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第十二話:生徒会長の援護射撃は、お餅には重すぎます

「……はぁ、なんでこうなった」


僕は今、学園の闘技場に立っている。対面にいるのは、爽やかな笑顔で聖剣を構える生徒会長、レオナルド王子。

一月前に始まった学園生活。僕はひたすら「ただの太った背景」として過ごそうとしたのに、王家の血筋というやつは、どうしてこうも強引なのだろうか。


「さぁ、遠慮はいらない。死合おうじゃないか、アルファードくん!」


どこかの世紀末覇王のような台詞を吐く殿下に、僕は心の中で盛大にツッコミを入れる。

依頼内容は、ソフィア王女の護衛。どうやら例の勇者(自称)の「後宮侵入事件」が効いているらしい。


(……断りたい。でも拒否権はない。なら、やることは一つだ)


「剣聖」のスキルを極限まで抑え込み、「本気を出しているフリをして、体力の限界でギリギリ負ける」という高度な芝居を打つ。これだ。名付けて『接待試合』


「ふっ!」「はぁ……っ、はぁ……!」


殿下の鋭い刺突を、僕は「おっとっと」とよろけながら、厚い脂肪(の奥にある最小限の動き)で受け流す。

一進一退の攻防。観客席で見守る生徒たちからは「あのデブ、意外と動けるな!?」と驚愕の声が上がるが、僕はあくまで「必死」を装った。


よし、この辺りで殿下の剣が僕の喉元に届くように動いて――。


「そこまで!」


審判の掛け声が響く。結果は、殿下の剣が僕の寸前で止まり、僕が膝をついて「ま、参りました……」と息を切らすという、完璧な負けっぷり。


「……素晴らしい。これなら、ソフィを任せてもいいね。よろしく頼むよ、アルファードくん」


レオナルド殿下は満足げに僕の肩を叩いた。

(よし! 負けたんだから、実力不足ってことで護衛の話は流れるはず――)


「やっぱりお兄様はすごいです! あの殿下と互角に渡り合うなんて!」

「騎士団長を負かすお兄様に互角とは、さすが私の英雄様ですわ!」

「へ?いったいどゆこと?」


セリカとソフィアが、どこをどう見ていたのか目を輝かせて駆け寄ってきた。

待って、負けたんだよ? 僕は負けたんだよ!?


「ほほほほ、私のアルファードですわ。殿下、この方は私が最初に見込んだのですから」


マーガレットまで割り込んできて、僕の腕(肉)をムギュッと掴む。

……マーガレット。君はそうやって今は所有権を主張するけど、前世では二回も僕を裏切って婚約破棄したじゃないか。

一回は追放されて刺客に殺されたし、もう一回はギロチンだった。さらには魔王の囮にされたこともある。

君の「裏切り補正」は、僕の魂に深く刻まれているんだよ。


(……さて、これでソフィの想いも少しは進展するかな?)


レオナルド殿下が、何やら「いい仕事をした」という顔で頷いている。

彼にしてみれば、二年経っても「責任をとってください!」から一歩も進まない妹のために、僕を公式な「騎士(護衛)」として隣に据えるための援護射撃のつもりだったらしい。


……いらない。その援護、援護じゃなく的に命中してます。

「アルフ様、これからは学園でもずっと一緒ですわね」

「お兄様、私が後ろから護衛を護衛しますからね(※笑顔で物騒な発言)」


こうして僕は、平穏な引きこもり生活を完全に奪われ、王女という名の特大フラグを常に横に侍らせて歩く羽目になった。

遠くで、悔しさに歯を剥き出しにしてこちらを睨む「勇者」の視線を感じるが、もはや彼に構っている余裕すらない。


(あぁ……もう一回死んで、今度こそ普通の村人に転生したい……)


十一回目の人生、中盤戦。

僕は、ヒロインたちの「好き勝手な愛」という名の包囲網の中で、今日もポーションより甘くない現実を噛み締めるのだった。


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