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閑話その2:王家の策略と、お餅の価値


王城の奥深く、国王の執務室では、一国の命運を左右する「最重要案件」が、茶菓子(アルファードが以前献上した絶品クッキー)と共に話し合われていた。


「またか。またアルファード卿の報告か?」

「はい。此度はソフィア様を狙って学園に侵入したテロリスト共を、指一本触れさせずに……いえ、お腹一つで弾き返したとのことで」


国王は深く溜息をつき、手元の報告書を閉じた。

そこには「森の魔獣の討伐(素材採取のついで)」「流行病の予防薬の開発」「国を揺るがす結界の展開」といった、一人の令息が成すにはあまりに過剰な功績が並んでいた。


「うむ……。彼には手数をかけるが、もし彼が他国に亡命でもしたらと考えると、予は夜も眠れん。今のベルンシュタイン伯爵家では、あの器を繋ぎ止めるにはあまりに小さすぎる」

「父上、この際、彼に新たな爵位を下賜しましょう。彼自身の功績に見合うだけの領地を」


王太子レオナルドの提案に、国王は顎を撫でる。

「しかし、彼の実家や、序列を重んじる古い貴族家がなんと言うか……」

「そこは、父上にお任せします。……それに、ソフィには『手段を問わず彼を捕まえろ』と言ってあります。妾でも側室でも、彼がこの国に根を下ろしてくれるなら、もはや王族の体裁など二の次です」


一方、王城のサロンでは、王妃が優雅に扇を広げていた。


「ほほほ、アルファードくんが正式にうちに来てくれれば、あのお餅のような……いえ、慈愛に満ちたぷにぷにを、いつでも味わうことができるのね」


王妃の目は、獲物を狙う鷹のように鋭かった。彼女にとってアルファードは、国の救世主であると同時に、至高の「癒やし(触り心地)」を提供する存在でもあった。


「奥様方。ベルンシュタイン家のあの『至宝』、我が娘ソフィアに相応しいと思いませんこと?」


王妃の言葉に、周囲の有力貴族の夫人たちが一斉に頷く。

彼女たちの家も、アルファードの予防薬や魔力飴の恩恵をたっぷり受けている。もはや社交界において「アルファード・ベルンシュタインを無能と呼ぶ者」は、流行遅れどころか「情報の疎い愚か者」の烙印を押される状況だった。


「もちろんでございます、王妃様。あの方こそ、次代の国を支える大黒柱(物理的にも)」

「うちの娘も、彼のためなら側室でも構わないと言い出しておりまして……」


知らぬ間に、アルファードを囲い込むための網は、法的な「爵位」と、血縁的な「婚姻」、そして社交界の「世論」という三段構えで完成しつつあった。


そんな国家規模の陰謀が進んでいるとは露知らず。

当のアルファードは、自室でメイアに新しいポーションの試飲(という名の栄養補給)をさせられながら、のんびりと鼻歌を歌っていた。


「ふぅ。学園祭も終わったし、これでしばらくは平穏だね。メイア、次の休みは森にキノコでも採りに行こうか」

「……アルファード様。外が随分と騒がしいようですが、何事でしょうか?」


「え? 風が強いんじゃないかな」


窓の外では、王家からの「爵位授与」と「婚約打診」を携えた騎士団が、土煙を上げてこちらに向かっていた。

11回目の人生。

隠居を願うお餅の周囲は、すでに彼を「世界の中心」に据えるための準備を完璧に整えていた。


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