。
外用葵に見惚れていた少女は、再度問い掛けられはっ!と我を取り戻すと、当初の用を思い出し、持っていた肩掛け鞄から短剣を取り出した。
その行動を見ていたフィル&騎士達は即座に剣の柄に手を添えるが、シャイトが手を挙げて抜剣を止める。殺気や害意などが微塵も感じなかったからだ。そして、止めたのは正解だったようだ。
「サイン下さい!七剣のシャイト様ですよね!」
そう言うことらしい。
しかし、この世界のサインの仕方など全く知らないシャイトは騎士達に視線を向けると、騎士達はジェスチャーで伝えてきた。どうやら魔法で剣身に名前を掘るらしい。
理解したシャイトは周囲から魔力を書きたい文字の形に集め、圧縮。判子を押す様にしてやる。
そうして出来た剣身には英語の筆記体で書かれた(プレス)サインだった。この世界の文字よりも英語の筆記体の方がカッコ良かったという理由しかないが。まあ、いいだろう。
ふと、疑問に思ったことを口にする。
「あれ?でもなんで僕が七剣だってわかったの?」
シャイトが子供モードで問いかけると、ドラゴンと思われる従魔を抱えた少女は、なんでそんなことを? と心底不思議に思う様に首を傾げた後、口を開く。
「冒険者ギルドでは結構有名ですよ?顔も割れてるし」
だ、そうだ。シャイトは深く深く溜息を吐くと、「じゃあ」と言い残して去って行く。その後ろを珍しい物を見た時の表情でついて来る葵と呆れ顔のフィル達、&先程の少女。
「なんでついて来るの?」
「いや、旅をするならお供しようと思いまして。ダメですか?」
瞳をうるうるさせ、上目遣いで見て来るのはかなり破壊力があるが、それは一般人の場合。シャイトのこころは既に一般人を超えているため、そんな可愛くしたって無駄だ。
「ついてくんな」
「それでもっ」と言って付いて来たので、シャイトは逃げるために足に力を入れるが何を察知したのか、「はっ」という効果音がつきそうな感じで足に飛びついて来た。
「離れやがれよ」
ゲシゲシガシガシと空いている足で少女の頭を足蹴にするが、少女は一向に引かない。葵はその光景を額に青筋を浮かべた。静観を決め込んでいたのだが、流石にここまでしつこいとそうは行かないらしい。
「ちょっとあんた。私のシャイトに何する気?」
怒気を孕んだ声音に一瞬ビクッとした少女だったが、それでもシャイトの足を掴む手を緩むことはなかった。その事に更に怒気を膨らませる葵だったが、すぐにその怒気は収まる。原因は葵の肩に置かれたシャイトの手だった。どこか諦めた様な雰囲気を醸し出して。しかし、シャイトは葵の気持ちを読んだ様に、
「あり得ない」
そう一言だけ呟き、次の瞬間にはバタフライナイフの刃が少女の首筋にあてがわれていた。
「この場で死ぬか諦めるかどっちがいい?」
自分の主人が危険と判断し、キュウキュウと鳴くミニドラゴンだったが、シャイトが視線をミニドラゴンに向けただけで大人しくなった。それどころか、少女から一旦飛んで離れて少女のそばに着陸すると、「どうぞどうぞ」と言うように、自分の主人を差し出して来た。
「見捨てるんですかぁ!?」
少女が泣きながら問うと、ミニドラゴンは「しょうがねぇな。自業自得だ」とでも言うように肩をすくめて首を左右に振った。少女はと言うと、「そんなぁ!」と言って泣きべそをかくばかり。流石に周りの視線が痛くなって来たシャイトは溜息を吐くと、バタフライナイフの刃をしまい、突き放すように言った。
「失せろ」
しかし、少女はこのままでは追われないようで、「せめて名前だけはっ」と言ったが、シャイトはそのまま去る。
「ミリウム・サムルです!覚えといてくださぁ〜い!!」
シャイトはそれに片腕を上げるだけで答えた。




