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妖狐の異世界転生旅  作者: ポポ
第1章 死そして転生
12/50

反逆の狼煙

カウンターの前に来ると用事を聞かれたので、通帳とハンコを取り出してから答える。


「お金を全ておろしに来ました」


「はい?もう一度よろしいでしょうか?」


「お金を、全て、おろしに、来ました」


了承の意を示した銀行員は奥に引っ込んで行き、慌てて戻って来た。


「こ、こここここちらに記載されている額を全てですか?」


額に汗を浮かべて噛み噛みながら聞いで来る銀行員にコクリと少女が頷くと銀行員はもう一度確認してほしいと、通帳を渡して来る。


少女と眼鏡が通帳を覗き込むと、先程まで6千万だった金が68億8千万に膨れ上がっていた。


目を丸くして2人が通帳に見入ってると、奥からこの騒ぎを聞きつけたらしい男の人が出て来て、今まで対応してくれていた銀行員を下がらせて自分が前に出て来た。


「お客様、ご迷惑をおかけしたでしょうか?」


少女は瞬時に切り替えて、先程までの動揺を表に出さずに返事を返す。


「いや、金を全部引き落としたいのだけど」


そう言って少女が通帳を男の人に渡すと、男の人も驚きを隠せず驚きに固まる。

固まっているのを見た眼鏡が「まあ、そうなるわな」と言っているが、少女が気にしている素振りは全くない。


「で、早くしてほしいんだけど」


「お、お客様。額が額ですので……」


それを聞くと少女は、どうすればいいのか尋ねるような視線を眼鏡に向ける。

その視線を受けた眼鏡はわざとらしく肩をすくめて「助けてって素直に言えばいいのに」と周りに聞こえない声で呟き、続ける。


「じゃあ、誰かに振り込みは可能ですよね?全額」


「可能ですが、1日の振り込み可能限度額が指定頂けていないので、百万円までとなっているのですが」


「今、指定することは可能?」


「も、もちろん可能です。ですが、指定していただいても、3千万が最高です」


「しゃーないか。じゃあ、それで」


「かしこまりました」


そういって奥に男の人が引っ込んでいくのを見送った眼鏡は、隣から感じる視線の主人に眼を向けると、感心したような目で見られており、逆に恥ずかしくなる。


「や、やめろよ。いつもの子猫ちゃんの方がいいよ」


「子猫ちゃんゆうなし。それと、さっきはちょっと感心した」


「ちょっとぉ?もっと褒め称えてくれてもいいんだよぉ?」


「うるさい。クソ眼鏡」


「そうそう、それでなくっちゃ。あ、あと、子猫ちゃんが人と話すことあるんだね。人前ではあんなにいい子なのに……はっ!もしかして、こういう態度を取るのは私だけ!?と、いうことは、それだけ心を開いてくれてるということ!?」


「それは絶対にない。それから、人前で猫被るのは当然」


「じゃあ、子猫ちゃんはお父さんの前でも猫被ってるってこと?」


「違うし、あれが素だし」


「ふ〜ん……じゃあ、この態度も猫被ってるってこと?」


「あ〜、もう、うっさい!黙れ!」


「キャー、コワイコワイ」


「ぶっ殺す」


眼鏡が棒読みでそう答えると、少女は瞬時に殺気を発したが、人前だということを思い出して、これまた瞬時に殺気を殺す。

ちょうどタイミングよく?男の人が戻って来て、手続きを済ませたあと、ATMに向かい、ある口座に早速、振り込む。


この口座を知っているのは世界中調べても100人もいないだろう。


簡単に説明すると、この口座に振り込むと、裏のショッピングサイトで使うポイントが手に入るのだ。

普通は現金手渡しなのだが、選ばれた人間だけ知っているというわけだ。


ポイントで何を買うかなんて、もう分かっていると思うが、法に触れるものばかりだ。

安全?な物はたまに、法に触れないものがあるかなぁ〜って程度に少ない。


それはともかく、眼鏡が振り込みを完了すると同時に、少女のスマホに一通のメールが届く。


内容は簡潔で、


『3千万の振り込みを確認しました。

3千万ポイントの利用が可能になりました。


・死の商人・


隣から覗き込んでいた眼鏡が「悪趣味ぃ〜……うげぇ」などと言っていたが、少女は気にすることもなく、何事もなかったかのように銀行から立ち去る。

実際、何もなかったが……


帰る途中にお金が膨れ上がっていた理由を話し始めたが、2人とも誰が原因なのかは予想がついている。



そして、毎日、死の商人宛に3千万を振り込み、全てを振り込み終えた頃には、コンテナの内装やトラック本体がとんでもないことになっていたが……気にしないようにしよう。

多分、気にしたら負けだ。


少女はそういう結論に至った為、素直に受け入れる。


具体的にどんな進化を遂げたのかというと、トラック本体は常識の範疇に収まり、タイヤ、フレーム、ガラス部分が全て防弾なだけ?だが、コンテナは防弾やインターネット環境は勿論のこと、迎撃システムも半端じゃなく、市街地を行くイージス艦と言っても過言ではないだろう。

