第8話 魔物討伐についてったのである
ある日、魔物が出たということで当主様が討伐に出かけることになった。
後学のため、私も随従する。
これはもともと頼んであったことで、奥様にはかなり渋られたが、当主様も聖属性の魔法使いは討伐に連れていかれることもあるかもしれないから今から慣らしておいたほうがいいと、随従を決定した。
「私の冒険が、今、始まる……!」
ワクワクしていたら笑われた。
「まるっきり冒険者に憧れるガキだな。ちゃんと俺のそばを離れるなよ」
「はぁい」
セラフも一緒だ。
なぜか私はセラフに乗って移動している。
徒歩移動なのだが、私は何しろ十歳の少女ゆえ、気遣って仔馬に乗れと言われたのですよ。
ところが、仔馬に乗ろうとしたらセラフが威嚇するのよ。
仔馬も怯えるので、馬車にするかって話していたら、セラフが自分に乗れ、と。
「いやいや、仔猫にしては大きいけど乗れるほどじゃないから無理でしょ……ってデッカ!」
セラフが急に巨大化したし!
……というわけで、セラフに乗って移動しているのである!
「セラフは、魔物だったのか〜」
「いや、魔物とは違うから安心しろ」
つぶやきを拾って当主様が返してくれたけど、普通の動物って大きさを自由に変えられないよね?
「魔物とそうじゃねぇのとの区別がつかねぇか? 魔物は瘴気から生まれ、人間に害を与える生物だ。その勉強も入れるように言っとくわ」
あ、座学が増えました。いいけど。
山間部にやってきた。
ちなみに、ヴァリアント男爵領には職業的騎士はいないんだけど、代わりに有志で狩りに参加する人がいる。今日は十人くらいだってさ。
「多少の怪我なら娘が治せる。だが、油断するなよ」
「「「おう!」」」
旦那様が声をかけ、数人単位でまとまって捜索する。
散っていく後ろ姿を見ながらつぶやいた。
「……みなさん、気合いが入ってますね……」
有志だから、もっといいかげんな感じかと思ってたけど、かなり慣れているし積極的な気がする。
「魔物の討伐は、金が入るんだよ。うちの領地にはギルドはねぇが、その代わり俺が声をかけて人を集めて訓練したり討伐を依頼したり、あとは討伐したって証しを持って来りゃ、褒賞を渡している。『どこどこに魔物が現れた』って情報だけでも渡してるよ。……魔物は放置してると家畜や人に害をなし、しかも増えるから、見つけたら即討伐だ」
「ほぇー……」
知らなかった。
「うちの領は村一つで領地が狭いってのと、俺がいるってんでギルドを建ててくれねーんだよ。一応、領地の仕事だってやってんだぜ? そんなに暇じゃねーっつの」
盛大に愚痴りながら当主様が歩き、私はセラフに乗ってついていきます。
そして出た。
「毛むくじゃら人間!」
「コボルトだ」
当主様が訂正しながら、目にも留まらぬ速さで斬った。
うわー、マジで強い。
……私もこの強さを手に入れられるのか……血はつながっているので、たぶんいけるはず!
「『聖闘』」
身体強化をかけつつ、私もセラフから下りて棒を構えた。
セラフも警戒している。
「投げナイフにしとけ。ここじゃ、棒は不利だ」
当主様からアドバイスが飛んだ。
チッ。
棒で戦いたかったけどアドバイスに従って棒を再度背中に背負い、腰に巻いていた投げナイフを抜いた。
当主様とは反対側を向き構えていると、出た。
こちらに向かって走ってくる。
ナイフを投げると、正確に片目を貫いた。
「ギャッ!」
コボルトが悲鳴をあげる。
再度ナイフを投げると、のけ反ったコボルトの喉元にナイフが突き刺さった。
コボルトは血を噴いて倒れる。
「っしゃあ!」
ガッツポーズ!
死んだかわからないけど、戦闘不能にしたぞー。
おぉ、当主様はちょっと目を離した隙に五匹ばかり狩ってらっしゃる。
というか、余裕だ。
私と目が合った。
「血の気の多いお嬢様だな」
「え、私のことじゃないですよね?」
「他に誰がいるんだよ」
そう言うと、私が倒したコボルトに近づいた。
「うん、死んでるな。目玉も喉も致命傷だ」
「やったー!」
バンザイしたら、笑われた。
「……対人戦の護身術のみにしようかと思ったけど、才能があるし、ちゃんと魔物を狩れる他の武器も教えたほうがいいかね?」
「ぜひともよろしくお願いします!」
食い気味に答えた。
そして、いきなり実戦。
当主様の持つ予備の剣を渡され、コボルトと戦うことになった。
斬りかかったら、避けられて吹っ飛ばされる。
「くそー」
身体強化していても、コボルトのほうが素早い。
「よく相手を観察しろ」
アドバイスが飛んだ。
……そうか、カウンターを狙うぞ!
そこから、コボルトが嚙みつこうとしたタイミングで剣を胸に突き刺す。
相手の勢いもあって、スッと突き刺さった。
……と!
掴んできた!
そのままかじられそうになり……!
「喰らえ! リリスキーック!」
地面を蹴り、思いきり押し返すように股間を蹴った。
「ギャーッ!!」
すごい悲鳴をあげ、私を突き放すようにしてのけ反って倒れた。
私は後ろに倒れ込まず、抱きかかえられる。
当主様が思いのほか近くに……というか、私の真後ろに立って剣を構えていたのだ。
コボルトの傷口から、血がドバーッと出る。うん、死んだね。




