店員さんと魚
次の話からは三人称視点です!!!
かなり読みやすくなると思います!
早速、魔族に気付かれないように作戦とも言えないような話し合いを行い、どう行動するかを決める。
「どうする?適当に包囲して攻めるか?」
「それは一点集中攻撃をされたら危ないので、僕が魔法で4当分に分けます。その後は適当に攻めてください」
「適当って………それ、作戦なのか?」
「……気にしない気にしない」
そんな、これから危険地帯に踏み込もうというのにかる〜い話し合いをしてから、魔法行使の為に周囲の魔力を集める。
魔族は魔力の流れに敏感なので、魔族が気付かない程遠いところにある魔力を大量に集めてイメージを固める。
土が壁のように盛り上がり、それを錬金術を使い金属にするような、そんなイメージ。
イメージを固め終えたら、魔法式に変換し、周囲に待機させていた魔力に魔法式を組み込む。
魔法式を組み込んだ魔力は地中を潜るようにして、魔族を4分割するような十字の線を描く。
さすがに魔族も気付いたようで、その“発光”する十字線を消そうと必死になっているが、ただの魔力ではなのでそんなことでは消えない。
もし消せるとしたら、俺より強い事象変換能力を有した魔法使いが無理矢理消そうとするか動かそうとしなければならない。
だが、そんなことをできるのはこの世に数人いるかいないかぐらいだろう。
そのくらいの自信はある。あり過ぎてもいけないのだが……
そして、魔族達から目を離さないでいると、
まるで一生懸命消そうと努力していた魔族達を嘲笑うかのように、とてつもなく強力な事象変換が黄昏色に染まっていく空に向かって発動される。
地面が光っている部分に沿って、高さ約五メートル、傾斜角89度のほぼ直角の十字の壁が魔族三体を巻き込みながら、天をも突き破らん勢いで三次元世界に姿を現わす。
黒く、周りを威圧するような光沢を、そして、表面からは小規模な“雷”を放つ。そんな絶対強者のような存在の壁は魔族達を次々と感電死させていく。
まるで、アリを踏み躙る子供のように……
運良く雷が直撃しなかった魔族は混乱しながらも仲間達と合流しようとするが、無色透明な壁によって阻まれる。
騎士の1人が俺に向かってサムズアップしてくるので多分あの人の仕業だろう。
助かったのでサムズアップしておく。
しかし、俺は雷などイメージしていない。とすると、あれは自然現象で起きたことになるのだろう。
だが、雷の発生する条件というのは雲の中の筈。
そんな考えに思考が偏っていったのだが、頭を左右にブンブンと振り、戦闘態勢に切り替える。
再び魔族がいた場所に視線を戻すと、いつの間にか巨大な漆黒の壁は消えており、地面には焼け焦げた魔族の焼死体が8つ転がっていた。
真っ黒になり、身体には亀裂が入り、そこから黒い煙が天に向けて登っていく。
この光景は予想外だった。
雷が起きて魔族が炭のようになったこともそうなのだが、周囲が高温になっておらず、しかも、衝撃波がないということにもだ。
簡単にいうと、雷の周囲は一瞬だけ超高温になり、約2万度〜3万度。その影響で急激に空気が膨張し衝撃波が伝わり音が鳴るのだが、それが全くないことで驚きが隠せないのだ。
温度も高くなければ、戦闘?時に全く衝撃波が伝わってこない。
自然現象じゃないのか?それとも魔法の影響で雷が発生したからか?
今すぐに思考の海に潜り、仮説でもいいから立てたいものだが、現状そうも言ってられない。
魔族の死体をどうにかしなくてはならないのだ。
魔族の死体?
もう一度、現場をよく確認する。
“黒焦げの死体”、壁のせいで出来た十字状の盛り上がった土、そして“何の影響も受けていない周囲”。
黒焦げの死体?何も影響を受けていない周囲?
