第62話 どこも貴族は問題だらけなのである
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さっきから当主様がめっちゃ辺境伯当主様を蹴っているのが気になりますが、顔合わせはしたので私は部屋に戻ります。
「レイブンー。お父さんが来てるよ」
レイヴンは、セラフをブラッシングしている。
セラフがゴロゴロいってます。聖獣とは思えないわー。
「リリスの父上か?」
「ううん、辺境伯当主様」
ピタリとレイヴンの手が止まった。
……うん?
もしかして、仲良くないのかな?
「父様が、援軍で連れてきたってさ。……ねぇ、レイヴン」
私はレイヴンの隣に座り、顔をのぞき込んだ。
「私が言いたいのは……レイヴンの口調、どうにかして直しなよ。あの辺境伯当主様、レイヴンとおんなじこと言ってたよ。父様が怒って辺境伯当主様をめっちゃ蹴ってたよ。あの口調は良くないと思うの。レイヴンは直したほうがいいよ?」
レイヴンが目をパチパチとまばたきして、クスリと笑う。
「わかった。できるかぎり気をつけるよ」
それは良かった。
……まぁね、父親がナンパ野郎って嫌よねー。
私も、父がタラシ野郎なの、めっちゃ嫌だもん!
私が見ている前でやったら、伝家の宝刀を抜くからな!
「レイヴンも、自分の父親がナンパ野郎なのに思うことはあるだろうけど……いざとなったら代々伝わる宝剣を抜けばいいのよ」
私は立ち上がって刀を鞘から抜く仕草をする。
「父親を宝剣で刺し殺せと? ……リリス、意外と過激だな」
レイヴンが呆れ顔になったので、私は人差し指を振る。
「ある意味ねー。……ちなみに、代々伝わる宝剣ってセリフのことだから。こう言い放てば良いのよ」
私は息を吸い、思いっきり言った。
「パパ、嫌い!!」
とたんにドタドタと音がして、ガンガン扉がノックされる。
「リリス!? お前、今なんか言ったか?」
「いいえー。お気になさらず」
「気にするわ!」
私は親指でドアを示した。
「こういう感じ」
「……いや、私が言ってあぁなると思うか?」
「大丈夫。絶対になるね!」
断言した。
ドアを開けて、当主様に弁解した。
「レイヴンの父親がナンパ野郎、私の父親がタラシ野郎。なんか、腹が立っちゃって」
「ロムルスは依然としてナンパ野郎だけど、俺は返上したからな!? 嫌いとか言うなよ!!」
両肩をつかまれてガクガク揺さぶられる。
「ちょっと待て。私は女性に対して失礼のないような口調で話しているだけだ。女性をナンパしたことなどないぞ」
辺境伯当主様がめっちゃ早口で弁解しています。
「嘘つけぇ。俺は知ってんだぞ。俺が口説こうと思った女をお前が口説いてるのをな」
うわぁ、最低。
私が絶対零度の視線を送ると、二人が気付いて咳払いした。
「……まだ結婚していないころの話だな」
「君くらいの年齢の時の話だよ」
なるほど、それならしょうがないか。
「辺境伯当主様も気をつけたほうがいいですよ? あちこちの女性にあんな口調で話していたら、娘に嫌われますから!」
「助言ありがとう。肝に銘じておく」
即返してきた。
ほら、辺境伯当主様は娘に嫌われたくないらしいよ、レイヴン!
*
翌日から、当主様はあちこち調べている、らしい。
何せドラゴンスレイヤーなので! 伝手がいっぱいあるみたいよ?
でもって、護衛に辺境伯当主様がついたわよ。豪勢だわー。
そうそう、父様だけでなく辺境伯当主様の食事の用意も私がすることになった。というか、さすがに辺境伯当主様に「自分でやれ」とは言いません。レイヴンの食事も私が用意しているし。
ついでに一緒に食事をとりつつ、世間話しております。
「辺境伯当主様も、体型はスラッとしているんですね」
当主様はガッチリ系だけど、辺境伯当主様はレイヴンと同じくスレンダー系。
「一族で、特殊なスキルがあるんだ。誰しもが受け継ぐわけではないが、受け継いだ者はこういう体型だな」
「なるほど」
レイヴンが受け継いだということか。
「大食いなのも遺伝なんですか?」
「そういうことさ、かわいいお嬢さん……いや、リリス嬢」
言い直した。
私の目が細くなったからではないはず。
ちなみに、レイヴンは父親と一緒に食べたくないらしく、時間帯をずらして父親がいなくなってから食べに降りてくるんだよね。
あの食いしん坊が! 食事時間を遅らせるとか!
……たぶん、この口調が良くないと思うのよ。
なので、うっかりナンパ口調になったときに思いきりスンとした顔をしてわからせることにしたのである。
「だいぶまともに話せるようになりましたね!」
「……今までもまともに話していたけどな。だが、褒めるのを嫌がる女性もいるということがわかったのは収穫だ。ありがとう」
お礼を言われた。
「レイヴンは、自分が言うのは良くても言われるのは嫌なんでしょうね……。というか、私も父様が辺境伯当主様みたいなことを他の女性に言っていたら嫌かな……」
「これからも指摘をお願いする」
辺境伯当主様がキリッとした顔で言った。
――と、まぁ、私はわりと辺境伯当主様と話すんだけどね。
レイヴンが、ほぼ口をきかないのよ。
いや、確かに父親がナンパ野郎ってムカつくし嫌うだろうけどさー。そんな露骨に態度に出さなくても……とは思ったりする。
「……レイヴン、気持ちはわかるけど、もうちょい態度を隠そうよ」
そうしたらレイヴンがジロッと睨んできたよ。
「リリスはわかってないが、わかってくれないほうがいいのでそう思っていてくれ」
「どういうことよ?」
私がいぶかしむと、レイヴンがフッと笑う。
「君がかわいいということさ」
ハァ~っとため息をついた。
そして、レイヴンの胸を指で突く。
「それが、父親ソックリって言ってんの! アンタもやめなさい!」
レイヴンが肩をすくめる。
「私は別に、父の口調は嫌いではないが」
「ええ!? じゃあ何を嫌ってるのさ!?」
そこが最大の問題点じゃないの!?
「……そこは、家庭事情さ。だから口出し無用」
なるほどね。
「了解。どこもそれぞれあるわよね。男爵家も問題だらけだし」
私がそう言うと、レイヴンが笑ってうなずいた。




