表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
153/167

4.2.36


 ソフィアが4体ずつ誘導し、目を潰して始末していく。

 それも4回までだった。


 ゲート前が崩壊しかけている。

 守備隊の手に負えないほどの数のウィルコープス。

 囲まれるのを防ぐためか、守備隊は、方々に散り始め、集団戦から個人戦に切り替えたようだ。


 ソフィアが誘導せずとも、溢れたウィルコープスがこちらへ駆け寄って来る。


 外からも、まだウィルコープスが流れ込んでくる。


 ウィルコープスは、移動が遅い。

 守備隊は、密集して囲まれるよりも、距離を取り安全に倒すのを選んだのだろうか。


 そして、ここを目指しているウィルコープスは、十数体。


 そしてオレ達は……オレはここを動けない。

 未希とストームを担いで逃げるにしても難しい。

 基地に雪崩れ込むウィルコープスが多すぎる。

 想像以上だった。

 ゲート前は、ウィルコープスで埋め尽くされていた。


 近付いてきたウィルコープスを、リュウジが体当たりで弾き倒す。

 その隣の1体の左胸に匕首を突き立て、そいつもそのまま突き飛ばす。

 倒れ込んだ1体に、オオカミが覆いかぶさり、喉元を噛みちぎる。


 オレの前にも2体。

 地面の残った灰が、自動で舞い上がり、ウィルコープスの眼球を覆い、動きが緩慢になる。

 もう1体は、灰が無くなった地面をすり抜け、オレの左胸に剣を突き出す。


 半身を捻って、突きを躱し、腕を切り落とす。

 そのまま、刃を寝かせ、胴を薙ぐ。

 倒れ込もうとするウィルコープスを蹴り飛ばし、灰で視界を潰された1体の首を跳ね飛ばす。


「少し前へ出る。援護してくれソフィア」

「オーケイ」


 テントの前は、すでにウィルコープスの死体が複数散らばっている。

 足の踏み場が少なくなっていた。


 複数体のウィルコープスを迎え打つ。

 ソフィアが、砂を撒き散らす。

 向かってくるウィルコープスの大半の視界が奪われた。


 優先すべきは、視力を奪えなかったウィルコープス。


 まずは手斧のウィルコープス。

 いつものフェイントをしかけたが、引っかからなかった。

 オレの袈裟切りが躱される。

 斧頭で、左側頭部を殴られる。

 仰け反りそうなのを堪えて、左脚を踏み込み、ハラを薙ぐ。


 次の相手は、細い刺突剣。

 オレの首元を狙って剣先が飛ぶ。重心は右前に掛かっていたが、首だけ逸らしてギリギリ躱す。

 そのまま、右下にカラダを沈みこませて、左腕でサンダーソニアを振るう。

 あいかわらず、斬った感触が無い。

 切れ味抜群だ。


 次のウィルコープスは両手剣の大男。

 力任せに突進し、左上から剣を振り下ろして来る。

 コレは簡単そうだ。


 その一撃を、サンダーソニアで右下に受け流し、伸びた両腕を切り落とす。

 そのまま刃を寝かせて、ハラを斬り裂く。

 腕からハラへの連続斬りだけは得意だ。


 足元のウィルコープスが更に増えていく。

 少し下がる。

 駆け寄ってきた2体のウィルコープスが、死体に躓き、前のめりに転ぶ。

 先に起き上がろうとしたウィルコープスの背中を踏みつけて、首筋を突き刺す。

 起き上がりかけて膝立ちのウィルコープスの首を跳ね飛ばす。


 見渡すと、斬り掛かってくるのは、今ので最後だった。

 基地のあちこちから、怒号が聞こえる。

 守備隊がそこかしこで戦っている。


 その時、少し離れたテントから、真っ白い光の玉が、上空に飛んだ。


 白色の玉。明るい。

 基地全体が、ナイター球場のように明るく照らされた。


 誰の魔法か、すぐに分かった。

 シャルマだ。

 オレの右肩の痛みを消してくれたあの魔法と同じ感覚が、夜空から伝わる。

 その光りで、見渡せる範囲のウィルコープスの群れが照らされた。

 塀のあたりから、いくつかの魔法のようなものが放たれ、何体かのウィルコープスが薙ぎ倒される。


 まだまだ多いが、だいぶ減っていると思う。

 少しは戦意も上がりそうだ。


 それでも、オレ達のテントを目指して、10体を軽く超えるウィルコープスが駆け寄ってくる。

 距離はまだ少しある。

 呼吸を整えながら、少し下がる。


 ソフィアが、短い短剣を構えて、視界を潰されたウィルコープスを処理していた。


 どこかからリュウジの怒号。

 どこにいるんだろうか。探す余裕もない。

 オオカミの唸り声も、どこかから聞こえる。


 テントの前は、夥しい数の死体の山。


 オレの顔の左頬。

 温かい液体が流れ落ちている。

 さっき、殴られたところだろうか。

 痛みは感じない。


 一度、ソフィアの所へ戻り、ソフィアを手伝う。


「まだ、いけるか?」

「……他に選択肢ある?」


 ソフィアが、手を広げる。

 その手には、すでに砂が載っている。


 その砂が、向かってくるウィルコープスの眼球に降り注ぐ。

 目を潰されたウィルコープス達が、テント前に転がる死体に足を取られ、次々と転倒していく。


 オレは、目を潰し損ねた数体のウィルコープスに斬りかかる。


 やることは同じだ。


 1体、また1体。

 ときどき、反撃を受ける。

 腕や、足。背中。

 左手の指にも、衝撃を感じた。


 しかし、痛みは感じない。

 少し殴られただけだろう。

 それとも、アドレナリンか。

 暗闇の先すらも、良く見える。


 振り向いて、腕を斬り飛ばし、その反動のまま、次のウィルコープスの首をまた斬り飛ばす。

 他の場所は、どうなっているのか、わからない。

 ただ、眼前のウィルコープスを、どうやって斬り伏せるかのか。

 考えるのはそれだけ。


 気付くと、燃え上がるウィルコープスが、武器も持たずに歩いていた。

 焚火の上を歩いたのだろうか。

 そのウィルコープスが、転がってるウィルコープスに躓き、転がる。


 その火が瞬く間に、テント前に積み重なる死体に引火していく。

 塩味の効いた焼き鳥屋の匂い。

 食欲は、まるでそそられない。

 しばらく肉も、軟骨も食べられそうにない。


 燃え広がるウィルコープスから、小さな火の粉が飛んでいる。

 テントを焦がしている。いつ燃え移るか分からない。


「ソフィア!」


 ソフィアの顔が青い。

 魔法の使い過ぎか。


 いや、今はそれどころじゃない。


 未希と、ストームをテントから運び出さないと。


「リュウジ! どこだ!」


「おぅ! 裏だ!」


 良かった。

 リュウジも、まだ生きている……



「手を貸してくれ!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