第二劇『ミッションスタート』
虎吉「行くで虎!ミッションスタートや!」
虎之介「よし!」
(その頃大石は)
大石「『太一』…今頃腹空かしとるかも……アイツらは待っとけて言うとったけど……『太一』…。」
(虎吉達は)
虎吉「この感じ…おるな…近くに。」
虎之介「『霊糸』が太くなってる!あのマンションだっ!」
女「きゃぁぁぁっ!!!」
二人「!」
虎之介「虎吉!」
虎吉「急ぐで!」
(マンションに行く)
女「た、助けてぇっ!」
?「シャァッ!」
虎吉「そこまでや!」
?「ギ!」
虎之介「大丈夫ですか?」
女「は、はい…!」
虎之介「ここは危険ですから離れてて下さい。」
女「わ、分かりました!」
虎之介「…虎吉。」
虎吉「ああ。」
?「シャァッ!」
虎吉「『完全侵蝕』されとる。」
虎之介「『太一』!目を覚ますんだっ!」
太一「ギ?」
虎之介「大石くんが…学くんが君の帰りを待ってるんだよ!」
太一「…ま…な…ぶ…?」
虎之介「そうだよ!学くんだよ!」
太一「ギ…シャァッ!」
虎之介「!」
虎吉「おらっ!」
太一「ギッ!?」
虎之介「…太一…。」
虎吉「無駄や。今のアイツは正気やない。今は『邪霊』に侵された『邪体』や!」
虎之介「くっ!」
虎吉「おらぁっ!クソ猫っ!こっちや、ついてきぃっ!」
虎之介「虎吉!」
虎吉「河原に行くで!」
虎之介「わ、分かった!」
(河原に到着)
虎吉「ここやったら思う存分やれるで!」
虎之介「あまり傷つけたくなかったけど…。」
虎吉「しゃあないやろ!『邪体』から救うんは、『侵蝕』した『邪霊』より強い力ぶつけて体から追い出すしかあらへん!」
太一「ギギ…!」
虎之介「く…霊は霊らしくさっさと成仏してくれればいいのに!」
虎吉「全くや!行くで!」
?「あ、あれは!」
虎吉「たあっ!」
太一「ニャンッ!」
?「太一っ!!」
虎吉「へ、どやら『侵蝕』しとんのは『低級霊』みたいやな!」
虎之介「そうだね、多分後一発で…。」
?「止めろぉっ!!!」
二人「!」
虎之介「お、『大石』くん!」
大石「お前ら一体何しとんねんっ!」
虎吉「ち、待っとけ言うたのに!」
大石「何でこんな…何で太一を殴んねんっ!」
虎之介「違うんだ大石くんっ!」
大石「何が違うねん!太一が何した言うねん!」
虎之介「太一を助けるためなんだよ!」
大石「助ける?嘘や!助けるなら何で殴る必要があんねんっ!見てみぃ、太一はあんなに痛がっとるやないか!」
太一「ギッ!」
大石「もう大丈夫や……早ぅ帰ろう。」
太一「シャァッ!」
虎吉「ちぃっ!」
太一「ニャンッ!」
大石「太一っ!な、何すんねんっ!」
虎吉「アホか、よう見てみぃ!あれが猫言う面か?」
太一「ギァっ!」
大石「た…太一…!」
虎吉「お前の猫は、さっきみたいにお前を襲うんか?」
大石「襲う…?」
虎之介「信じられないかもしれないけど、今の太一は、大石くんが大好きな太一じゃないんだ。」
大石「ど、どういうことや?」
虎之介「太一はね、今『邪霊』に侵されてるんだ。」
大石「じゃれい?」
虎吉「ま、悪霊や悪霊。」
大石「う、嘘や!そないなもんおるわけないやろっ!からかってんやろっ!ふざけんなっ!」
虎吉「せやったら、今のアイツの顔、どう説明すんねや?」
大石「あ…!」
虎吉「あの顔は猫のもんやない…いや、この世の生き物の顔やない。」
大石「太一……ホンマに霊に…!」
虎之介「大石くん、小さい頃、この川で溺れたって言ったよね?」
大石「あ、ああ。」
虎之介「大石くんはね、溺れたんじゃない。あの悪霊に溺れさせられたんだ。」
大石「え…?」
虎之介「だけど、太一はそれに気付いて大石くんを悪霊から助けたんだ。怪我してまでね。」
