第58話 レイヴンを招待したのである
【告知】
『脳筋聖女は、すべてを物理で解決する。』が発売中です。
何卒よろしくお願いします!!!!
https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3580408/
購入特典やキャンペーンなどもあります!
レイヴンは、さすが旅慣れているなという感じでサッサとやってきた。
私は食堂にクランの皆さんを集め、
「みなさーん、ちゅうもーく! こちら、私の学友であり冒険パートナーでもあるレイヴン・シルバーウインド辺境伯令嬢です! バケーションの期間、私の部屋に泊まりますから、くれぐれも失礼のないようにね! めっちゃ強いし、貴族様ですからねー!」
と、紹介した。
「おーっす」「うぃーっす」
という、気の抜けた返事をする皆さん。
私はレイヴンを引っぱり、ギークリーさんを紹介した。
「レイヴン、何かあったらこの人を頼りにして。ギークリーさんって言って、クランのリーダーだから」
レイヴンはギークリーさんを見るだけだったが、ギークリーさんはレイヴンに挨拶した。
「噂の〝銀月鬼〟か。よろしく頼む」
「あ、ギークリーさんもレイヴンのあだ名知ってるんだ? ……じゃあ、私のも?」
とたんにあちこちで失笑が!
「コラーッ! 広めたの、アンタたちじゃないでしょうね!?」
マジで怒るよ!?
ゲラゲラ笑うだけで答えてくれない。ギークリーさんまで笑ってるし!
レイヴンも笑ってるよ。
「いいじゃないか。かわいらしいよ」
「ハァ!? どこが!?」
破壊が全てをぶち壊してるわよ!
翌日からレイヴンと狩り。
蛇の魔物、王都周辺は見かけないらしくて困ったよ。
そういえば、竜の角亭でも蛇の料理はなかったかも……。
「やはり、尾を渡したのは失敗だったな……」
ヤバいわー。レイヴンの食への執着、ハンパないわー。
そこまで? って思ったわよ。
「まーまー。いつか捕れるでしょうし……なら、遠出してみる? 王都は融通がきくけど冒険者が多くてあんまりいい狩り場じゃないしさ」
競争率が高すぎるのよ。
ハイレベルの有名冒険者もいるし(たぶん私の下宿先に住んでいる輩だと思われ)、ちょっと強い魔物が倒したいなと思っても、そっちに取られちゃう。
「シエラ嬢の誘いに乗って、遊びに行ってみるか?」
と、レイヴンが言った。
『いろんな魔物がいるから遊びにきてね』ってヤツね。
「そうだね。……でもさすがに早すぎるから、もうちょいあとにしようか」
バケーションが始まったばかりで行くのもなんだか悪い気がする。
――と、浮かれていたのもつかの間、バケーションを台無しにする騒動が起きた。
*
事の起こりは竜の角亭。
レイヴンと一緒に夕飯を食べに行ったとき、亭主が私とレイヴンを個室に呼んだのだ。
「今日は、こっちでいいか?」
「いいけど、どうしたの?」
私がいぶかしんだら、亭主が声をひそめて言った。
「ケルベロスの胴体が見つかった」
私とレイヴンが亭主を見た。
「闇市で売りに出されたらしい。バカな連中だ……と思ったが、恐らく正体を隠す気がなかったのかもしれん。魔石を抜き取られていたので、確実な証拠は消されているしな」
亭主いわく、ケルベロスは隷属化させられていたはずだと言った。
状況を聞くかぎり、それしか考えられないと。
そして、魔物が隷属化させられている場合、魔石を解析すればわかるそうだ。
魔石に、術者の魔力の残滓が残るらしい。
「誰がやったかという決定的証拠だけ消して、どこがやったかということだけ匂わせたようだ」
レイヴンが単刀直入に尋ねる。
「どこなんだ?」
亭主はレイヴンに向かって言った。
「闇ギルドだ」
闇ギルド。
名前は物騒だね。
少なくとも聖属性とは真反対そう。
「じゃあ、そこがやったんですか?」
と、いうことになるよね。
ところが亭主は首を横に振る。
「それはわからねえ。やった奴が後始末だけ頼んだ可能性もある。闇ギルドは、まさしく裏稼業の連中のギルドだ。どんな依頼があって、誰が受けたかなんて絶対に知られねえ。ただ、闇市は闇ギルドが開催している無許可の市場だ。ただ、闇市で売っていたとするのなら、闇ギルドが関係しているのは間違いない」
レイヴンが考え込んでいる。
……と思ったら顔を上げた。
「闇ギルドに、誰が売ったかを尋ねることは出来ないのか?」
亭主がまた首を横に振る。
「知らねーの一点張りだろうよ。あそこは、金が全てだ。依頼人の名前も聞かない。ただ、頼んで金を置いていく。仲介料が取れりゃ、誰が依頼して誰が受けたかには関知しねーんだよ。……という建前で知らぬ存ぜぬを通しているが、誰が頼んだかも誰が受けたかもわかっているだろうな」
亭主の話を聞いて思ったのは……。
「うーん。かっこつけをこじらせている感じがする!」
陰に潜み、陰に生きる、みたいな?
前髪を長くしてそう、額に手を当ててそう、満月の夜に『……月の光ですら、今の俺には明るすぎる……』とか言ってそう!
……って言ったら亭主が爆笑し、レイヴンは顔を逸らして肩を震わせた。
「じゃない? そう思わない?」
「……プクク……。ちょっとリリス、やめてよ……。想像したじゃないか……。連中と会って噴き出したらどうするんだよ……」
レイヴンが必死に笑いをこらえつつ、私を叱った。




