第6話 低級魔法が使えるようになったのである
結局。
お嬢様は、私に謝罪した。
「申し訳ございませんでした。二度と妄想と現実を混同しないようにいたします」
ものすごく悔しそうなので絶対に本心じゃないけど、私もお嬢様が追い出されるのは勘弁だったりするので、それで終わりにした。
だって!
私、冒険者になりたいんだもん。
百歩譲って冒険者じゃなくてもいい。旅をしたいの。
当主様の話は、前世の私の心をかき立てた。
お嬢様がいなくなると、私がこの家を継がないといけなくなるじゃない?
冗談じゃない、私は旅に出たいんだー!
学園を卒業したら、その足で旅に出てやる!
……というわけで、私がこの家に居続けなければならないのなら、お嬢様を追い出すのではなく、会わないように取りはからってくれと頼んだ。
互いに互いの話を一切しない!
それが平穏な解決方法デス!
とはいえ、お嬢様は妄想癖があり、それが私が悪役で登場する悲劇のヒロイン方向にいっていて、しかも現実と混同しているのは確かだったりするので、しっかり矯正するらしい。
まずは、お嬢様の部屋が移動になった。
最奥の、鍵のかかる部屋で、窓もはめ殺しだ。
荷物を運ぶ際、何が運び込まれたのかをすべてリストアップし、メイドさんが掃除の時、必ず点検するという。
そこまでやって、盗まれていないことを証明すれば、お嬢様も納得して心の安寧を得られるでしょう……ということだけど。
うーん、どうでしょうかね?
そういう問題じゃないって気がするわー。
奥様、頑張ってください。私は家を継ぎたくありません。
私の暴言は聞かなかったことにされた。
そこを問いただすとまたこじれるので、もう何もかもをなかったことにしたようだ。
ただ、奥様には言われた。
「間違っても王都ローヤル学園では乱暴な言葉遣いをしないようにしなさい! ……いいですか、男爵家は貴族でも最低位に位置します。つまり、他の全ての貴族は高位になります。高位の方々に乱暴な言葉遣いで話しかけたら、貴女だけでなく貴女の母親も含めた私たち全員が処罰されるんですよ!」
……学園、行きたくないなぁ。
私は理不尽なことを言われるとすぐキレるので、貴族には非常に向いていない。
やっぱり、冒険者になりたいよ。
そう思いつつも座学とマナーを頑張る。
ついでに当主様からの、戦い方の基本や冒険者のハウツーも学ぶ。
当主様の使える魔法は、最初さっぱり出来なかった。
当主様は、
「低級なら誰でも出来る」
みたいなことを言っていたんだけど私があまりにも習得できないのを見て、
「属性が特化型だとそっちに引っぱられるみたいで、他のが使えないかもしんねーな」
とか、急に言い出した!
「いや、俺は属性なしだったからよ。低級しか使えねーけど、低級ならだいたい使えるんだわ」
って弁解してるよ……。
なら、私も属性なしが良かったよ!
属性なしなら、かの有名な『鑑定』や『アイテムボックス』が使えたかもしれないのに……!
――と思っていたのですが、特化型は特化型で、やりようがありました。
「……むむ。『聖火』」
発想の転換よ。
聖属性特化ならば、全ての魔法に聖属性をつけて使えばいいじゃない!
というわけで、まずは火魔法を使えるようになった!
ボワッと、白緑色の火が出た。
当主様は啞然として火を見ながらつぶやいた。
「……低級なら使えるっつったが、これは……低級なのか?」
「低級でしょう! なにせ、攻撃魔法じゃないですから!」
投げつければ攻撃出来るかもしれないけど!
「お次は……『聖水』」
水がミストのようにふわーっと漂い、最終的に塊が目の前に出る。
「やたらキラキラしてるな……聖水って確か、『聖石』と呼ばれる石から少しずつ染み出しているのを汲んでいる、って話だったんだが」
「それと一緒かは知りませんよ。これは『聖属性で作った水』って意味です!」
ちなみに、これを出すとセラフが大喜びし、水をがぶがぶ飲むのだった。
「そして……とうとう会得しました。『聖闘』」
身体強化の魔法だぜ!
「お! おぉー……? なんか、神々しいような気がすんだけど……」
「細かいことは気にしないのである!」
私は棒を構えて当主様に挑んだ。
「これで、当主様に一太刀くれてやれますよ!」
「あーうん。無理だと思うが、かかってこい」
「そいやあ!」
向かって行ったけど、コロンと転がされた。
「なんでー!?」
「なんでもへったくれも……。俺、これでも国一番の強さだったからな? 身体強化した程度のチビッコに負けるワケがねーだろが」
「ムキー!」
くやしいー!




