表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

第一劇『二人の虎』

虎吉「あかん…目も当てられへん…。」


虎之介「どうしたの?」


虎吉「どうしたもこうしたもあるかい!……真っ赤っ赤や…。」


虎之介「また赤字?」


虎吉「あかん!こんままやったら廃業や!」


虎之介「ん〜最近お客さん来ないもんね。」


虎吉「どないしょ…虎、仕事探してこんかい!」


虎之介「今から?無理に決まってるだろ?」


虎吉「何や?お前はこの『万能屋』が潰れてもええん言うんか?」


虎之介「そんなこと言ってないだろ?」


虎吉「う〜ん…こうなったらまたババァにでも…。」


虎之介「駄目だってば!おばさんにはいつも世話になってんのに!」


虎吉「アホかっ!背に腹は変えられへん!なぁに、こっそり忍び込んで預金通帳を…ひっひっひ…。」


虎之介「…あ!ヤバイよ虎吉!学校に遅刻する!」


虎吉「アホ言うな!学校なぞ行ってられへんわ!何が悲しゅうて、こないな時にお勉強なんかせなあかんねん!」


虎之介「もうっ!せっかく学校に通えんだよ!休んだりしたらおばさんに申し訳ないだろ!」


虎吉「知るかっ!あのババァが勝手にしよったことやろが!」


虎之介「仕事なら学校で探せばいいだろ!もしかしたら三日前に貼ったポスター見て、誰か依頼してくるかもしれないし!」


虎吉「あ!せやな!ほな急ぐで虎ぁっ!依頼人さんを待たしたらあかん!」


虎之介「現金なんだから…まだ依頼があるかどうかも分からないのに…。」


虎吉「早よせいやぁっ!」


虎之介「はぁ…分かってるよ!」



(二人が通う高校『鳴海ナルミ高校』に到着)



?「…ん?あ、不破君おはよ…っ!」


虎吉「どかんかい!」


?「きゃっ!」


虎之介「おっと!」


?「あ…!」


虎之介「大丈夫?」


?「て…天童くん…!」


虎之介「怪我無い?」


?「だ、大丈夫…あ、ありがとう。」


虎之介「良かった、ごめんね。虎吉、ちょっと急いでてね。」


?「ホント信じられへんわ!」


?「『晴美ハルミ』。」


晴美「あのアホ!ぶつかったら謝ったらどやねんっ!」


虎之介「ホントにごめんね。」


晴美「天童くんも天童くんやで!あのアホの教育しっかりせなあかんで!」


虎之介「ごめんね。」


晴美「まったく…『雪菜ユキナ』大丈夫?」


雪菜「うちなら平気。天童くんが支えてくれはったし。」


晴美「とにかく、一辺ガツンと言わしたらなあかんな!虎吉ぃ!」


虎之介「はは、相変わらず元気だね『晴美』ちゃん。」


晴美「虎吉ぃっ!」


虎之介「俺達も行こう。」


雪菜「うん。」



(教室に行く)