またもや疑問が発生したが、それは頭の隅に置き、今夜考えることにした。
どう魔族の死体を処理しようか迷って、頭をひねっていると俺以外の人達が魔族の死体を適当に地中に埋めていく。
「え?そんな適当でいいんですか?」
そんな疑問を俺が口に出すと、騎士の1人が、「他にどうするんだ?」と、本当にわからないような表情をしながら困った顔を俺に向けてくる。
いや、なんか細菌が繁殖しないようにとか、アンデットにならないようにするとかさ……
そんな俺の心中を察したかのように、別の騎士の1人が俺の疑問を解消してくれた。
「こんな欠損状態じゃあ、アンデットにもなれやしねぇし、誰かさんが芯まで焦がしてくれたおかげで病も広がったりしねぇだろうよ」
そのあとは、俺も加わり、全ての死体を埋めてから、急いで狩の続きをする。
今日の戦果はワイルドボアというとっても美味しい猪(魔物ではない)を一体狩ることができた。
そして、帰路につこうとした時にふと星輝く空に視線を移すと、月が頂点に登ろうとしているところだった。
☆
俺ら5人は今現在、女3人に向けてワイルドボアを手で持ち上げながら土下座をしている。
ことのあらましを説明すると……
俺たち5人は月が頂点に登ろうとしているのを視ると、目配りもせずに竜車が置いてある方向に全力ダッシュ。
そして、俺が提案したスライディング土下座で許してもらうことを話し合い、現在に至る。
「すいませんでした!」
俺が代表して謝ると、フィルが俺の前で仁王立ちし、物凄い不可視の圧力で俺を射抜きながら「言い訳聞いてあげる」と一言だけ発したので、騎士の1人が、弾かれたように言い訳を始める。
「そ、そのですね。魔族がーー」
「シャイトに聞いたんだけど」
言い訳を始めた騎士の言葉を遮り、俺の前に屈んだ後、空気を凍らす勢いの冷たい声音がフィルの口から放たれる。
「ねぇ、お腹空いたから、さっさと喋ってくんない?」
俺は、額から大量の冷や汗をかきながらも、まだ死にたく無いのでフィルの目を見ながら答える。。
「ま、魔族がいたから、殺したら以外に時間食っちゃって、手ぶらで帰ると怒られると思ったから獲物を探してたらこんな時間になってしまいました」
「魔族がいたから殺したって……ただの殺人だよ?それ」
「魔王派で武装もしてたから……殺人じゃないと、思います……きっと……多分……そうであってほしい」
徐々に声がちっさくなって行ったが………まあ、気にしないことにしよう。気にしても特に何もないからな。
その後も、俺と騎士達で必死の事情説明を終えて、なんとか納得してもらったところで、とっても遅い夕食を作り始める。
この説教の時間の方が無駄だったんじゃ?
そんなことが頭に浮かんだが、言ってしまうと今度こそミンチにされるので、脳内ゴミ処理場に放り投げてから、夕食の手伝いに取り掛かる。
といっても、ワイルドボアを捌くだけなのだが……
そして、苦労して準備した夕食の題名は、
『ワイルドボアの丸焼き風骨つき肉、塩を添えて』
うん、ただの塩で焼いただけの肉ですね。
しかし、それは見た目だけのことで、口に入れた瞬間、野生の香りが引き立ちまるでジャングルの中にいるような気分!そして、ゴムのような弾力と見た目とは桁違いの噛み応え!!極め付けは、噛んだ瞬間に広がるとっても“油”ののった肉汁!!
簡潔に答えれば…………とっても不味い!!!!!
見た目だけは食欲がそそられるが、一口食べた瞬間に、どんなに鍛えたやつでも、ノックアウトするだろう。
現に、俺以外の奴らは既に気絶している。
また、何故俺が平気なのかというと、(少しも平気ではないが)嗅覚と味覚を一噛みした瞬間に遮断したからだ。
これも、殺し屋時代に習得したスキルだ。
いや〜、とっても便利だ。
そして、竜には焼いてない生のまま食べさせたが、なんの問題もないようなので、残飯処理をしてもらった。
竜っていくらだろ……?
そして、紙に書き記した料理名を上から二重線を引いて、上に新しく料理名を書き記す。
『食べるな危険!!!!!』
そして、翌日、昨日書き換えた紙を見たフィルがワナワナと肩を震わせ、俯いたままこちらに歩み寄ってくる。
しかし、その足取りは、霊にでも取り憑かれたような足元が覚束ない足取りで、俺の前まで来ると、おれの両肩を強く握りしめ、
「ありがとう!!」
「………へ?」
予想していた言葉とは違った為に、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ありがとう。本当にありがとう。これはいい料理名ね!!これ以上犠牲者を出さないいいアイディアよ!」
「お、おう」
そう返すことしかできなかった。
☆
月日は流れ、現在は目的の港町の一方手前、【キューコスの街】に来ていた。
ここ【キューコスの街】は世界三大美女ならぬ、『世界三大鍛冶の街』又は、『世界三大漁港』としてかなり有名な街で、世界各地から腕のいい職人や、武器防具を求めるもので溢れかえっているという。
また、この世界は余り文明が発達していないため、遠くへ生物を運ぶ手段がない。
イコール、港町周辺地域でしか海鮮類は食べれないためこの街を結構楽しみにしていた。
税金を支払ってから街の中に入ると、門前広場には観光客向けの店が立ち並んでおり、魚介類を取り扱っている店も多数見かけ、また、鍛冶が有名な街だけあって、武器を携帯している人が大多数を占めている。
「おお〜!10年ぶりの魚だ!食いてぇ〜!」
「? 10年ぶり?どゆこと?」
「き、気にしなくていいよ」
あ、あぶなかった……別に転生者だとはバレてもいいんだが、何かとめんどくさそうだし……それより魚だよ!10年ぶりの魚だよ!
