4.3.07
3人でテントを出る。
空は良く晴れていた。
風も心地よい。
辺りを見渡すと、死体は片付けられているが、地面のところどころに、どす黒い滲み。
周囲のテントやバラックは、半分以上が焼け落ちている。
動く人影は疎ら。
歩き出すと、遠くで、リュウジが、何かを燃やしているのが見えた。
他の場所でも、あちこちから煙が上がっている。
しかし、歩き始め、テントを離れても、煙の匂いすらしてこない。
これが、未希の魔法の汚染、バグなのだろうか。
不思議なほど無臭。
汗臭さや、泥臭さすら漂ってこない。
救護所テントを離れ、先を歩くストームの後をついて行く。
ゲートへと辿り着くと、男達4人がそこに座り込んでいた。
アーネスト、ウェストン、ミラー。
それとミラーの友人、名は、たしか、ハートリーだったか。
ソフィアが、その男達に革水筒を手渡していた。
4人は酷い有様だった。
衣服は薄汚れてボロボロ。
死地を切り抜け、夜通し歩いて来たのだろうか。
力なく地面に座り込み、眠らないようにと目蓋を動かしているようだが、その目の下もどす黒い。
ケガは無いようだが、今は休ませてやったほうが良いのだろう。
そう思っていたが、先にアーネストが口を開いた。
「無事だったか」
アーネストはオレとは目も合わさず、ストームに言葉を続けた。
「状況を聞かせてもらおう」
ストームが最初に説明したのは、オレ達がここに辿り着いた経緯。
3日前。森の中でソフィアを救出し、キャンプに戻ったが壊滅していた。
2日前。ミラーと別れ、オレ達は前哨基地へ撤退することにした。
その途中で遠征メンバーだったフランス人が死んでいるのを見つけた。
そして昨日。
この前哨基地に辿り着き、300体のウィルコープスの襲撃に遭い、基地は半壊した。
ストームの話が、一通り終わると、アーネストが質問をし、ストームもそれに答えている。
英会話を学んだおかげか、ひとつ気が付いた。
アーネストは滑舌がよく、言葉も正確で、聞き取りやすい英語だった。
思えば、最初のアーネストの印象は最悪だった。
だが、この男の喋りには、知性の高さや気品を感じる。
イングランドの爵位を持った人物なのだと、誰かから聞いたような記憶があるが、実際そうなのかもしれない。
そのアーネストも、話が医療チームの死と、フランス人の裏切りの件に及ぶと、顔をしかめ、怒気を含む表情に変わる。
だが、すぐに疲れ切った元の表情に戻った。
「分かった。続きは後で聞こう。私達は少し休む」
そう言って、アーネストは立ち上がる。
「どこか、休めるところはあるか」
「なら、救護所テントね」
ソフィアが答えた。
まともに寝られるとしたら、そこくらいだろう。
ウェストンら3人も立ち上がり、4人は救護所テントへと歩き出した。
彼らもログアウトするつもりだろう。
あの疲れ具合を見ても、ただ休むよりは、その方が手っ取り早い。
結局、アーネストからは、何も話を聞くことができなかった。
話の続きは、6時間後だ。
しかたないので、それからは、基地の後片付けを手伝った。
未希とストーム、それとソフィアは、井戸水の煮沸や食糧の炊き出しをしている。
オレは、リュウジの所へ行き、焼却を手伝うことにした。
ウィルコープスの装備を剥いで、焚火に投げ込む。
奴ら装備は、貴重な戦利品だった。
ウィルコープスは、前のカウントで途中退場したプレイヤーの装備をそのまま纏っている。
大部分は、三流品のようだが、稀に、素人目にも良品と思えるような刀剣が目に付く。
どうやら、中には、二度と手に入らないような、貴重な武具を身に着けているウィルコープスも存在しているようだ。
まぁ、たとえば……
オレが途中で殺されて退場すれば、次のカウントでは、サンダーソニアを振り回すオレが出現することになる。
戦利品の権利は、守備隊が優先で、残ったものはエレメントの軍が接収することになるらしい。
しかし、僅か16人の生存者に対して、300体の武器や防具だ。
大量にある。
なので、守備隊の後でなら、自由に持って行って良いと言われた。
いや……
何も欲しいとは思わない。
サンダーソニアだけで充分だ。
ストームは、何か欲しがるのだろうか。
あとで聞いてみよう。




