3.7.01 - 作戦
ログアウトが終わって、目を開ける。
軽いめまい。
1時間だと、この程度か。
薄汚いアパートの部屋の中。
畳の上に座っていた。
左手のデバイスは、ログインリチャージ30時間を告げている。
先に、タバコに火を付ける。
窓を少しだけ開ける。
外は、雨が降っていた。
それから、スマホを出した。
6月17日(木)9時23分。
ログイン前と、同じ朝だった。
タバコの煙を吐き出す。
やることが無くなってしまった。
未希も、まゆも、学校へ行くと言っていた。
達郎は、留置場に放り込まれた。
あと10日くらい、居ても良かったんじゃないだろうか。
そのままぼーっと、時間を過ごす。
やることが無い。
出かけるにしても、外は雨だ。
外でガコンと、音がした。
ポストに何か投函されたようだ。
アパートの戸を開けて、ポストを見ると、A4厚紙封筒。
明日の仕事の詳細だろう。
封を開けながら、部屋に戻る。
中身は、指示書が1枚と、写真が2枚。
それと、免許証、消しゴムが1個。
指示書の文面は、薄く鉛筆の手書きだった。
『 親戚のお見舞い
白未川病院505号室
吉村栄次郎
文庫本と写真の差し入れ
1日目:文庫本とAの写真
2日目:文庫本とBの写真
3日目:文庫本のみ
他の面会者との接触に注意 』
写真は、どこかの昼間の公園の写真と、住宅街の写真だった。
AとBは、すぐにわかった。
写真に写っている電柱の看板
そこに書かれている頭文字が、それぞれAとB。
深く考えることはしない。
オレは明日から3日間、見ず知らずの親戚のおじさんの見舞いに行く。
そして、文庫本と写真を差し入れる。
簡単な仕事だ。
同封されていた消しゴムで、鉛筆書きの指示内容を全て消した。
あとは、丸めて、どこかのゴミ箱に捨てる。
最後に免許証。
オレに似ているが、眼鏡を掛けたオレじゃない人物が写っている。
明日までに、住所と生年月日を暗記する。
念のため、住所の最寄り駅と、干支も調べておく。
さて、買い物に行こうか。
ダテ眼鏡と……ニット帽でいいだろう。
文庫本は、なにがいいか。
オレのオススメを選んでやろう。
それにしても……
顔バレする仕事は、久しぶりだ。
部屋のドアに向かう。
傘がない。
黒い傘があったはずだが……どこかに忘れて来た。
雨は、小ぶりだ。
そのままアパートを出る。
ひとまず、近くのコンビニまで走った。