大石「…。」
虎之介「そしてその時、怪我した太一の傷から『侵蝕』したんだ。」
大石「じ、じゃあ…!」
虎之介「そして長年かけて、太一の体を弱らせ乗っとったんだ。」
大石「じゃあ太一は俺のせいで?」
虎之介「違うよ。太一は大好きな主人を守っただけだよ。文字通り命を懸けてね。」
虎吉「ま、相当苦しかったやろうな。必死で今まで『邪霊』の意識に抵抗してきたんやからな。時には激痛が走ることもあったやろな。」
大石「くっ…太一…ごめん…太一!」
虎之介「大丈夫だよ大石くん。ああいう奴らを倒す為に俺達がいるんだ。」
大石「え?」
虎吉「オレらが元に戻したる言うてんねん。お前の大好きな猫にな。」
大石「そ…そないなこと…出来るんか?」
虎之介「出来なかったら引き受けないよ!俺達はどんな仕事も必ず完了させるから!」
大石「お、お前ら…。」
虎吉「分かったんならおとなしゅうしとるんや。」
虎之介「太一の中にいる『邪霊』は俺達が倒す!」
大石「お前らは一体…。」
二人「『万能屋・トラ×トラ』、よろしく!」
太一「シャァッ!」
虎之介「太一!今すぐ元に戻してあげるからね!」
虎吉「虎!猫を引きつけとけやっ!」
虎之介「分かった!」
大石「太一!」
虎吉「さあ、そろそろおとなしゅうしてもらうで。」
大石「な、何しとん?」
虎吉「ええか、『侵蝕』から救うんは、こうやって強力な霊波を!」
虎之介「今だ虎吉っ!」
虎吉「ぶつけりゃええんやぁっ!!!」
太一「ニャァッッッ!」
大石「太一ぃっ!!!」
太一「…ギィ…。」
大石「た、太一!」
虎吉「近づくんやないっ!」
大石「え!?」
虎吉「こっからが本番や!」
虎之介「下がってて大石くん!」
太一「…!」
大石「あっ!太一から何か出てきよる!」
太一「…ま…な…ぶ…!」
大石「太一ぃっ!」
太一「ニャァァァッ!!!」
虎吉「出てきよったな。」
大石「な、何やあれっ!?」
虎吉「あれが猫に取り憑いた『邪霊』の正体や!」
大石「あ、あれが太一の中に…た、太一は!太一ぃっ!」
虎之介「大丈夫、太一は無事だよ!衰弱してるけど命に別状は無いよ。」
大石「良かった…太一……良かったぁ。」
虎之介「良かった…さて、後始末しなきゃね。」
虎吉「せやな。」
邪霊「ジャマスルナッ!」
虎吉「お〜お〜、随分肥えよって。」
虎之介「伊達に何年も太一の生気を吸ってないってわけだね。」
邪霊「ユルサナイゾ!セッカクノエモノヲ!」
虎吉「アホ抜かせ!さっさと成仏せぇや!」
虎之介「そうだ、この世ではお前達は存在しちゃいけないんだ!」
邪霊「コ、コロシテヤルッ!」
虎吉「うっさいわアホ!」
邪霊「グ…シ…シネェェェッ!」
虎吉「虎、コイツはオレが逝かすわ。」
虎之介「はいはい。」
邪霊「!……ド…ドコイッタ?」
虎吉「ここや。」
邪霊「イ、イツノマニッ!」
虎吉「これで終まいやぁっ!」
邪霊「ギャァァァッ!」
虎吉「消えろやぁっ!!!」
邪霊「セ…セッカク…ココマデ…テニイレタノニ…!」
虎吉「そら残念やったな。来世に期待するんやな。」
邪霊「グオォォォッ!」
虎之介「ナイス虎吉!」
虎吉「楽勝や楽勝!」
大石「お、終わったんか?」
虎吉「おぅ終わったで。」
大石「……あの…。」
虎吉「礼なんかええよ、オレらは金で動いてんねん。ギブアンドテイクや。」
大石「…ホンマ…ホンマありがとう…。」
虎之介「えへへ…虎吉。」
虎吉「ああ、ミッションコンプリートや!」
(翌日)
虎之介「ん?あ、大石くん!」
大石「やぁ。」
虎之介「どうしたの?」
大石「これ。」
虎吉「待ってましたっ!」
虎之介「ちょっと虎吉!」
