4.2.31 光る葉っぱ
食事を終えてから、5人で相談する。
「前哨基地を見つけるには、どうしたらいい?」
「……大まかな方角しかわからない」
「ミキの魔法で探せないの?」
「う~ん……」
「シャルマはどうだ? なにか探す方法は無いか?」
「すいません……私にはそういうのは無理です」
分かっているのは、大まかな方角。
おそらく、西から南のどこか。
それと、距離。
前哨基地から、小川のキャンプ地まで、朝から歩いて到着したのは日没頃だった。
オレ達の場所からも、最短で向かえばその程度で到着できるだろう。
「適当に南西に歩いても、到着できる可能性は低い。なにか無いか?」
オレ以外の4人、全員、魔法を行使できる。
簡単な打開策は無いか、魔法に頼る。
「なにか方法はないか、ストーム」
「……ソフィアの魔法で、探せないかな」
「私? どうやって?」
「衣服の埃とか、焚火の灰とか、人工的な粒子を探す。風向きでブレるかもしれないけど」
「うーん……ムリかも……そんなに遠くまでは探知できないし、風で方角も分からないわ」
「ねぇねぇ、4人全員でやってみない?」
未希が突拍子も無いことを言い放つ。
しばらく沈黙したが、ストームが顔を上げた。
「アリかも……ちょっとまって、考える……」
数分後。
ストームが、まとめた考え。
魔術師4人の技と知恵を結集して、前哨基地の方角を割り出す方法。
それを皆に伝えた。
ソフィアは、葉を、宙に浮かせる。
シャルマは、葉に、祈りと導きを込める。
未希が、葉に願う。前哨基地の方角を教えて。
最後に、ストームが、葉に、加速を与える。
ソフィアが少し呆れた顔で、ストームに問いかけた。
「まってまって……複数人で魔法かけるなんて、始めて聞いたけど、本当にできるのかしら」
「天才のみきさんがラップする。ぜったいうまくいく」
「私でも、お役にたてるのですか……?」
「おもしろそう。やってみたい」
好きにしてくれ……
「じゃあまず、ソフィアから。次にシャルマ、みきさんは3番目。いい?」
「オーケィ」
「わかりました」
「うん」
「4人で呼吸を合わせる。総司は邪魔だから、ちょっと離れてて」
「わかったよ……」
オレは立ち上がって、少し離れる。
焚火を囲む4人の見物を始めた。
最初にソフィアが目を閉じた。
葉が宙に舞う。
1枚……2枚……3枚……
おいおい……
焚火の周囲で、何十枚もの葉が、宙に舞った。
シャルマが立ち上がり、夜空に両腕を広げる。
そして目を閉じた。
夜空に散った葉が、仄かな白い光を放ち始めた。
星が増えたかのように光っている。
未希が葉を見上げて、両手を顎の前で組む。
そして目を閉じた。
光が一段と強くなり、葉が歪みだす。
歪んだ光が、キャンプを照らし、昼間のように明るくなった。
宙に浮かぶ葉の全てが、微風にあおられたように、ふわふわと向きを変えていく。
やがて、全ての葉が、一様に、同じ方を向いていた。
最後にストーム。
手は降ろしたまま。夜空を向く。
そして目を閉じた。
風が吹いたわけでもないのに、全ての葉が、闇に吸い込まれるように飛び出していった。
「ソウジっ、焚火を中心に、葉が飛んで行った方向に立って、早く!」
ソフィアが叫ぶ。
言われるがままに、焚火に戻り、葉の飛んでいく方向に歩く。
数歩歩いて、立ち止まる。
葉はすでに、遙か彼方だった。
遠くの闇で、瞬きを繰り返し、キラキラと光っている。
「やったわね……すごい、すごいわ……奇跡よこんなの!」
ソフィアがはしゃぐ。
はしゃぎながら、オレの足元に、棒きれを突き立てた。
「葉っぱ2~3枚でよかったのに! なんであんなに沢山!」
ストームもはしゃぐ。
ストームが、そのすぐ近くに棒きれを突き立てる。
「じゃあ、みきも」
未希が、枝分かれした枯れ木を、オレの足元にそっと置いた。
シャルマは、葉の飛び去った方向を向いて、ブツブツと何か言っている。
「成功したのか? 本当にあってるのか? あの方向で?」
「明日の朝、陽が昇ったら、もう一度確認してみましょう」
「……刺した棒の影が南西なら、ほぼ当たり。わたし達すごすぎ」
「おにいちゃん、もういいよ。動いても」
シャルマは、まだブツブツと何か言っている。
「そうか……オレも役に立てて嬉しいよ」
3人がはしゃいでいる。
シャルマとオレは、仲間外れだ。
シャルマが居てくれて良かった。
敢闘賞は、たぶんシャルマだ。
オレもせいぜい2〜3枚の葉っぱだと思ったのに、ソフィアが浮かせたのは数十枚。
それに即座に対応した。
この男も、まだまだ力を隠している。
3人の興奮がなかなか収まらないまま、夜が更けていった。
すぐ近くには、森の闇。
飛び去った葉の光はもう見えない。
突き刺した棒が、焚火の灯りの影を落としている。
本当に、前哨基地の方角なのだろうか。
まぁいいか。
明日になれば、分かるだろう。




