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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
ワールドカウント24
27/565

3.2.10


 須藤明美と、並んでカウンターに座る。

 ストレートヘアから香る、気品のある柑橘のフレグランスが、彼女の存在を立体的に彩っていた。


 バーテンの男に「ジンリッキーで」と伝えると、彼女から言葉をかけてきた。

「妹さんの件、任せてください。お名前はなんて?」

「変な頼みで済まないな。妹の名前は田心未希(たごころみき)」

「みきちゃんですね。15歳って聞いてましたけど」

「ああ。なにも事情を知らずに2日間泊めたことにしてくれればいい」


 そのあとオレ達は、細かい情報を詰めて、連絡先を交換した。


 迷惑料だと言って、3万円を彼女に差し出す。

 要らないと最初は断られたが、帰りのタクシー代にしてくれと言うと、彼女はそれを受け取った。


「約束があるんで、今夜はここで」

 須藤明美は、20分もしないうちに、グラスを空けて店を出て行った。


「あらぁ、総司ちゃん、なに? フラれちゃったの?」

 近づいて来た女店員が、またオレを茶化す。


 女店員を無視してタバコに火を点ける。

 タバコの煙で残り香を塗り潰す。


 これで、家出の言い訳の下準備は終わった。

 あとは、未希に伝えるだけだが、今は入院中でスマホは家においたままだろう。

 どうしようか。


 病院の面会時間も過ぎている。



 少し考えてから、スマホを抜いて、まゆにメッセージを送ることにした。

 須藤明美との打合せの内容を、まゆにも共有しておく。


『わかった。先にまゆさんに会うようだったら、わたしが伝える』


 スマホをポケットに戻す。


 ……帰るか。


 しばらく何も考えずにグラスを傾け、呑み終えるとオレはアパートに戻ることにした。




 アパートに戻ったが、なにもすることがない。

 オレは冷蔵庫を開けて、ログインデバイスを取り出した。


 未希のデバイスは、エラーのままだった。


 オレはアパートの部屋の真ん中に立つ。


 ただ暇だったからという理由だけだ。

 右手に未希のエラーデバイスを持ち、左手に持ったログインデバイスを水平に構える。

 構えたデバイスに『 Join Me 』の文字が表示された。


 ただ暇だったから。


 オレは、『 Join Me 』を押して、ワールドカウント24へログインした。



あとがき#1


 ~総司と達郎の会話~



 「オレのことは、ほっといてくれ」


 「だめですよ、総司さん、そんな態度じゃ……」


 「どうしろっていうんだ」


 「べつにどうもしなくてもいいんですけど、打合せ通りに例のアレだけ…」


 「あ…まってくださいよ! 『 星 』 忘れてますよ! 総司さん!」


 (続く)



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