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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
ワールドカウント24
51/569

3.5.02


 まずは、シラスの床屋へと向かう。


 あれから何日だ?

 ニフィル・ロードの記憶は、あやふやだ。

 そこに現実世界の日数も重なり、何日経っているのかが分かりにくい。


 3日目だったか?

 まぁいい。どうでもいい。


 途中で酒場の前を通る。

 まだ、朝が早すぎるのか、酒場のドアは閉まっていた。


 酒場から歩いて数分。

 シラスの床屋が見えてきた。

 今朝も、血染めの布を巻いた棒が、入り口に突き立てられている。


 道の先から、ローブを着た婆さんが歩いてくるのが見えた。

 手には籠を下げ、中には薬草が積まれている。

 アロハ婆さんだ。


「わたしびとか。なんしにきた」


「ガスコスの様子はどうだ?」

「まぁ……峠は今夜じゃろ。死ななきゃな」

「世話を掛ける」

「ふん。おまえのために、やっとるわけじゃないわい」


 言い終わると、床屋の裏口へと歩いていく。


 アロハに質問した。

「アロハ。記憶の回廊のことを知っているか?」


 婆さんは立ち止まり、頭だけこちらに回して、片目で睨みながら言った。


「わしが知るわけなかろうが。アホが」


 つまり、名前は知っているのか。


「まぁええ。心当たりが独りおる。イナムラというじじぃを探せ。あいつなら知っとる」


 アロハは歩き出し、裏口の戸に手を掛ける。


「どこに行けば会える?」

「自分で探せ、アホが」


「ガスコスの様子は見れるか?」

「……今日はやめとけ。明日の昼にでも、また来い」

「わかった。よろしく頼む」

「ふん」


 床屋に入り、裏口の戸を閉められてしまった。


 渡し人は救世主だと聞いていたが。

 アロハには、やけに嫌われているな。


 オレは床屋を離れ、クラゲの家へと向かった。


 床屋からもクラゲの家は近い。

 家まで行くと、クラゲは外で薪を割っていた。


「おう、おはようソウジ。早いな」

「仕事か」

「まぁな。イノシシのおかげで当分仕事は休みでもいいんだけどな」


 会話しながら、クラゲは薪を割る。

 カン、と、乾いた音が、朝の村に響き渡る。

 良い音だ。

 これほどの音が出せるようになるまで、どれほどの薪を割ったのだろうか。



「クラゲ、記憶の回廊って知ってるか?」

「ん? 知らねぇなぁ。なんだそりゃ」

「イナムラという爺さんのことは?」

「ああそれなら知ってる。家は村の東の方だ」


 この村に住んでいるのか。

 よかった。


「少し待ってろ。案内してやるよ」


 この村の住人全員というわけではないだろうが。

 クラゲはお節介な男だった。

 今のオレにはありがたい。


 オレは適当に腰を下ろし、クラゲの薪割りを眺めた。

 薪割りの極意は知らないが、音は良い。


 クラゲが次々と薪を割っていく。


 良い音だ。




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