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妹が消えたあと、世界の数が合わなくなった話  作者: 渡しログ
1章ワールドカウント23
10/15

2_6 まゆ


 オレは席を立ち、少し離れてから達郎を手招きした。


「送ってってやってくれ。丁重にな」

 財布から1万円札を3枚抜き取り、達郎に渡した。

「あざっす! わかりましたっ!」

 達郎への情報料だが、ストームの分も入っている。

 配分は達郎に任せていいだろう。


「それと、ストームとの会話はぜんぶ忘れろ」

 と言って、もう1枚、万券を渡す。

「あざっーす!」

 高級外車と交換できるレアモノの話が含まれていた。

 1万円じゃ安いかもしれないが、達郎なら大丈夫だろう。


 席に戻り、ストームの連絡先を尋ね、SNSのアドレスを交換した。


 最後にひとつ、ログインリチャージについて質問した。

 次にログインできるまでの待ち時間とのことだった。

 待ち時間は30時間。

 明日の15時頃まで、ログインできないということになる。


 ストームには、明日連絡すると告げて、その夜の会話を終えた。

 いったんアパートに戻って寝よう。

 さすがに疲れた。

 ストームとの会話が事実なら、オレは殺される夢を見たのではなく、殺される経験をしたってことになる。

 


 翌朝。

 また、母親からの電話で起こされる。


 未希がまだ帰ってこないという報告。

 オレも探していて、今日の午後、家に行くかもしれないと告げて、通話を切った。


 父親も、自分の情報網を使って、捜索を初めていることだろう。


 父親の名は、大嶽和彦。

 オレと同じで高卒だが、警備会社に勤めていて、要人の身辺警護が主体の部署にいるらしい。

 オレの仕事と似ているような気もするが、陽の当たり方で言えば真逆だ。

 警察とのパイプもあり、政治家や企業の重役にもコネを持っている。

 表の情報網の広さは、オレより遙かに優れているだろう。


 まぁ、オレの仕事を知ったら、いよいよオレは勘当されるだろうが。


 SNSでストームにメッセージを投げる。

『今日の昼頃から夜くらいまで時間を空けておいてほしい。いいか?』

 まだ、朝の8時だった。寝てるだろうな。


 もう少し寝ようかと横になると、スマホが鳴った。

 ストームからの返信。

『分かりました。何をすればいいですか?』

 意外だ。


 オタクは4時に寝て夕方起きるという、ホストかキャバ嬢のようなサイクルだと聞いていた。


 そのまま、メッセージをやりとりし、13時にストームが指定した駅で待ち合わせることになった。


 どうやら興奮して寝ていないらしい。

 あれから、ストームも情報を集めていたらしく、オレと話したがっていたようだ。



 指定した時間に、駅前につくと、ストームはすでに待っていた。

 昨日と同じくフードで顔を隠してはいるが、今日は黒一色ではなく、裏地が青の白いパーカー、ベージュのクロップドパンツ。赤と白のハイカットスニーカーを履いていた。

 長い黒髪はパーカーの中に吸い込まれている。


 オレを見つけたのか、小さく頭を上下させた。

 分かりにくいが、挨拶したのだろか。


 近づいて、ストームに声をかける。

「先に、少し話したいんだけど、いい場所あるか?」

 ストームは何も言わず、首をかしげた。


 オレは周囲を見渡す。

 雑居ビルの隙間に、小さな喫茶店を見つけたので、そこへ入ることにした。

 昭和からやっているようなレトロな店内だった。


 オレはコーヒー。ストームはカフェオレを注文した。


 店員が立ち去ってから話を始めた。

「今日、15時頃に、カウント24へログインする」

 と、ストームに告げて、未希を含めたこれまでの経緯を簡単に説明した。

 それを聞いてストームが顔をあげる。


 目元は隠れているが、唇をぎゅっと結び、ほころんだ表情を作っている。

 「妹が行方不明」だと告げたはずだが、期待とワクワクがその顔から滲み出ていた。


「未希はどうしてあんな危険なところで、生き残っていられるんだ」

「女性は大抵、魔法使いかテイマーになるらしいの」


「……は?」


「魔法使い……なりたい……」


 だめだ……わからない……

 裏社会は、嫌悪されがちだが、分かりやすい世界だ。

 利用するか、されるのか。それだけだ。


 だが、ストームの話しは、常軌を逸している。

 オレは天井を見上げるしかなかった。


 その後、オレ達は、これからオレの家に行くということ。

 ストームは、未希の友達で、探す手伝いをしに未希の部屋を見に来たことにすること。

 それから、偽名でいいから、普通の呼び名をリクエストしたら、

 「まゆ」

 と、答えたので、家では、「まゆ」と呼ぶことにした。


 会計を済ませて、店を出る。

 電車で行こうと思っていたが、ストームの歩く速度があまりにも遅い。


 オレは、タクシーを止めて、オレの家に向かった。

 タクシーの中で、引き続きレクチャーを受けるが、ストームの返答が鈍い。


 横を見ると、ストームは窓にもたれ眠りこけていた。

 タクシーの揺れで、フードがずり落ち、微かなリンスの香りが漂う。

 黒髪が、艶やかに光を帯びて、パーカーの内側に吸い込まれている。


 話しておきたいことはまだあるが、そのまま寝かせておく。

 静かになったタクシーの中で、これからのことを考える。

 未希が24にいると仮定して、これから24にログインする。


 なぜだか、妙な高揚感がある。

 たぶんオレも、ストームと同じように、「ニフィル・ロード」というものに高揚している。

 高揚し、根拠もなくこの先の未来に期待している。


 だがオレは知っている。

 こういうときは大抵、最後に待っているのは、良くないことだ。



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