虎之介「あ、やってるやってる。」


晴美「ちょっと聞いとんの!」


虎吉「やかましいやっちゃで…。」


晴美「虎吉ぃ!」


虎吉「痛い痛い!何すんねん!この晴れババァ!」


晴美「誰が晴れババァやっ!」


虎吉「痛いっちゅうねん!こら、虎!見てないで助けんかい!」


虎之介「無理だよ。だって完全に虎吉が悪いからね。」


虎吉「こんの裏切りもんが…っ!」


雪菜「晴美、もうええて。」


晴美「いいや、このアホはしばいたらな分からへんねん!」


虎吉「アホちゃうわアホ!」


晴美「アホはアンタやアホ!」


虎吉「うっさいわブス!」


晴美「なっ!」


虎吉「そんな性悪やからモテへんのや!このペチャブス!」


晴美「こ…っ!」


生徒1「何やペチャブスって?」


生徒2「ペチャパイのブスってことちゃうか?」


生徒1「あ、成程!上手いこと言うやないか不破!」


虎吉「せやろ?このアホを表すのに、いっちゃん合うとるあだ名やで!なっはっはっ!」


晴美「くっ…!」


虎之介「あ〜あ…知〜らないっと。」


晴美「このっ!」


虎吉「へ?」


晴美「一辺死ねぇっ!」


虎吉「ぶぺぇっ!」


虎之介「今日もよく吹っ飛んだねぇ。」


生徒1「…さ…さて、授業の準備せなな!」


生徒2「せ、せやせや!」


晴美「このアホッ!」


虎之介「…毎朝毎朝、飽きないね。」


虎吉「うるさいわ、ちきしょう…。」


虎之介「ところで依頼はあった?」


虎吉「…。」


虎之介「虎吉?」


虎吉「…あった。」


虎之介「あったの?」


虎吉「これや?」


虎之介「ん…これだけ?」


虎吉「せや…。」


虎之介「バスケットゴールの修理か…。」


虎吉「しかも報酬は五百円や。」


虎之介「こりゃまた安いね。」


虎吉「…あかんあかん!この依頼はパスやパス!」


虎之介「でもいいの?何でも引き受けるのが『万能屋』だよ?」


虎吉「んなもん、こっちかて仕事選ぶ権利ぐらいあるわ。」


虎之介「仕事選んでる余裕なんかある?今日の夕飯どうすんの?」


虎吉「う…。」


虎之介「大体虎吉がそうやって仕事を選ぶから、俺達苦労してんだよ?」


虎吉「オレはな!ホンマもんの仕事がしたいんや!男の中の男の仕事をっ!」


虎之介「ポリシーだけじゃ、お腹は膨れないよ?」


虎吉「だぁもうっ!せやったらどうすんねんっ!たった五百円の為にバスケゴール直す言うんかいっ!しかも三つもやで!やってられへんわ!」


虎之介「んふふ…。」


虎吉「な…何や?」


虎之介「これな〜んだ?」


虎吉「ん?…ま…まさかそれはぁ!ふ、ふ、福沢さんじゃああ〜りませんかぁっ!」


虎之介「ビンゴ♪」


虎吉「ど、どないしたんや虎!そないな大金!?」


虎之介「実はさっき依頼されたんだよ。」


虎吉「だ、誰にや?」


虎之介「二年B組の『大石』くんから。」


虎吉「ふぅん…で、依頼内容は?」


虎之介「探しものだって。」


虎吉「探しもの?」


虎之介「ま、詳しいことは放課後話すってさ。」


虎吉「よっしゃ!んじゃ放課後までその福沢さんで!」


虎之介「駄目だよ。」


虎吉「な、何でや!?」


虎之介「まだ依頼を完了してないのに駄目だよ。」


虎吉「アホッ!それは前払いやろ!やったらその金はもうオレらのもんやんけ!」


虎之介「…それもそうだね。」


虎吉「やろ?んじゃ行くで虎!」


虎之介「何処に?」


虎吉「決まっとるやろが!その金で……特製マグロ丼を食うっ!!」


虎之介「と、特製マグロ丼っ!!!そ……それは俺達には夢のような食事……一杯2500円の…奇跡の丼!!!」


虎吉「せや……いつかは…そう!いつかは口に運ぶことを夢に見て…今日まで生きてきたんや!!!」


虎之介「た、確かにこんなチャンス滅多に…無い!」


虎吉「行くで虎ぁっ!」


虎之介「よっしゃあっ!」


虎吉「我々はついに辿り着く!夢のワンダーランド〜!」


虎之介「楽しみだね虎吉!」


雪菜「何処行くんやろ天童くん達?」


晴美「ほっとき。」



(食堂に到着)



虎吉・虎之介「おばちゃあん!特製マグロ丼二丁!!!」


食堂のおばちゃん「…まだやってへんで。」


二人「へ…?」



(授業中)



虎吉「くそぉ…せっかくの特製マグロ丼が…。」


虎之介「大丈夫だよ虎吉。あ、焦らないで昼休みを待つんだよ。そ、そうすれば!」


虎吉「そうすれば…我々の夢は…。」


二人「ひっひっひ。」


生徒1「先生!二人が気持ち悪いです!」


先生「いつものこっちゃ、ほっとけ。」


二人「ひっひっひ。」



(昼休みを告げるベルが鳴る)



虎吉「鳴ったぁっ!行っくでぇっ!」


虎之介「おうっ!」


虎吉「退け退け退け退かんかぁいっ!!!」



(食堂に到着)



二人「もらったぁっ!!!」


食堂のおばちゃん「マグロ今日は無いんよ。」


二人「は…?」


食堂のおばちゃん「特製アボカド丼ならあるで。」


二人「そ、そんなぁ〜っ!」



(放課後)



