第9話 魔物討伐がうまくなったのである
「ふぇ~。危なかった~」
汗かと思って拭いたら血だった……ありゃ、怪我をしてた。
「『聖癒』」
『痛いの痛いの飛んで行け~』より、いい感じの詠唱かと思われる!
当主様が私を下ろし、剣を収めながら言った。
「見ていてホンット危なっかしかったが、倒したのはスゲーな」
「次はもっと華麗に戦いますよ!」
ガッツポーズをしたら感心された。
「いや、マジでスゲーわ。普通ならビビるトコだろ。一歩間違えれば死んでたぞ」
「いやいや私、これでも聖属性の魔法使いなので。かじられたくらいじゃ死にませんって」
詠唱しなくても治せるので、嚙まれたとたんに発動しますから、食いちぎられても即治りますから。
「その自信はどっからくるんだ。もしかして試したか?」
「……試したっていうか、そもそもちっちゃいときに高熱で死にかけてたのを治したのがこの魔法だったから……」
『痛いの痛いの飛んで行け~』は私が魔法使いだって気づいたきっかけだけど、最初の発動は高熱で死にかけたときなので。
「……なるほど。それで聖属性の魔法が使えるようになったのか……」
当主様が私の頭をくちゃくちゃにしながら撫でる。
「でも、気をつけろ。効かなかったら死ぬぞ。死にかけても治せるからって油断で、首を食いちぎられて頭と胴が離ればなれになったら、さすがに死ぬだろうが」
確かに。
油断しないようにしよう。
コボルトが出没しなくなったので、当主様は最後にコボルトのヘソ辺りに付いていた何かをえぐり取る。
「これを、必ず切り離せ。これが討伐した証しで、放置すると魔物が食べて、食った魔物は力をつける。下手をすると進化する可能性があるんだ」
「へー!そうなんですね!」
私もえぐり取るお手伝いをした。
取り出したら、コボルトはまとめて並べておく。
「魔物は腐りにくいし傷みにくい。置いときゃ、そのうち有志の連中が回収して何かに加工したりするよ。なんで、見つけやすく並べておいたほうがいい」
と、当主様が教えてくれた。
腐らないんだ……。
なんでだろう。微生物がお仕事しないのかね?
作業が終わった後、私は自分の有様を眺めて嘆息した。
「あぁ~、汚れちゃったよ。『聖浄』」
血と汚れでものすごく汚くなったので『聖浄』を唱えたら、なぜか黒くて汚かった魔石が透明な輝きを持つ石になった。
「あらら? やらかしたかも?」
当主様が驚いて私の持っている魔石を確認し、
「……ま、これはこれでいいだろ。俺にもかけてくれ」
と言ってきた。
「『聖浄』」
ついでにセラフにもかけた。
当主様は足取りも軽やかに帰り道を歩いています。
「いやー、スッキリした! 爽快だな、これは!」
「それは何よりです」
一番使うし、一番得意な魔法ですからね!
分かれた場所へ戻ったら、もうみなさん戻ってきていた。
それなりに汚れているので、
「えーと、綺麗にします? そんな魔法が使えますけど」
そう聞いたら、キョトンとされたあと顔を見合わせて、そして、よく解らないけど……っていった感じでうなずかれた。
「えー、コホン。じゃあいきます。『聖浄』」
全員にかけると、全員綺麗になった。
みなさん驚いている。
「うぉ……」
「すげ……」
って感心されましたよ、やったね!
当主様が苦笑している。
「娘は、稀代の魔法使いなんだ。ここにいる間は時々討伐に連れて行くから、そんときはサービスでかけてやるよ」
って当主様が言うと、ワァッと喜ばれた。
――その後、当主様は私に剣や槍なども教えてくれて、私を討伐に連れて行くようになった。
さらには座学に魔物に関する勉強が加わったので、当主様は私を冒険者に仕立てあげたいんじゃなかろうかと思う。
*
この辺りに出る魔物はだいたいコボルトなんだけど、たまにワーベアとか出る。
ワーベアは、マジで死闘だった。
皮膚が硬くて剣が通らないんだよ!
なぜに当主様はあんなにサクサク斬れるのか……。
と考えて、剣に魔法を付与することにした。
「『聖剣』」
うん、ちょっと違う意味になりそうだけど、聖属性で切れ味を高めた剣にする魔法だから!
それでようやくスパスパ斬れるようになったのだ!
「ムハハハハ! 無敵ーーーーッ!」
油断するとすぐぶっ飛ばされるんだけどね!
ですが、おかげさまでバリアー系の魔法を覚えた。
「『聖防』」
自分に膜が出来たようになるのさ! ぶっ飛ばされてもへっちゃら!
「……お前って……。とんだファイターだよな。聖属性の魔法使いのくせに、こう……お淑やかさや儚さが皆無なんだけどよ。見た目は母親に似て可愛らしくなったっつーのに……中身がまるっきり俺じゃねーか。いや、俺よりヒドい。俺は、自分から魔物に突っ込んでいくような奴じゃなかったし、初戦で怪我したときはけっこう怖かったはずだ」
当主様は、私を見ながらブツブツ言ってる。
「当主様との違いは、聖属性の魔法使いかどうかでしょう。私、コレがあるのでわりと恐怖感がないかもです」
「慢心するな。……って言いたいが……。『聖属性の魔法ってこういう使い方だっけか?』って言いたくなるくらい創意工夫して魔物を倒してるからなぁ。文句のつけようがないんだよなぁ……」
そうなの。
討伐によって、私はぐぐんと魔法を伸ばしたのである! イェーイ!
――こんなんを繰り返し、私が多くの武器の使い方と、そして喧嘩術まで指南され、討伐に役立つ魔法をわんさかと編み出し、これって貴族として必須なのかと首を捻りながらもさらに年月は過ぎて、私は学園に通う年齢となったのである。