しょ、所持金確かめなくては……
俺が財布の中を覗き込むのを見た騎士達が、余り無駄遣いしないように声をかけて来たが「これは無駄遣いではない!必要経費だ!」と、ばっさり切り捨てて、門前広場から続く大通りに入る。
しばらく大通りを歩いて、街並みや、食文化を調べたところ、やはり、食文化は魚が主流で、街並みは青や水色を土台とした街並みが広がっていた。
「みんな!早速、魚を食べに行こう!」
俺がそういうと、みんなこの街は初めてらしく、また、全員(俺以外)がまだ一度も魚を食したことがないらしい。
「魚とは先程から店先に並ぶ、あのグロいやつですか?」
「グ、グロくはないけど……多分それであってるよ」
食べていないので、見た目からしか味を判断できないフィルと騎士達は今にも「うぇ……」と声が出そうなほど酷い顔を周囲に晒す。
「食べたことないからわからないと思うけど、とっても美味しいよ」
俺はフィルや騎士達を引き連れながら、先程目に入った面白そうなお店に入る。
店に入ると言っても、壁や屋根はなく、真ん中には海に繋がっていると思われる一辺が18メートルはあろうかという、超でかい四角い生簀?見たいのを囲むようにしてウッドデッキが備え付けられている。
席は全て、テラス席みたいな感じだ。
店員がいなかったので、適当に席に着くと、生簀?からとっても子供の教育にはよろしくない上半身裸の人魚が現れた。
おお、人魚だ……いるとは聞いていたが、実際に見るのは初めてだな……しかし、濡れた髪で双丘の頂点を隠すとは………
そんなことを考えていると、店員と思われる人魚が、メニューと飲み物と貝で出来たと思われるベルを出してくる。
「こちらがメニューとなります。ご注文がお決まり次第そちらのベルでお呼びください」
人魚店員はそれだけ告げるとまた水中に潜っていった。
ああ、ずっとここにいてくれても良かったのに……
そんな感じのことを男同士(4人)で話し合っていると、女性陣から拳骨を一発ずつもらった。
まだ痛む頭を抑えながらメニューを開くと、文字だけが羅列されたものが目に飛び込んでくる。
これを簡単に例えるなら、小説だ。
はっきりいって、超〜読みにくい。
俺はメニューを全て回収し、全て水の中に放り込む。
「ど、どうして!?」
フィルが机から乗り出して問うて来たが、俺は特に反応せず、適当に答える。
「いや、とても読みにくかったから」
「じゃあ、何注文するの!?」
「…………適当?」
特に何を頼むかなど決めていなかったために、反応が遅れた。
その反応をみた騎士達やフィルは呆れた表情を俺に向けて来て、
「じゃあ、適当に注文お願いします」
と、皆んなの心中を代表して、騎士の1人が答え、フィルが貝殻で出来たベルを鳴らした。
しばらくして、先程の人魚が上がってくる。
「ご注文はお決まりでしょうか」
「君をお願い」
俺がふざけてそう言うと、隣のフィルさんから肘打ちを貰い、悶絶していると、本気にした店員さんは、
「ここじゃ、ちょっと……」
そこにフィルが口を挟む。
「冗談だからね?」
フィルや俺の顔を「マジ」と理解すると、とっても子供の教育によろしくない店員さんは赤面し、真顔になってから、
「ご注文はお決まりでしょうか」
俺がその切り替えの早さに感心していると、全く同じ場所、全く同じ強さの肘打ちが俺の脇腹にクリーンヒットする。
「オーノー……」
「いつまでも悶絶してないでさっさと注文してよ」
非難するような目を向けると、素知らぬ顔でそういって来た。
くっ……!最強と言われた俺がここまで尻に敷かれるとは……
しかし、ここで注文しなくてはもう一度あの肘打ちを食らうことになるのだろう……避けることは簡単だが、そんな勇気などない。
「じゃあ、観光客向けのおすすめを6つと、地元民向けのを1つ」
「地元民向けとなりますと、生の魚になりますがよろしいですか?」
そんな心配をしてくれる店員さんに感謝しながら頷くと、店員さんはメモを取り、また水中に消えていった。
生の魚かぁ……刺身なんだろうな……楽しみだぜ!