まあ、この改造費用だけで10億円かかっているから当然の結果といえばそうなのだろう。


また、残りの58億8千万円は全て人件費、武器弾薬、移動手段にほとんどが消えている。

全てではないのは食費として必要だからだ。


「やっぱり日本に武器弾薬を密輸となると高くなるわね」


「しょうがない。銃刀法、厳しいから」


「ま、頑張りましょ」


眼鏡がそういうと、少女はコクンと一度だけ頷き、自分が選んだ銃器の手入れを始める。


「私は作戦の最終確認でもしましょうかね」


眼鏡は両手を上げて、身体をほぐすように伸ばすと、コンテナの中に消えていく。





準備を始めてから約半年が過ぎた終戦記念日。


この日は作戦決行日だ。


「眼鏡、趣味悪い」


「しょうがないじゃない。この日が1番、適してるんだから」


蝉の音が鳴り響く街。この2人とその他襲撃犯を乗せた10トントラックと高機動車10台は現在、警視庁を包囲するように配置されている。


コンテナの中、眼鏡は右耳につけたインカムのマイクに向かって口を開く。

しかし、いつもと違った、仕事専用の口調で。


「作戦決行時間まであと15分。各自準備を始めろ」


『関東勢了解しました』


『近畿勢了解しました』


『東北勢了解しました』


『四国勢了解しました』


『中国勢了解しました』


『九州勢了解しました』


『北陸勢了解しました』


『北海道勢了解しました』


眼鏡が命令を出すと、コンテナの中に設置したスピーカーからそれぞれの了解の意を示す言葉が返ってきた。


「ねぇ、今回の作戦でどれだけの人員注ぎ込んでるの?」


「はぁ、子猫ちゃんのお金なんだから把握しときなさいよ」


「で、どれくらいなの?全国にばら撒いてるなら相当なんだと思うけど……」


眼鏡はコンテナの壁一面を埋めるパソコンに戦力を映し出しながら答える。


「約2500人よ」


「今までで最大規模だよ……それで、この戦力図が今回の戦力?」


「そうよ。無人戦闘機6機、人員2500人、銃火器も人数分、それから高機動車が500台ってとこかしら」


「そ、そんなにお金、あったっけ?」


「あるわけないじゃない。貰ったのよ」


とても悪い顔で振り返る眼鏡は心底楽しそうな表情を浮かべていた。


「さ、子猫ちゃんも自分の身支度整えなさい。楽しくなるわよ」


少女は呆れ顔を浮かべながら身支度を整える。

いつもの戦闘服と違う所は首から胸元にかけて陽光を反射して光っている“猫のネックレス”だけだった。


『作戦開始3分前。各自配置につけ』


右耳につけたインカムから眼鏡の声が聞こえてくる。


少女の任務は警察庁を内部から混乱させること。また、出来る限り内部にいる戦闘員を殺し、味方戦闘員の負担を軽減すること。


作戦を頭の中で復唱しながら時間が過ぎるのを待つ。

すると、インカムから眼鏡の作戦開始のカウントダウンが聞こえてきた。


『作戦開始まで、10、9、8、7、6、5、4、』


胸の高ぶりが抑えられなくなる。


『3、2、』


包囲するように位置どりをしていた『疾風』と呼ばれる高機動車が一斉に警視庁に向かって走り出す。


『1、0、爆破っ!』


ドゴオオォォォオオオンンッッ!!