虎吉「どよ〜ん…。」


?「えと…大丈夫?」


虎之介「ああ大丈夫大丈夫、依頼内容を詳しく話して『大石』くん。」


大石「わ、分かった。実は探して欲しいんはこの子やねん。」


虎之介「写真…これは…猫?」


大石「そうや、名前は『太一』や。」


虎吉「おいおい、探しものって猫かいな。んなもん待っとったらいつか帰って来るやろ?」


大石「…今までは長くても三日以内にはちゃんと帰って来とったんや。せやけど…もう一週間も帰って来ぉへんねん!」


虎之介「…。」


虎吉「アホくさ、猫はな放浪すんのが好きなんや。犬と違って家にずっといるわけじゃ…ん?どしたんや虎?」


虎之介「…虎吉、この写真見て。」


虎吉「はあ?何言ってんねん。オレはさっきからちゃんと…。」


虎之介「虎吉、しっかり見て。」


虎吉「虎……まさか!」


大石「?」


虎吉の心「こ、これは!」


虎之介「ね?」


大石「あ、あの…どないしたん?」


虎之介「いや、何でもないよ!」


大石「…それで、この依頼…。」


虎吉「あかんあかん!」


虎之介「虎吉!」


虎吉「この依頼お断りや!」


大石「そ、そんな!」


虎吉「悪いことは言わへん、この猫のことは諦めぇ。」


大石「…い…嫌やっ!」


虎吉「…何でそない必死やねん、たかが猫やろ?」


虎之介「言い過ぎだよ虎吉!」


虎吉「ふん。」


虎之介「ご、ごめんね大石くん!」


大石「…ど…どうしてもあかんのんか?」


虎吉「…。」


大石「『太一』は俺の命の恩人やねん……小さい頃俺が川で溺れた時…怪我してまで助けてくれてんっ!」


虎之介の心「そうか…多分その時に…。」


大石「せやし、もし今アイツの身に何かおうてんなら今度は俺が助けたいんやっ!」


虎之介「虎吉。」


大石「頼むわ!力貸してえや!!!」


虎吉「……後二万。」


大石「え?」


虎吉「後二万出す言うなら考えてやってもええで?」


大石「出すっ!『太一』を見つけてくれたら俺の全財産やるっ!」


虎吉「全財産ねぇ…男に二言はあらへんか?」


大石「もちろんや!」


虎吉「…しゃあないな…虎。」


虎之介「うん。じゃあ大石くん、この依頼、俺達『万能屋・トラ×トラ』が受けおったよ!」


大石「あ、ありがとう!」


虎吉「すぐ届けたるから、鰹節でも用意して待っとけや。」


大石「よ、よろしく頼むで!そ、それじゃ待っとるわ!」


虎之介「……虎吉。」


虎吉「ああ…厄介やな。」


虎之介「久しぶりに裏業だね。」


虎吉「んじゃさっそく行くで。」


虎之介「うん。」



(川に行く)



虎吉「ここやな、大石が溺れたんは…どや?」


虎之介「……やっぱりアレの仕業だね。」


虎吉「みたいやな…まあ、あの写真に写っとったしなぁ…『霊斑レイハン』が。」


虎之介「大石くんを溺れさせたのは…。」


虎吉「『邪霊ジャレイ』の仕業やな。多分大石を殺ろうとしたんやろうが、猫に邪魔された。」


虎之介「『太一』は怪我してたって言ってたよね?恐らくその傷から…。」


虎吉「『侵蝕シンショク』しよったな。」


虎之介「長年かけて、『太一』の体をのっとった。」


虎吉「大石の側を離れたのは、猫の最後の抵抗ってわけやな。」


虎之介「元々その霊が狙ってるのは大石くんみたいだしね。」


虎吉「せやけどこんままやったら、『完全侵蝕』されて『邪体ジャタイ』になるで。」


虎之介「そうなったら大石くんだけじゃなく、他の人も襲う。早く何とかしなくちゃ。」


虎吉「……で、分かったか?」


虎之介「待って……見つけた!微かだけどまだ『霊糸レイシ』が残ってる。ということは…。」


虎吉「近くにいるってわけやな!よっしゃ!早ぅ辿るで!」


虎之介「うん!」


虎吉「『万能屋・トラ×トラ』、ミッションスタートや!」



次回に続く


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