落ち着かない態度で料理が運ばれてくるのを待っていると、フィルに話しかけられた。
「何?」
「いや、生の魚なんて食べて平気なの?………かなりグロいし」
「平気だって。美味しいと思うからちょっと分けてあげようか?」
フィルの質問に明るく答えて、そう提案すると、「じゃあ、一口だけ」という答えが返ってきた。
たわいのない話をしていると、先程の人魚がもう2人連れて料理を手に持ち、上がって来た。
もう2人の方も上半身裸で、とってもスタイルが良く、鼻の下を伸ばしていると肘打ちを食らった。
同じ場所三回はキツイっす……
手に持っていた料理は、魔法か何かなのか、水中にあったにもかかわらず濡れていなかった。
「こちらが焼き魚定食です」
俺以外の席に運ばれていく。
うまそぉ……(ジュルッ)
口内から溢れ出て来た涎を拭きながら焼き魚定食を見つめていると、
「一口食べる?」
「おお!持つべきものは兄妹だ!」
「私、お姉ちゃんがいいからね?」
あ、そこですか……まあ、俺としては特に構いませんが。
そんな会話をしていると、
「こちらが刺身の盛り合わせです」
そういって運ばれて来たのは、小学生がよく使うプラスチックの筆箱の倍ぐらいの大きさの皿に山盛りに乗せられた刺身が出て来た。
う、うまそ……
皿に乗っているのは、マグロやカツオみたいな赤身の魚から、フグや真鯛などの白身魚、また、その中間に位置するアジのようなもの、イクラっぽいもの、とにかく色んな魚が乗っており、とても美味しそうだ。
「こちらは好みなのですが、鬼酒、塩などを掛けてお召し上がりください」
そういうと、水中に姿を消してしまった。
ああ、もっと楽しみたかったのに……おっと、いかんいかん、また肘打ちを食らうところだったぜ……ふぅ。
それより、鬼酒ってなんだろ?
店員さんが鬼酒といって置いていった徳利のようなものを除くと、中には黒い液体が入っていた。
ん???もしかして……醤油か?
匂いを嗅いでみると、案の定、醤油であった。
おお!こんなところで出会えるとは!偶然か!?それとも必然なのか!?
目を輝かせていると、フィルから声をかけられた。
「どうしたの?そんな目をキラキラさせちゃって、食べないの?」
「醤油があったんだよ!もう一生味わえないと思っていたのに!」
「しょーゆ?美味しいの?」
そういうと、フィルは無造作に俺から徳利を奪い、中の液体を少しだけ口に含む。
「うげぇ……しょっぱ!何これ……こんなの飲むの?」
「いやいや、飲むんじゃなくてかけるの………こうやって」
フィルから醤油が入った徳利を渡してもらうと、俺は刺身の上から少しずつ垂らす。
全体に万遍なくかけると、マグロの色に近い赤身を一切れフォークですくって、口の中に運ぶ。
口の中に入れた瞬間、醤油の香りとサーモンに似た味が口内に広がり、一瞬にして、溶ける。
文字どうり、歯がなくても食べれる勢いだ。
フィルは俺の幸せそうな表情を見て刺激されたのか、さっさと食べさせろと迫ってくる。
それに気付いた俺は先程食べたものと同じものを一切れフィルの口に入れると、顔をとろけさせる。
「美味しっ!何これっ!?だけど、焼き魚も美味しいし……」
そんな何に迷っているのか察しがついた俺は、助け舟を出す。
「半分個ずつで食べる?」
「うんっ!」
全身で幸せオーラを出しながら頷いたのだった。
また、騎士達にも食べてもらったのだが、あまり高評価はいただけなかった。
食事を終えた俺達は、船のチケットを買いに行く。
船のチケットを買いに行くと言っても、この中で誰も買い方や、どこにあるのかも知らないので、道行く人に聞きながらチケット売り場に歩いて行く。
石畳で舗装された道を歩きながら青をベースとした町並みを眺めていく。
時折、綺麗なガラス細工を見かけて店を冷やかしに行ったり、気に入ったものを買ったりなどして進んで行くと、教えてもらった通りの建物が見えて来た。
一階平屋建ての木造建築で、周りとはまた違ったレトロな雰囲気を醸し出している。