爆発の音で戦いの火蓋たが切って落とされた。


警視庁のいたるところから炎と黒煙が上がり、瓦礫が落ちてくる前に突入する。


正面ガラスを割って高機動車10台が一斉に警視庁内に入ると、先程の爆発音と火災報知器のサイレンで戸惑っている警察官や一般市民が目視できる。


高機動車が乗り込んできたことで一層戸惑いを浮かび上がらせる人達を無視し、高機動車に搭乗していた戦闘員は素早く降り、無差別乱射を開始する。


エントランスで立っているものが自分と味方だけになったのを見計らい、作戦通りに動く。


武装戦闘員は素早く上層階へと移動し、少女が向かう先にあるのは警察特殊部隊(SAT)がいる所である。


少女の猫耳が数度ピクピクと動くと、少女は懐にある中型自動拳銃を取り出し、安全器を解除、遊底をスライドさせ弾を装填、最後に撃鉄を起こして、通路に銃口を向ける。


そして、耳を器用に伏せてから発砲。


ダァンッ


少女が発砲すると脳天を打ち抜かれ、瞳から光を失っている身体が廊下に転げ出る。


転げ出ると同時に「ひっ」という驚きと恐怖が入り混じった声が曲がり角から漏れ出した。


もちろん、少女の耳はその声を聞き逃さない。


「数は………いっぱいってところ?」


少女が呟くと常人の視力ではわからないほど小さなカメラが、地を這いつくばるようにして出てきた。


殺し屋である少女はすぐにそれを見つけて、2発目の弾丸を銃口から送り出し、破壊する。


SAT側に少しだけ……ほんの少しだけ、隙が生まれたので、疾走し、バク転しながら足先で殺した人が持っていた自動小銃を引っ掛け、手元に引き寄せる。


その際に目に映った隊員は全て死んでいるか重傷を負っているだろう。


流れるような動作で中型自動拳銃の弾丸を再装填させると、一旦懐にあるショルダーホルスターにしまい、手元に引き寄せてあった自動小銃の安全装置を解除してから、曲がり角に向かって乱射。


全ての弾丸が壁に当たっているが、聞こえてくるのは弾丸がはじき出される音、弾丸が壁に当たる音、そして最後に、弾丸で身体を穿たれた時に出る人間の呻き声だった。


なぜ、呻き声が聞こえるかというと、とても簡単だ。

ただ跳弾させただけだ。


自動小銃の弾倉の中身を全て曲がり角に撃ち込み終えたら、鏡を使い、立っている者を確認する。


立っている者は2人。その何れもが戦意喪失している。


ここで活かしていてもこちらには全く利益にならないので、念のために殺しておく。


廊下を埋め尽くす屍の上を歩く少女は、異様な雰囲気を放っており、さながら、白い魔女……いや、白い鬼のようだった。





少女が特殊部隊と遭遇した頃のコンテナ内。


「今のところは順調ね」


キーボードの上を縦横無尽に指が駆け巡る。


コンテナ内を埋め尽くすディスプレイはそれぞれが違う画面を映し出していて、飛行映像が6画面、全国の県警のマップ映像が47画面の合計53画面がそれぞれ違う映像を映し出し、コンテナ内を照らしている。


これだけの情報量を1人の人間の脳によって処理され、命令しているのかと思うと常識では考えられない。

額に大粒の汗を浮かべながらタイピングをしていると、スピーカーから声が漏れてきた。


『こちら千葉県警襲撃部隊。空爆援護を要請します』


「自衛隊機を落としてから向かう。少し待て」


『了解しました』


今現在、眼鏡が操縦する無人戦闘機は航空自衛隊のF-15に追われてていて、苦戦しているところだった。


「っ!……しつこい男は嫌いよっ!」


ドックファイトで無人機と有人機では差があり過ぎる。

不利を感じていた眼鏡は一旦領空から脱出。


旋回して撃ち墜とそうかとも考えたが、敵機が未だ警戒しているのでそれは無理。しかし、既に、ロックオンはされておらず、ケツにもつけられていない。


「ふっ!私相手に甘いわぁ!」


眼鏡が怒鳴ると同時に2機の無人機は旋回。

もう一度領空内に侵入。すぐさま自衛隊機に追いかけ回されケツに付けられるが……


「左捻り込みぃぃぃいいい!!」


左斜め宙返り。


そうするとあら不思議。なんと無人機が自衛隊機の後ろにくっついてるではありませんか!


眼鏡の口元が、口裂け女のようにニヤリと吊り上がり、


「しぃぃいいねえええぇぇぇええ!」


キーボード上のエンターキーが勢いよく押されると、無人機に備え付けられた機関銃が火を噴く。


自衛隊機の両主翼が燃え上がり、パイロットが脱出。

戦闘機は海上で盛大に爆発した。


また、パートナー機も同様に別の無人機に撃ち落とされていた。


乱れた眼鏡の位置を整えて何事もなかったかのように立ち、


「ふぅ……切り抜けたけど、これで本格的に自衛隊が動くだろうなぁ……」


最後に面倒臭さを隠しもしない溜息を深く深く吐く。


「子猫ちゃん。そっちは終わった?」


そして、少女に問いかけるのだった。


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