4.2.21
その日の夜。
明日の打合せをした。
オレはただ聞いていただけ。
口をはさんでもいいことは無い。
だから聞くだけ。
分からない単語は、無視した。
アーネストは、エルハム達の捜索に向かうと告げた。
メンバーは、アーネストとウェストン。
それと、生還したハートリーの3人。
戦闘は避け、エルハム達の捜索のみを優先する。
そして次はオレ達だった。
アーネストの計画に、ソフィアとクリスの捜索が無かった。
だから未希とストームがそれに志願した。
正義感なのか、好奇心なのか。
それとも、友情かなにかなのか。
あるいは、いまだにゲーム感覚なのか……
アーネストは、それを了承し、オレ達3人にミラーを加えた。
明日は4人で、ソフィアとクリスの痕跡を追う。
ミラーが加わるのは心強い。
しかし、そもそも行くべきではない。
だが、まぁ、反対はしない。
止めろと言えそうな空気でもない。
言っても、不信感を持たれるだけだろう。
エレメント・コアに近いのは、数百体に遭遇したという、エルハム達の方角だろう。
だとすると、ソフィアが消えた場所は、まだマシだと考えられる。
それともうひとつ、オレには、ソフィアを探せるアイディアがあった。
未希の魔法だ。
だが、まだこのアイディアを、未希には伝えていない。
伝えたら、すぐに唱えて、夜の森を駆け出していってしまいそうだ。
先にこっそり、ストームにだけ話した。
「いける、それで探せる……
わかった。夜は無理。
朝になったら探しに行こう」
そして翌朝。
カレンダー10日目。
食事の後、ストームが、鍋センサーの魔法をかけなおす。
服に付着した液体が乾燥したか落ちたのか、朝から鍋の液体が暴れていた。
緑色の液体を煮沸しなおし、除外タグとなる液体を、全員の衣服に垂らす。
そして、未希に、昨日のアイディアを伝える。
ソフィアを探すのではなく、ソフィアのスカーフを辿る。
スカーフには、未希が施した、香りの魔法が掛かっている。
魔法で付けた匂いを、魔法で辿る。
未希にそれを説明すると、
「うん、それ、やってみる」
と、言い放ち、目を閉じた。
なんの変化も無い……
いや、未希の回りの空気が少しぼやけたような気がする。
「感じる……こっち」
と、未希が、指を差す。
小川の上流。その少し左。
「なにを感じるんだ?」
「みきが付けた、オリジナルのアロマの香り。
この香りがするのは、ソフィアさんのスカーフだけ」
上出来だ。
その匂いを辿ろう。
匂いを感じられるのは、未希だけのようだ。
オレや、ストームには、なにも感じられなかった。
だがこれで、ソフィアの居場所へ向かえる。
消息が絶えたのは、昨日の昼過ぎだと言っていた。
場所も、そう遠くは無いだろう。
朝食を済ませて、出発の準備をする。
昼食用の干し肉をズタ袋に入れる。
革水筒は洗浄して、新たにハーブティーを注いだ。
「成否に関わらず、今日中に戻る。君たちもそうしろ」
そう言い残して、先にアーネスト達が、キャンプ地を立った。
キャンプに残るのは、医療チームの3人と、フランス人の2人。
彼らを残し、オレ達も、川上へと出発した。
先頭はミラー。
未希とストームを間に挟み、最後尾はオレ。
肩のケガはあるが、まぁ、問題ないだろう。
朝、インド人に、痛み止めの魔法を掛けなおしてもらった。
便利な魔法だ。
でも、剣はできるだけ左手で使えと、念押しされた。
痛みはなくとも、ケガは、ケガだ。本来は痛みで可動が抑制される。
だが痛くない。だから右腕も使えそうだ。しかし、使えば確実にケガが悪化する。
ストームに、同じ魔法ができるかと尋ねたが、「絶対ムリ」と言われた。
医学的な知識がないと、人体に影響する魔法は、危なくて使えない。
「痛みを止める」という魔法によって、「腕の消滅」や、「死」が選択される可能性もあるらしい。
なので、魔法が使える医者であっても、魔法での治療は、よほどのことがない限り、行わないらしい。
まぁ、たしかに……
死んだり消滅すれば、痛みは無くなる。間違ってはいない。
オレ達は歩き始めた。
昇りはじめの太陽は、木々に遮られて見えない。
未希が指し示す方向とは、すこしズレるが、しばらく川沿いを歩く。
その方が迷いにくい。
歩き続けて、正午になる少し前。
未希の示す方角が、川の流れに対して、垂直の方角になった。
そこで少し、足を止めて休息した。
未希が示す方角は、森の中だ。
いよいよ、森に踏み込む。
昼間なので、森の奥も、遠くまで良く見渡せる。
見渡す限り、ウィルコープスの姿は無い。
聞こえるのは、川の流れる音と、鳥の鳴き声。微かな葉の揺れる音。
危険だと感じる気配は無い。
「なにか、気になることはあるか?」
念のため、ミラーに聞いた。
「いや、特になにもない。
人が通った後が、ところどころにあるが、昨日のアーネスト達だろう」
「そうか……」
ならいいんだが。




