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3.9.01 - 記憶の回廊


 それから2日が過ぎ、3日目の朝。


 ニフィル・ロードでの滞在15日目。


 サンダーソニアを腰に結ぶ。

 コイン袋をベルトにぶら下げ、おやしろを出た。


 良く晴れたいい天気だった。


 酒場へ行くと、見知った3人が、テーブルに腰かけて食事をしている。

 まだ営業前だが、オレがマスターに頼んで、特別に朝食に招待した。


 コユルギが、木のカップを口に運ぶ。

「熱いからね」

 シチリに言われて、途中でカップを止めて、口につけるのを躊躇する。

 隣りに座るニシカタは、何も言わず、ふたりを眺めていた。


「おはようございます!」

 横から威勢よく声を掛けてきたのは、モトだった。

 その後ろに、ヤマに手を引かれたイナムラ爺さんが立っている。


「呼んできてくれたか。ありがとな」


「まったく……朝っぱらから、年寄りを駆り出しおって。おごれ小僧!」


 憎まれ口を叩く老人だが、その目に悪意は感じない。 


 しばらくすると、アルクとクラゲの姿が道の先に見えた。

「よう、ソウジ。来てやったぞ。この時間で良かったんだよな?」


「ああ、よく来てくれた。夜はエールを奢るよ」


「わたしも、今日は、見学させてくださいね。我が国では、125年ぶりの瞬間です」


 アルクは、クラゲの家で寝泊りしている。

 妙なコンビができたものだが、アルクもだいぶ、この村に馴染んでいた。




 集めた人員は9人。


 まず、記憶の回廊を知る3人。


 シチリ(56歳)

 ニシカタ(58歳)

 イナムラ(69歳)


 それから、記憶の回廊を見せておく次の世代の6人。


 モト(14歳)とヤマ(12歳)の兄弟。

 シチリの孫娘コユルギ(19歳)

 そして、クラゲ(26歳)

 ヒミコ(13歳)も誘った。


 アルク(32歳)は、微妙な年齢だったが、見たいというので呼んでやった。


 事前に、記憶の回廊がどういうものなのかは聞いてある。

 虹色にきらめく膜のようなものらしい。


 どこに開こうか悩んだが、集まりやすい酒場にした。

 念のため、目立たないように、酒場の裏の小さな畑に全員を集めた。



 左手を叩いて、デバイスを呼び出す。


 表示内容を見る。


『 WorldCount24 / CONNECTED / ELAPSED 03:41 』


 その下に見たことの無い文字。


『 INSTALL - Collected memories 』


 文字は緑色だった。


 親指で、その文字に触れてみる。


 なにも起きない。

 どういうことだ?


 画面を見ると新しい文字。


『 Summon a Gate 』


 文字は赤色だった。

 水平にしたが、まだ赤色。


 周囲に障害物の無い場所に移動する。


 緑色に変わった。


 ログインと同じ要領だろうか。

 集まった9人も、オレを見守っている。


 少し躊躇したが……


 『 Summon a Gate 』の文字に触れた。



 ログインと同じだった。


 ゲートは、1メートル手前に現れた。

 オレの身長よりも少し大きな、淡く光る虹色の膜。

 膜の向こう側の民家が透けて見える。


 長方形に切り取られた、巨大なシャボン玉の膜だ。

 それが、こちらに迫って来る。


 これが、記憶の回廊の扉なのか。


 包まれるまえに、みんなに伝えた。


「ちょっと行ってくるよ」


 目を閉じる。



「お、おう、気を付けろよ! ソ……」


 クラゲの声が、霧散した。



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