二郎 ep0
二郎15歳8月。
「神様。今朝食べた生っぽいホルモンに寄生虫がいて、そのせいで家族が死にませんように。お願いします。」
二郎は布団の中で祈る。合わせた両手にさらに力を込め、瞑った目をさらに押し込み、思いが届くように念押しする。
「よし、これで大丈夫。」
動悸がおさまっていく。が、さらに別の不安が二郎を襲う。
「神様。弟と自分を不老不死にしてください。あと、母と父とおじいちゃんも。消えたくないです。」
3度、早口で言う。不安は少しずつ小さくなっていく。二郎は眠りについた。
二郎15歳12月
二郎は祖父の家で泣いていた。12月に入って毎週通うようにしていた。
明らかに祖父は以前より小さくなっている。顔の皮膚も弛み、以前とは違った印象を受ける。祖父が何かを話す度に、先を想像して涙が出る。
「神様。アダルトサイトで、昔、母のパソコンが固まりました。あの時個人情報が盗まれてませんように。これから悪用されませんように」
「神様。自分と身の回りの人が永遠に健康でいられますように。」
きっと大丈夫。祈りは届く。泣きながら眠りについた。
二郎16歳12月
「神様。家族全員が健康で邪悪に襲われることなく生きれますように。祖父の病気が治りますように。」
「神様。家族全員が健康で邪悪に襲われることなく生きれますように。祖父の病気が治りますように。」
「神様。家族全員が健康で邪悪に襲われることなく生きれますように。祖父の病気が治りますように。どうかお願いします。」
二郎は祈る。不安は消えない。
二郎17歳4月。
祖父にご焼香を上げる。涙は出ない。祖父が生きている時に流し尽くしてしまった。
祖父が死んだ時、二郎は天啓を受けた。
人は死ぬ。祈りは届かない。
私の神は私だ。私を信じる者は救われる。そんな世界を作ろう。




