表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/168

4.3.06


 目を開けると救護所テントの中だった。


 テントの中央で仰向け。

 痛みはない。疲労もない。

 腹も減っていない。


 左脚のスネの辺りに何かが載っている。

 カラダを起こすと、視線の先に男の頭部。


 シャルマだった。

 胡坐あぐらを組んで瞑想した状態のまま、上半身を突っ伏している。

 左脚を引き抜くと、シャルマの頭がごろんと地面に転がる。


「シャルマ?」


 声を掛けたが、どう見ても起きている状態ではない。

 ログアウトしているのだろうか。


 シャルマが、救護所テントに張り巡らした魔法は、強力な結界だった。

 あれがなければ、どうなっていたことか。

 自らの生命をすり減らすような魔法だったのだろうか。


 オレは、自分の手やカラダを確認した。

 両手の指は十本。全て揃っている。

 ログアウト前は、全身に切り傷があったが、どこにも傷はなく、服が破けているだけだった。


 ……不思議な世界だ。

 こういうところはゲームの世界だ。


 立ち上がろうと、右手を地面に突き立てて体重を掛けたところで、テントの入り口の幕が捲られる。

 見ると、ストーム(真結)だった。


「う~……もう限界……」


「どうした。なにが限界だ」

「あ……総司。ログインしたんだ。カラダは大丈夫?」

「ああ、もう大丈夫だ。外の様子はどうだ?」

「……日本の女子高生に耐えられる場所じゃない」


 そりゃそうだろう……ウィルコープスだけでも300体。

 それ以外に、プレイヤーの死体も転がっている。


「未希は?」

「匂いを変える魔法を唱え続けてる……んだけど、妙なことになってる」

「妙なこと?」


「最初は、このテントの中だけ、水筒の水と同じ匂いに変更した……んだけど、外の……ウィルコープスのやつとか……燃えっちゃってるやつとか……匂いに耐えられないから、無臭にする魔法を何度も唱えてるんだけど……」


「それで?」


「みきさんが、唱えた対象以外の物まで、無臭になるようになっちゃって、魔法を唱えなくても、みきさんが近くを歩くだけで、匂いが無くなる」


「……どういうことだ?」

「魔法の汚染……だと思う。同じ場所で同じ魔法を繰り返すと、魔法がバグる」

「汚染? バグ? まったく分からん……」


「この世界の魔法は、土地が学習してる」

「余計わからん……」


「……とにかく……同じ魔法だけを、同じ地域で連発するのは良くないってこと」


 話していると、未希もテントの入り口に顔を見せた。


「あ、おにいちゃんおはよう」


 テントの外は死体の山だろうに、元気そうだ。


「外は、どうなってる?」


「燃やしてる……」



 それからオレは、ふたりから今の状況を説明してもらう。

 守備隊の生存者は、リュウジを含めて12人。

 オレ達3人と、ソフィアを入れると、16人が生き残った。

 プレイヤーは、20人近く死んで、このカウントから退場したらしい。


 まぁ、しかし、300体のウィルコープスに襲われたのだ。

 全滅しなかっただけでも、奇跡だ。


 戦闘が終わり、朝までかけて、火災を鎮火し、ウィルコープスの残骸を焼却している最中のようだ。

 今は、死体の匂いが消えてしまって、どこに転がっているか分かりにくい。

 問題はそれくらいらしい。


 未希も役に立っているようで何よりだ。

 それよりも。


「未希、大丈夫か?」

「うん……みきは、考えないようにするの得意だから……」


 ……


「あ、それより、おにいちゃん」

「なんだ?」


「アーネストさん達が、こっちに向かって歩いて来てる。ミラーさんも歩いて来てるよ」


「アーネストって、遠征隊の?」


「うん、まだちょっと遠いけど。だから、おにいちゃん起きてるかもって思って、伝えに来た」


「生きてたのか……歩いてくるのは何人だ?」

「4人、アーネストさんと、ウェストンさん、あとミラーさんと、そのお友達の人」


「行こう」


 遠征隊も、前哨基地も壊滅した。


 これから、どうなっていくのか。

 オレ達は、どう行動していったらいいのか。


 フランス人達のことも含めて、話すことは山ほどある。


 とにかく、話を聞く。

 今後どうするか、どうするべきか。



 こんな戦場跡に、いつまでも留まっていたくはない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