扉を開けて中に入ると、外見のレトロさを全く感じさせない白を基調としたおしゃれな内装で、「ここって、本当にチケット販売所?」と俺の心の声を代弁したようなセリフが隣から聞こえてくるほどに……
そんな風に扉の前で混乱していると、受付と思われる場所から1人の女性が手を挙げてこちらを見ながらニッコリと笑みを浮かべている。
「よし、あそこに行こう」
「女の人だからじゃないよね?」
俺はフィルから出た質問を黙殺して歩き出す。
後ろから溜息が聞こえるが、気にしなーい気にしなーい。
“紫髪”女性の前まで来ると、1枚の紙を出してから話しかけて来る。
「こんにちは、今日はどのようなご用件でしょか?」
「船のチケットを購入しに来たのですが」
受付の女性は少し吃驚した様子を見せながら、しかしさすが受付嬢だけはある。すぐに、笑顔を“貼り付けて”、
「すみません。今現在、海上を行く船は1ヶ月後までは全て満席になっておりまして」
「“海上を行く”?」
「はい、飛空船ならば空きはあるのですが、空を行くため少々お高めで……」
おぉう、まさかこの世界に既に空路があるとは……技術力って本当に中世ヨーロッパか聞きたくなってくる。
「ちなみに、その飛空船の値段って幾らですか?」
「どちらまで行かれるかによりますが、基本は、お一人様当たりスタンダードが12万ルイス、スーペリアが15万ルイス、デラックスが20万ルイス、エグゼクティブが30万ルイス、スイートが50万ルイスですね」
ルイスというのはお金の単位で、1ルイス1円と考えてもらいたい。
そして、このチケット代はかなり高い。これなら利用者数が少ないのも頷ける。
ちなみに、この世界の平均月収が8万ルイスだ。
だが、1ヶ月もここで何するかというと、何もすることがないだろう。
働くことなんて考えてないし、そうすると、ここで1ヶ月過ごす宿代よりも安くなるのでここでチケットをとった方が安上がりだ。
「魔大陸までだとどうなりますか?」
「全てにプラス1万ルイスですね」
「じゃあ、どうランク分けされているのか教えてもらっても?」
そこが気になったのだ。内装はどんな感じなのかとかね
「スタンダードは4人部屋と大きいですがプライベートスペースがないためこのような値段です。スーペリアはスタンダードと比べて2人部屋なのである程度プライベートスペースは確保できます。恋人同士などに人気ですね。また、デラックス、エグゼクティブ、スイートは全て1人部屋ですがベットを運んで2人部屋にすることも可能です。あとは、内装ですかね」
それを聞いた俺はみんなの意見を聞くために、受付嬢に断りを入れてみんなで集まる。
「船の中でプライベートスペースは必要か?」
「せめて、女と男は分けて欲しいです」
女騎士の1人が答え、他に意見はないか?という目線を向けるが特に何もなかったので、元の位置に戻る。
「じゃあ、スタンダード3人とスーペリア4人でお願いします」
「では、お会計103万ルイスとなります。お支払いはどうなさいますか?」
「現金で」
そういうと、俺は超強面の騎士が持っている鞄を弄り、1つの皮袋を取り出す。そう、お分かりだろうが財布だ。
その財布の中から金貨10枚と銀貨3枚を取り出して受付嬢に渡す。
「確かに受け取りました。では、こちらがチケットになります。出発は明日の午後5時を予定しておりますのでそれまでにお越しください」
そういうと受付嬢は立ち上がり、ペコリとお辞儀をして来たので、その場からみんなを連れて店から出る。
「シャイト?凄い悪い人が浮かべる笑みをしてたんだけど……」
「いやいや、気のせいだよ」
「ならいいけど……」
フィルの指摘は多分、気のせいではない。
自分でも自覚していたからだ。
ふふっ、今夜は楽しめそうかな
☆
立ち上がりお辞儀をした受付嬢は独り呟く。
「あんなに小さい子が標的か……けど、殺しに情はいらない」
自分に言い聞かせるようにして頬を叩く、“限りなく白に近いプラチナブロンドの髪色”をした猫獣人の姿をした受付嬢がそこに立っていた。
夕日の光を反射させるプラチナブロンドの髪と、猫のネックレスが異様な神秘さを感じさせて。
次話は24時間後に投稿したいと思います