虎吉「おおっ!15万もあるで!」
虎之介「15万っ!?ちょっ…これ多過ぎだよ!」
大石「ううん、これでも少ないくらいやし。俺の全財産や、受け取って欲しい。」
虎吉「うほぅっ!これで当分は食いっぱぐれないで!わっはっは!」
虎之介「…もう!」
虎吉「あ、何すんねん!」
虎之介「二万で良かったんじゃなかったっけ?前払いも一万貰ったし。」
虎吉「う…いや…でもくれるって言うんやから…。」
大石「不破の言うとおりや。君らには感謝してもしきれへんし。」
虎之介「ううん、これは返す。成功報酬として二万だけ貰うよ。」
虎吉「ちぇ。」
大石「え…でも。」
虎之介「ううん、俺達はプロだよ。お金に見合った仕事をするだけ。」
大石「天童…。」
虎之介「そのお金で、太一に何か買ってあげて。」
大石「…分かった。」
虎之介「よし!」
大石「ありがとうな…ホンマありがとうな。」
虎吉「へ…。」
虎之介「また何か依頼あったら言ってね。」
大石「ホンマにありがとうな!」
(大石は出ていく)
虎吉「二万か……ま、ええか。」
虎之介「だね。」
晴美「気持ち悪いなぁ、二人してニヤニヤして。」
虎之介「晴美ちゃん。」
虎吉「また出た。」
晴美「何がまた出たや!」
虎吉「何か用なんか?」
晴美「虎之介、今の誰?」
虎吉「無視かい。」
虎之介「依頼人だよ。昨日成功したから、お礼を貰ったんだよ。」
晴美「へぇ、アンタ達でも成功すんねや。」
虎吉「何やとっ!もっぺん言ってみぃ!このペチャブス!」
晴美「ペチャブス言うなっ!」
虎吉「がぽぅっ!」
虎之介「あらら…。」
晴美「もうっ!アンタ達なんか、一生『あの人』には勝てへんわっ!このアホッ!」
虎之介「…大丈夫、虎吉?」
虎吉「あ…相変わらずの馬鹿力や…。」
虎之介「んふふ。」
虎吉「ん?どないした?」
虎之介「今日の昼休み。」
虎吉「昼休み?……ああっ!特製マグロ丼っ!」
虎之介「お金はたんまりある。お代わりも出来るよ!」
虎吉「うっひょおっ!」
(昼休みを告げるベルが鳴る)
虎吉「鳴ったぁっ!行っくでぇっ!」
虎之介「おう!」
(食堂に到着)
二人「おばちゃあ〜んっ!」
管理人「あ、食堂のおばちゃんやったら風邪引いて休みやで。」
二人「ノォォォーーーーーーッ!!!」
(教室に戻る)
虎吉「くそぅ…。」
虎之介「あはは……はぁ。」
虎吉「ていうか、あのおばちゃんしか特製マグロ丼作れへんて、どんな食堂やねん!」
虎之介「いつになったら食べられるのかな…。」
虎吉「…ま、ええか。手元には前払い合わせて三万あるし…今日はちょっと豪勢な…。」
?「まいどあり♪」
虎吉「あっ!」
?「アンタ達がこんな大金持ってるなんて不思議ぃ〜!」
虎之介「『ナギサ』さん!」
虎吉「こら返せやっ!」
ナギサ「ダ〜メ。」
虎吉「ふざけんな!お前一体!」
ナギサ「集金よ集金。」
虎吉「な、何のことや?」
ナギサ「とぼけないの!『シーマ』さんにまだ払ってないでしょ?や・ち・ん♪」
二人「あ…!」
ナギサ「んじゃそゆことで♪」
虎之介「わ…忘れてた…。」
虎吉「あんのババァ…ッ!」
虎之介「どうしよ…残り456円…。」
虎吉「う…嘘や……嘘やぁっ!」
虎之介「どうすんのさ虎吉!」
虎吉「こ、こうなったら銀行でも襲って…!」
ナギサ「あ、そうそう!今日用事があるから店に来るようにってことよ♪」
虎吉「は?」
ナギサ「依頼かもよ?じゃあね、お二人さん♪」
虎之介「……どうする?」
虎吉「あのババァのこっちゃ、また厄介な仕事やぞ。」
虎之介「とにかく行くしかないね。断ったら断ったで…。」
虎吉「半殺しや……しゃあない、行くで。」
次回に続く